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社会実装に向けた取り組みが加速する自動配送ロボット

「自動配送ロボットを活用した新たな配送サービスに関するセミナー」レポート

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特別講演
物流×新技術~自動配送ロボットとドローンが切り拓く未来の物流~

 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部兼航空宇宙室 調査役 岩本学氏による特別講演では「物流×新技術~自動配送ロボットとドローンが切り拓く未来の物流~」と題し、現在開発が進められている自動配送ロボットとドローンの種類と特徴、それらの組み合わせによる物流の課題解決の可能性について示唆した。

株式会社日本政策投資銀行 産業調査部兼航空宇宙室 調査役 岩本 学 氏

 物流業界は需給のギャップが広がっており、今後はますます深刻になっていく。物流コストも上昇傾向にあり、産業への影響も大きくなっている。日本の物流業界の課題は、人手不足とオペレーションの非効率に帰着する。ただし、都市部、地方の都市郊外、山間部や離島など地域の特性や事情によって課題は異なるため、切り分けて考える必要がある。

 各地の社会課題に合わせたラストワンマイルの配送手段として、物流ドローンと自動配送ロボットとを組み合わせて検討していくことが重要だ。

 産業用ドローンは、従来はマルチローター型が主流だったが、最近では多様な機体が登場してきており、特にVTOL機の開発が活発だ。VTOL機は垂直に離着陸でき、翼を使って水平飛行するなど、飛行性能に優れる。自動配送ロボットと同様、ドローンでもユースケースに合わせて最適な機体を選定・組み合わせることが課題だ。

 2022年12月5日には改正航空法が施行され、有人地域での補助者なし・目視外飛行(レベル4)が解禁され、ドローンを活用したビジネス開発が大きく進むと考えられる。

 ドローン物流としては、医薬品の配送、フードデリバリー、ラストワンマイルでの個宅配送などの実証実験が山間部や離島を中心に実施されている。ただし、現在使用されている機体はほとんどが電動で、最大積載量10kg、航続距離約40km程度であり、物流シーンで利用するには、より重量物が運べて長距離飛行ができる機体が必要だ。

 現在、空飛ぶクルマの機体メーカーが物流向けにも使える大型機を開発しており、これらは数百kgの荷物を載せて、数百kmの距離を飛行でき、今後さまざまな物流シーンでドローンが活用する可能性も出てきている。社会実装には、運行管理システムや電波環境の整備などのハードルはあるが、日本は山や島が多く地形が複雑なため、空を使った輸送・移動は有望だ。

 次に、自動配送ロボットとドローンを比較し、両者を組み合わせた活用を考察する。

 実証実験エリアを比較すると、自動配送ロボットは都市部を中心に実施されているのに対し、ドローンは過疎地や山間部・離島での実証が多いのは対照的だ。低速小型自動配送ロボットと小型ドローンを比べると、ドローンのほうが高速・広範囲に届けられる。一方で、積載量はロボットに軍配が上がる。

 社会実装に向けたシナリオとしては、ドローンは地方から都市部へ発展、ロボットは人口が密集する都市部から地方へ普及していくと予想される。いずれは両方を使うのであれば、当初から組み合わせを前提としたインフラ整備や事業者間の連携についても考えておくべきだ。

 最後に、自動配送ロボット、産業ドローンはそれぞれ個別に技術開発が進んでいるが、どちらも社会課題を解決するのが大きな目的。社会実装が目的化しないように注視していきたい、とまとめた。

特別講演
スマート東京先行実施エリア「西新宿」における取組 ~自動配送ロボットの実装に向けて~

 東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部 ネットワーク推進課 課長代理 都竹志津香氏の特別講演では、「スマート東京先行実施エリア「西新宿」における取組 ~自動配送ロボットの実装に向けて~」と題し、西新宿におけるデジタルサービス実装の取り組みを紹介した。

東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部 ネットワーク推進課 課長代理 
都竹 志津香 氏

 東京都では5Gや先端技術を活用したデジタルサービスで都民の生活の質を向上させる「スマート東京」の実現を目指し、先行実施エリアとして「西新宿」「都心部」「南大沢」「ベイエリア」「島しょ地域」の5エリアを選定し、取り組みを進めている。

 西新宿フィールドでは、これまで、西新宿スマートシティ協議会を設立して地域の課題を抽出するとともに、5Gエリアの整備と自動配送ロボットを含む計8件の実証実験を実施してきた。

 2022年度はサービス実装に向けて、共通の課題を解決する産官学連携コンソーシアムを設立。サービス提供事業者や大学発スタートアップなどのべ65者が参画し、運用ルールづくりやビジネスモデルの確立、地域との調整などを行なっている。

 2022年度の自動配送ロボットの取り組みとしては、川崎重工業株式会社が2023年1月頃から宅配業者と連携したフードデリバリー、製薬会社と連携した医療品の配送回収等のサービス提供を実施する計画だ。

 東京都ではこうした事業者の取り組みを支援しており、2024年までに自動配送ロボットやXR、デジタルツイン、スマートシティアプリなどのサービスの都市実装を目指している。

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