このページの本文へ

Kubernetesフォーカスを加速するレッドハット

Red Hatクリス・ライトCTO、CoreOS買収を語る

2018年02月05日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 レッドハットは米国時間2018年1月30日、Kubernetesディストリビューション「Tectonic」やコンテナーエンジン「rkt」、コンテナー用軽量Linux「Container Linux」を提供する米CoreOS社を2億5000万ドルで買収すると発表した。

 CoreOSのKubernetesディストロやContainer Linuxをレッドハットのコンテナープラットフォーム製品に統合して機能強化すると同時に、CoreOSのKubernetes専門人材を取り込むことでKubernetes開発コミュニティでのレッドハットの影響力を拡大したい考えだ。

 なぜ今、レッドハットはKubernetesにフォーカスし、コンテナープラットフォームの強化を急ぐのか。来日したレッドハット CTOのクリス・ライト氏に話を聞いた。

レッドハット CTOのクリス・ライト氏

OpenShift上ですべてのアプリが一貫して動く

 レッドハットのテクノロジー強化の方向性は、同社が掲げるビジョン「オープンハイブリッドクラウド」、および「Any Apps, Any Platform」に示されている。

 オープンハイブリッドクラウドとは、「ベアメタル、物理サーバー、仮想クラウドサーバーなどどんなインフラでも動くプラットフォームのこと」(ライト氏)であり、レッドハットはこれをRHEL(Red Hat Enterprise Linux)で実現してきた。さらに、Any Apps, Any Platformは、オープンハイブリッドクラウド上の「どの環境においてもレガシーアプリケーション、モダンアプリケーションが一貫して動くアプリケーションプラットフォーム」(ライト氏)を目指すビジョンであり、レッドハットはこれを「OpenShift」で実現しようとしている。

 OpenShiftは、DockerコンテナーのオーケストレーターKubernetesをベースに、コンテナー型分散アプリケーションの開発、運用を便利にするアプリケーションプラットフォームだ。マイクロサービス化されたモダンアプリケーションだけでなく、「レガシーなハードウェアから移行できないアプリケーションであっても、OpenShiftに接続すればAPIを使ってデータのやりとりができる」とライト氏は説明した。

次世代テクノロジーをOpenShiftの中で実現

 レッドハットは、OSS開発コミュニティの中で、自動化、AI/機械学習、サーバーレス、ブロックチェーン、サービスメッシュ、NFVなど様々なテクノロジー開発に関わっているが、これらの新しいテクノロジーは、将来的にすべて「KubernetesをベースにしたOpenShiftのアプリケーションプラットフォームに統合して、プラットフォームの中でユーザーが簡単に使えるようにしていく」のだとライト氏は言う。

レッドハットのフォーカスする次世代テクノロジー

 AI/機械学習については、OpenShift上でAI/機械学習のテクノロジーを活用したインテリジェントアプリケーションの開発をサポートできるようにしていく。機械学習のワークロードを高速化するためには、GPU搭載ハードウェアが必要だ。レッドハットは、Kubernetes開発コニュニティの中の「Resource Management」SIG(Special Interest Groups)をリードしており、ここでNVIDIA GPU対応のデバイスプラグインの実装をKubernetes 1.9で実現している。この実装は、OpenShift 3.9で対応予定だ。

 サーバーレス(FaaS)についても、将来的にOpenShiftのプラットフォームに実装していく予定だ。「プラットフォームにランタイムの手当てを任せて、デベロッパーはロジックだけ考えればよいという環境を提供していく」(ライト氏)。

 ブロックチェーン技術への取り組みも積極的だ。レッドハットはオープンソースのブロックチェーン「Hyperledger」開発コミュニティのメンバーでもある。また、OpenShift上でブロックチェーンアプリケーションの開発環境を提供している。

 サービスメッシュとは、「コンテナーでマイクロサービス化された各アプリケーションをネットワークして動作するテクノロジー」(ライト氏)だ。レッドハットは、サービスメッシュのフレームワークを開発するOSSプロジェクト「Istio」に参加しており、将来的にIstioの機能をOpenShiftに統合していく計画だ。「サービスメッシュのネットワークは複雑。このネットワーク機能をアプリケーションプラットフォームに組み込んでしまうことで、ネットワークに詳しくないアプリケーション開発者でもサービスメッシュが扱えるようになる」とライト氏は説明した。

 NFV(ネットワーク機能仮想化)は、次世代移動通信規格「5G」のテレコムインフラで重要なテクノロジーだ。「5Gの通信は、エッジで高密度になるのが特徴。エッジに演算能力のあるランタイムを置くと通信全体が高速化される。ここで、NFVの機能の一部をコンテナー化して実装する際に、OpenShiftが重要な役割を果たす」(ライト氏)。

CoreOS買収でKubernetes開発のリーダーに

レッドハットはKubernetesコミュニティでSIGsの半分以上でリーダー的存在

 このようにレッドハットは、将来登場してくる新しいテクノロジーのほとんどをKubernetesベースのOpenShift上で実現しようとしている。今回のCoreOSの買収は、Kubernetes専門人材を増員してOpenShiftの進化を加速すると同時に、Kubernetes開発コニュニティのリーダーポジションを得ることが狙いだ。

 「レッドハットとCoreOSを合わせると、Kubernetesの33 SIGsのうち半分以上でリーダー的存在になる。コミュニティで影響力を持つことで、レッドハットとOpenShiftのニーズに合わせて、Kubernetesの開発方向性を決めることができる」とライト氏は述べる。CoreOSは、Kubernetes SIGsの中では、マルチテナンシーやフェデレーテッドクラウドの仕組みを開発する「Multi Cluster」SIGでリーダー的な企業であり、ライト氏はこれらのテクノロジーはOpenShiftにとって特に重要だと考える。その他、CoreOSが開発したコンテナーレジストリ「Quay」やContainer LinuxなどをOpenShiftに統合する。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード