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“Gen 2 Cloud”と“Autonomous化”の強化、永久無料枠も提供、OOW 2019・エリソン氏基調講演

OCIで「Oracle Cloud VMware Solution」「Autonomous Linux」など発表

2019年09月18日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2019(OOW 2019)」が、2019年9月17日から20日にかけて米国サンフランシスコで開催されている。同社 会長兼CTOのラリー・エリソン氏は1日目の基調講演において、昨年のOOWで披露した“Gen 2 Cloud”ビジョンと「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」「Oracle Autonomous Database」のさらなる拡張と強化につながる多数の新発表を行った。

 本稿ではまず、OCIにおいてLinux OSの“自動運用”を実現する「Oracle Autonomous Linux」、米ヴイエムウェアとのパートナーシップによるハイブリッドクラウドソリューション「Oracle Cloud VMware Solution」、OCIを無期限で無料利用できる「Oracle Cloud Free Tier」などの主要な発表内容を紹介する。

「Oracle OpenWorld 2019」はサンフランシスコのモスコーニセンターで開催中。今回のテーマは「Breakthrough Starts Here」

米オラクル 会長兼CTOのラリー・エリソン(Larry Ellison)氏。「Generation 2 Cloud Autonomous Infrastructure」というタイトルで基調講演を行った

「“Autonomous Cloud”という究極のゴールに向けて」Autonomous Linuxを発表

 まず基調講演冒頭でエリソン氏が大きく取り上げたのが、Oracle Autonomous Linuxだ。これはOCIやExadataなどのエンジニアドシステムで使われているOracle Linuxをベースに開発したソリューションで、その名のとおりLinux OSの運用作業を自律化/自動化する。OCIを利用する「Oracle Linux Premier Support」の契約顧客に対し、無償で提供を開始した。

Oracle Autonomous Linuxでは稼働中のシステムにセキュリティパッチを適用できる

 具体的にはAutonomous Linuxのシステムイメージと、OCIで提供しているOS管理ツール「Oracle OS Management Service」の組み合わせで実現される(この利用ライセンスはPremier Supportに含まれる)。カーネルおよび主要なユーザースペースライブラリのセキュリティパッチやアップデートの適用、チューニングといった、日常的なOSライフサイクル管理作業から管理者の手作業を排除することで、OSを常にセキュアな状態に保つという。

 また、提供されるAutonomous Linuxのシステムイメージには「Oracle Ksplice」ソフトウェアもあらかじめ組み込まれており、カーネルのアップデートも含めてリブートなし、システムダウンタイムなしでのアップデート適用を可能にしている。

 オラクルの試算によると、オンプレミスシステムや他社クラウド(5年間)でLinuxワークロードを稼働させる場合のTCOと比較して、Autonomous Linuxの利用によっておよそ30~50%のコスト削減になるという。

「Oracle OS Management Service」のOS管理画面。(画像は公式ブログより)

 エリソン氏は、Autonomous Linuxでは稼働中のシステムに対してもダウンタイムなしでセキュリティパッチを適用することができる優位点を説明。さらに人的な操作ミスによる大規模ダウンタイム発生事故の例を挙げて、そうしたヒューマンエラーも排除できると、運用の自律化/自動化で得られるメリットを強調した。

 一昨年にインテルCPUで発見されたMeltdown脆弱性への対応のために、オラクルでは全世界のOCI Gen 2 Cloudにおいてパッチ適用を行った。このとき稼働中の150万コアに対して1億5000万のパッチを適用したが、Kspliceによりシステムダウンタイムなしで、4時間で適用作業を完了したという。

オラクルにおけるOracle Linuxへのパッチ適用事例

 またエリソン氏は、Oracle LinuxがRed Hat Enterprise Linux(RHEL)と100%のバイナリ互換性を持つことに触れ、RHELからの移行も容易であり、移行によって「IBMに(サポートコストを)支払う必要がなくなる」とコストメリットも強調した。

RHELと完全な互換性を持つため、アプリケーションの改修なしにRHELからOracle Linuxへの移行ができることも強調した

 Autonomous Linuxの発表は、ITの“自律化”をビジョンに掲げるオラクルの戦略を一歩推し進めるものだ。エリソン氏は最終的なゴールは“Autonomous Cloud”であると述べた。

 「昨年はAutonomous Databaseを提供開始したが、今年はOracle Cloudに追加するその他のAutonomousサービスにも取り組んでいる。究極的なゴールである、完全な“自律型クラウド(Autonomous Cloud)”の実現へと向かうためだ」

ヴイエムウェアとの連携でVCFスタックを提供「Oracle Cloud VMware Solution」

 ヴイエムウェアとのパートナーシップにより、「VMware Cloud Foundation(VCF)」をOCI上で展開するOracle Cloud VMware Solutionも発表された。

 今回の両社提携では、オラクルがヴイエムウェアのVCPP(VMware Cloud Provider Program)パートナーとなり、vSphere、NSX、vSANといったフルスタックのVCF環境をOCI上で提供する。これにより、オンプレミスや他社クラウドでVMware環境を構築する顧客企業が、ワークロードを自在にOCIへ移すことのできる、一貫性のあるハイブリッド/マルチクラウド環境を実現する。

 また提携の一部として、オラクルは顧客のVMware環境(オンプレミス、認定クラウドのいずれも)で稼働するオラクル製ソフトウェアのテクニカルサポートも提供するとしている。発表文の中でヴイエムウェア COO(最高執行責任者)のサンジェイ・プーネン(Sanjay Poonen)氏は、「VMware上で稼働するオラクル製品に対して初めて、テクニカルサポートが正式に提供されることをうれしく思う。これは顧客にとってメリットがあることだ」とコメントしている。

ヴイエムウェアのVCFスタックをOCI上で提供し、顧客のハイブリッド/マルチクラウド戦略を支援する

 ヴイエムウェアでは、VCFをハイブリッド/マルチクラウドの“ハブ”とする同様の取り組みを、すでにAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud、IBM Cloudといったメガクラウドベンダー、および数千社に及ぶVCPPパートナーと展開している。

 ヴイエムウェアとのパートナーシップについて、基調講演の中ではあまり多くは語られなかったものの、エリソン氏は「非常に重要なリレーションシップ」であり、顧客ワークロードのOCIへの移行と、Autonomous Databaseのようなデータベースサービスの活用への期待を示した。

OCIやAutonomous Databaseの“無期限”無料利用枠「Oracle Cloud Free Tier」

 なお基調講演の最後で、エリソン氏はOCIの新たな無料提供枠「Oracle Cloud Free Tier」も発表した。これは、一定規模までのOCIやAutonomous Databaseサービスについて、「無期限に」無料利用できるようにした。新規アカウントにも既存アカウントにも提供される。また、従来から提供してきた30日間の無料トライアル枠(総額300ドルまで)も引き続き提供する。

 Free Tierで提供されるサービスは、具体的には最大20GBのAutonomous Databaseが2インスタンス、コンピュート(1GBメモリ)が2VM、ストレージがブロック100GB+オブジェクト10GB+アーカイブ10GB、そのほかロードバランサーを含むネットワークサービスやモニタリングのサービスなどだ。

「Oracle Cloud Free Tier」で無料提供されるAutonomous DatabaseやOCIのサービス一覧

 またFree Tierでは、開発者向けツールも無償提供される。発表によると、ローコードWebアプリケーション開発のための「Oracle Application Express(APEX)」のほか、開発者向けデータベース管理ツールの「SQL Developer Web」「Machine Learning Notebooks」、REST APIや主要プログラミング言語の環境も提供される。エリソン氏は、このFree Tierは開発者、学生、あるいはエンタープライズ従業員まで、誰でも幅広く利用できると述べた。

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