ドイツ時計の伝統をモダンに昇華!
ノモス・グラスヒュッテ/クラブ キャンパス アブソリュート グレイ
時計に限らず、ドイツの工業製品はおしなべて虚飾を排した、ストイックな機能美が身上である。刹那的なファッション性をうたった、「ちゃらちゃら〜、ヒラヒラ〜♪」みたいな要素はない。求道的な寡黙さの奥に息づく、ユーザー目線の実用性こそがドイツ製品の魅力なのだ。
ノモスはドイツ時計の中枢であるザクセン州・グラスヒュッテに本拠を構える実力派のブランドで、創業1990年といわゆる新興ではあるが、その実、1906年に当地で創業した名門ブランドをルーツにもち、血統はまさにドイツ時計の主流といえるものだ。自社で95%以上のパーツを生産する同社は高級な「マニュファクチュール」と呼ばれる分野に属するが、製品の価格帯はいたって良心的。ゆえにコアな機械式時計ファンだけでなくビギナーからの信頼も厚く、時計シーンに独自の、盤石の地位を築いている。
コストパフォーマンスに長けた同社のラインアップの中でも、より親しみやすいモデルが、2017年に誕生した「クラブ キャンパス」だ。“学校を卒業して社会人となる若者への贈り物”をイメージした本作は、同社ならではの扱いやすく機能的な手巻き式ムーブメントをほどよくカジュアルなミニマル・デザインに統合し、“オンもオフもこれ1本でOK!”的な汎用性を確立した。2021年に加わった新色グレーダイヤルは、挿し色のオレンジとの取り合わせが同国の精神基盤でもある歴史的デザイン学校バウハウスの影響も感じさせ、さらに、ローマ数字とアラビア数字をミックスするというインデックスの知的な外し技と相まり装飾性はないがなかなか洒落ている、という高度なソフィスティケーションを実現している。
毎日ゼンマイを巻き上げなくてはいけない、というルーティンも愛着を誘い、魅力だ。工業製品における質実剛健はひたすら地味であることではなく、日々、自然に心地よく、愉しく使えること。時計ビギナーこそ、注目すべきポイントだろう。
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