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「埼玉発ロボット」開発を促進!

産学官が協働でロボット開発を進めるための組織「埼玉県ロボティクスネットワーク」誕生

文●石井英男/編集● ASCII

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必要なのは販売まで含めた社会実装のイメージ、
ロボットの設計開発がゴールではない

 2つめの事例紹介は、「学のサイドからの産学官連携による開発支援+社会実装支援」というタイトルで、埼玉大学大学院理工学研究科の琴坂信哉准教授によって行われました。

埼玉大学大学院理工学研究科の琴坂信哉准教授

 琴坂准教授はまず、日本のものづくりの現状について、生産年齢人口が急激に減少しているため、GDPを維持するにはさらなる効率化、自動化の普及が必要だと指摘しました。そのためには、「官・学」連携による産業支援、技術開発支援はもちろん、周辺環境の整備や中立的な助言が重要になります。また、NEDOも「NEDOロボットアクションプラン」を2023年4月末に公表し、社会課題解決に向けてロボット活用を推進するための大局的な方向性を提起しています。

 ロボットは基本的にニーズに基づいて開発されてきました。例えば、経済産業省と厚生労働省が、介護ロボット開発の促進事業や補助金制度などを実施したところ、自らの技術を介護ロボット開発に活用しようとする企業が多数応募しましたが、その結果介護ロボットが普及したかというと、その答えはノーだと、琴坂准教授は説明しました。その原因は、アイデアドリブンな機器開発にあります。例えば、「距離センサがあるから、白杖に取り付ければ視覚障がい者の方に使ってもらえるのでは?」といった、機器開発の仕方です。ここからスタートした介護・福祉機器の多くが失敗しました。ニーズに基づく設計開発は必要だがゴールではなく、販売まで含めた技術の社会実装のイメージをつくることが必要だと琴坂准教授は力説しました。

 琴坂准教授は、ロボットのニーズベース開発の成功例として、「エレベーター連動清掃ロボットシステム」を挙げました。これはロボットがエレベーターに自律的に乗って、各階を清掃するシステムですが、その成功には3つの秘訣があるといいます。一つめは「誰を相手に売り込めば良いのか?」で、決済権限を持つ人に納得させることが重要になります。二つめは「どんな作業を行えば良いのか?」で、切り出した作業をロボット化してもだめで、新しい価値を生み出す"見える作業"への適応が必要になります。三つめが「全てをカバーするロボットは、失敗の元」ということで、これもできる、あれもできるロボットを考えてもだめで、技術者の思い込みによる作り込みが失敗の元になるということです。

 最後に埼玉県の担当者から、SAITAMAロボティクスセンター(仮称)の整備内容と埼玉県ロボティクスネットワーク設立についての説明があり、名刺交換会・交流会が始まりました。講演者と名刺交換を希望する参加者の行列ができるなど、活発に名刺交換や交流が行われていました。参加者は、ロボット開発のエンジニアや新規事業としてロボット事業を考えている人などさまざまでしたが、充実した内容の講演を聞け、満足度の高いイベントとなりました。

 次回「第2回埼玉県ロボティクスセミナー」は、以下の日程で行われる予定です。

第2回埼玉県ロボティクスセミナー

●日時:令和5年11月15日(水)13:00~16:40
・講演会 13:00~15:35
・パネルディスカッション 15:35~16:15
・交流会 16:15~16:40
●場所:新都心ビジネス交流プラザ4階会議室

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