2. 平面型ヘッドホンのメリット
平面型ヘッドホンのメリットは、通常のヘッドホンのデメリットの裏返しでもある。
通常のダイナミック型ヘッドホンの設計は、一般に円形の振動板の中央に磁気駆動するコイルとマグネットがあり、磁力の反発によって振動板を動かす。しかし、中心から端まで均一に振動を伝搬するのは難しく、振動板の物性(特性)に依存してしまう。これによって中心と端で振動の仕方が異なる“分割振動”が起こり、高音域特性が劣化するといったデメリットが生じる。
しかし、平面型では振動板が(ほぼ)全体で振動するため、この問題が生じにくいのがメリットである。結果、周波数特性が優れ、さらに低歪みになるとも言われている(平面磁界型は方式としては磁力の反発を使うダイナミック型である)。
また平面型は振動板が薄くて軽量であり、反発面積が広いために、音の立ち上がりが早く、より細かい音が聞こえるメリットがある。ただしこの点に関しては振動板にコイルが必要な平面磁界型よりも静電型の方が有利である。
3. 平面型ヘッドホンのデメリット
振動板としては理想的な平面磁界型だが、一般に「能率が低く鳴らしにくい」というデメリットがある。このために高出力のヘッドホンアンプが欠かせないものとなっている。また構造上重くなりがちで、開発コストがかさむために価格が高くなってしまう点もデメリットだ。
4. 平面型ヘッドホンのいま
平面磁界型ヘッドホンは、実は新しいものではなく、オーディオの黄金期と呼ばれる数十年も昔に一度隆盛を誇った。しかし、オーディオの流れが退潮するにつれて、コストのかかる平面磁界型は忘れられていったという経緯がある。そしていまヘッドホンオーディオが見直されている時代に、海外から平面磁界型ヘッドホンの復活と再隆盛の流れが日本にも届いてきた。
平面磁界型ヘッドホンにはメリットも多いが、デメリットもまたある。しかし、最近の平面磁界型の隆盛を通じて開発が進んだことで、デメリットは克服されつつあり、より高効率で低価格のモデルも現れてきている。もちろんハイエンドヘッドホンを極めるのも平面磁界型が近道だ。いまは平面磁界型ヘッドホンが熱い時代なのである。
この連載の記事
-
第287回
AV
Roon ARCがCarPlayやAndroid Autoに対応、車内で音声操作を -
第286回
AV
MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは? -
第285回
AV
新感覚のオーディオイベント「REB fes」を体験、自分だけのストーリー実現に悩もう! -
第284回
AV
JBLによる2つの新提案「LIVE BEAM 3」と「Fit Checker」を体験してきた -
第283回
AV
グーグル、プロも驚く音楽生成AI「Music AI Sandbox」を開発 -
第282回
AV
液晶をタッチして操作する、Volumioの新ネットワークプレーヤー「Motivo」 -
第281回
AV
HIGH END Munich 2024出展製品から、気になるエントリーオーディオをセレクト -
第280回
AV
水月雨がオーディオファン向けスマホを開発、複雑になりすぎたスマホ高音質再生への問いかけ -
第279回
AV
Chordの積み木型オーディオシステムが面白い、「Suzi」と「Suzi Pre」 -
第278回
AV
さすがにSpotifyもロスレス対応しそう、Redditユーザーがさらに解析結果をリーク -
第277回
AV
スマホがLE Audioに対応していなくても、なぜAuracastを使えるのか? - この連載の一覧へ