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ビッグデータとAIで一歩先を行くブッキング・ドットコムのIT戦略

2017年12月04日 12時00分更新

文● ドリル北村/ASCII編集部

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サイトの見た目を変え成約率を上げる
ABテストを毎日1000回実施

 CEOへのインタビューでブッキング・ドットコムがテクノロジーの導入を推進しているのはわかったが、実際にビッグデータとAIはどのようにサービスで活用しているのか、プロダクト・ディベロプメント・ディレクターのAdrienne Enggist (エイドリアン・エンギスト)さんに聞いてみた。

プロダクト・ディベロプメント・ディレクターのAdrienne Enggist (エイドリアン・エンギスト)さん

―――なぜビッグデータを収集しているのでしょうか?

【エンギスト】 流行や国民性などを把握し、旅行プランやウェブサイトにそれを反映させるためです。

―――ユーザーのレビューがそのデータの最たるものだと思いますが、他にどんなものがありますか?

 ブッキング・ドットコムが力を入れているものとして、ABテストがあります。50%ユーザーにはウェブサイトの表示を変えたもの、残りの50%には表示を変えていないものを見せ、どちらが成約率が良かったかをチェックし、そのデータを収集しています。医薬品のテストと同じ方法です。

 では、具体的にABテストの例を示しましょう。子供の年齢を正確に入力させたい場合、「チェックアウト時の子供の年齢」と「2016年7月23日時点の子供の年齢」、どちらの表記がいいと思いますか?

子供の年齢を正確に入力させるために行なったABテスト。「チェックアウト時の子供の年齢」、「2016年7月23日時点の子供の年齢」というように表記が違う

 この場合「チェックアウト時の子供の年齢」としたほうが、ユーザーは正しい宿泊価格を把握でき、結果的にキャンセル率が下がりました。つまり成約率が上がったのです。わずか一文を変えたに過ぎませんが、成約率に影響が出るのでこういうテストが必要なのです。

 では、さらにテストしましょう。答えは最後にまとめてお伝えします。まずは、検索結果をクリックした時に、新規のタブが開くかどうかです。複数のタブが立ち上がるのはわずらわしいという意見もあれば、タブが開けば結果を比較しやすいという意見もありました。そこでABテストを実施しました。どちらがより成約につながったでしょうか?

検索結果をクリックした時に、新規のタブが開くかどうか?

 次は、希望の宿泊施設が満室で予約できなかった場合、前週と翌週の空室を提案するか、しないかです。

希望の施設が満室だった時、空室がある他の週を提案するかしないか?

 だんだん難しくなりますよ。次は表記の問題です。キャンセル料の記載を「キャンセル無料、現地払い」「キャンセル料無料、支払いは後で」とした場合、どちらがよりわかりやすいと思いますか?

キャンセル料の表記を変えた場合

 最後は表示位置の問題です。料金を一番左に表示するか、中央に表示するかです。英語は左から読むので一番左に料金を表示すべきという意見と、目に入りやすい中央に表示するべきという意見がありました。あなたはどちらがいいと思いますか?

料金の表示位置を変えた場合

 答えは、上から順に、B(新規のタブを開く)、C(どちらでも変わらない)、B(支払いは後で!)、B(料金を中央に表示)です。いかがでしたか? すべて正解した人はブッキング・ドットコムに就職できるかもしれませんよ。

 ABテストの結果から成約率の向上は望めますが、なぜ成約率が上がったのかまではわかりません。たとえば2番目のテストですと、成約率に変化がなかった理由として「旅行の日程はすでに決まっているから別の週の提案は必要ないのだろう」という予想はできますが、その予想が正しいかどうかは判断のしようがありません。単に画面が煩雑になったことで、その先の閲覧を敬遠された可能性だってあるからです。

 ですので、ABテストは毎日1000回実施しています。ブッキング・ドットコムには毎日150万泊以上の予約があるので、およそ150万人に対してABテストを行なっていることになります。

―――膨大なデータが毎日集まるわけですね。

 ABテストの結果だけでなく、利用者が書き込む宿泊施設のレビューや質問などのデータを含めての数字になりますが、およそ15ペタバイトのデータがブッキング・ドットコムには保存されています。

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