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API活用戦略の策定から、既存システムのAPI公開を支援するテクノロジー提供まで

日本IBMが企業の「APIエコノミー」戦略支援、3施策を発表

2015年11月13日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは11月12日、顧客企業によるAPI活用の新たなサービス/アプリケーション創出を支援するための、3つの支援策を発表した。API活用戦略策定を専門家が支援する「APIクイック・スタート・プログラム」の無償提供のほか、API管理ゲートウェイやNode.jsなどのテクノロジー提供を行う。

日本IBM 執行役員 システムズ・ソフトウェア事業部長の渡辺公成氏

日本IBM システムズ・ソフトウェア事業部 統括部長の林健一郎氏

「APIエコノミー」の基本概念。企業が持つ既存のITアセットを、標準化されたAPIとして社内やパートナー/サードパーティに提供することにより、新たなアプリ/サービスの開発を促して価値創出を狙う。IBM調査では2018年に2兆2000億ドル市場になるという

エンタープライズのAPIエコノミー推進には「3つの障壁」がある

 発表会に出席した日本IBM 執行役員 システムズ・ソフトウェア事業部長の渡辺公成氏は、「APIのマーケットは決して“新しいもの”ではない」と語る。国内でも、すでに楽天などのWebテクノロジー企業やスタートアップ、モバイルアプリの世界では、APIの公開と活用が積極的に進められている。

 一方でエンタープライズ、長年IBMの顧客であるようなレガシーな企業におけるAPIエコノミーの取り組みは遅れている。渡辺氏は、エンタープライズ顧客が抱える“取り組みへの障壁”は大きく3つだと説明する。APIエコノミーにどう取り組めばいいかという「戦略策定」、既存システムとのオープンな連携を可能にする「APIの開発」、そしてAPIを公開するうえでの「管理とセキュリティ」だ。

エンタープライズのAPI公開に向けて必要な3ステップ。しかし企業はそれぞれに課題を抱えており、それが障害となって取り組みが進まないケースが多いという

 こうした障壁を取り除き、エンタープライズ/SoRの世界とスタートアップ/SoEの世界とをつなぐ手助けをするのが、IBMが考えるAPIエコノミーの世界での役割だ。渡辺氏は、今回発表された3つの施策を皮切りに、そうしたAPI環境を迅速かつ安全に作っていく手助けをしたいと述べた。

ビジネス戦略策定を専門家が、SoRとのAPI連携をテクノロジーが支援

 今回はAPIエコノミーに関する3つの施策が発表されている。

(「NEW」が今回発表)

 まずは「戦略策定」という障壁に対応する「APIクイック・スタート・プログラム」だ。IBMの専門家が顧客企業へのブリーフィング、およびワークショップ(ビジネス担当者向け、およびIT担当者向け)を無償で実施することで、APIに対する理解を深めるとともに、ビジネスにつなげるための戦略を検討する。この討議から生まれたAPI戦略に基づき、IBM自身やIBMのAPIパートナーが有償でAPI開発を支援していく。

 渡辺氏は、最近では国内のエンタープライズ顧客もハッカソンを開催するなど取り組みを活発化させつつあるものの、実態としては「なかなかビジネス化に苦労されている」と語る。まずビジネス担当者とワークショップを行い、それを受けて(または並行して別途)IT担当者/開発者とのワークショップを行う理由はそこにあるという。

 「エンタープライズのカルチャー的な問題として、作る人(開発者)、ビジネスをする人、という(役割分離的な)考え方が強いこと。そのため、最初にビジネスとしての方向性を明確にしておかないと“デベロッパーのお遊び”で終わってしまう可能性も高い。だからこそ、最初にまずビジネス戦略を考えましょうということ」(渡辺氏)

顧客へのブリーフィング、ワークショップ実施、APIの実装(デリバリー)という3ステップで構成される「APIクイック・スタート・プログラム」

 「APIの開発」については、9月に買収を発表したストロングループ(StrongLoop)が持つエンタープライズ向けNode.jsフレームワークを提供していく。既存のSoR/業務システムと連携するAPIをサーバーサイドJavaScriptで開発可能にするとともに、APIの開発からテスト、展開/スケール、リソース監視までのライフサイクル管理機能をStrongLoopが提供する。

 林氏は、ストロングループについて、同社のエンジニアメンバーがオープンソース開発されているNode.jsコミュニティにも深く関わっており、「Node.jsの中身を熟知したメンバーが、その開発生産性を高めていくツール(StrongLoop)を開発している」と紹介した。なお、そのほかにIBMでは、商用サポートが受けられる「IBM SDK for Node.js for Bluemix」も提供している。

IBMが9月に買収発表したStrongLoopのNode.jsテクノロジーにより、API開発およびライフサイクル管理を容易にする

 APIの「管理とセキュリティ」という障壁に対しては、API管理ゲートウェイ製品の「IBM API Management」を提供する。同製品はAPIの統合ゲートウェイとして機能し、たとえばGUIによるAPI設計、開発者向けのAPI仕様公開(APIカタログ)、API利用時の認証/アクセス制御、メッセージ内容の妥当性検証、運用時のキャッシュや利用状況分析、流量制御、利用回数などに応じた課金処理といった機能を備えている。

 なお、IBM API Managementは、オンプレミス環境向けに「IBM DataPower Gateway」アプライアンスに搭載して提供するほか、「Bluemix」でクラウド版が提供される。今回の発表では、API公開の検討や検証を行う企業に対し、仮想アプライアンス版DataPower GatewayとAPI Managementソフトウェアのライセンスを1年間無償で提供するとしている。

「IBM API Management」は、APIの設計から保護、共有、分析といった機能を提供するAPIゲートウェイ製品

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