Ingressの世界観を壊さない製品を実現する
Ingressの世界には、エージェントのXM(エネルギー)を回復するための「Power Cube」というアイテムがあります。まさに、モバイルバッテリーはPower Cubeそのもの。やはり、ゲーム内のアイテムの形を真似るところからデザインがスタートしたそうです。
とはいえ、Ingress内のデザインはちょっと現実には存在しにくそうな立方体のフレームの中に、さらに立方体のエネルギー源が浮いている物体。バッテリーも自由に形を決めることができるわけではなく、セルの形状にデザインが左右されます。
立方体のバッテリーも不可能ではないですが、おそらく既存のバッテリーを2つないし3つ重ねて立方体を作る必要があり、巨大化、大容量化、すなわち高額化してしまうことになるでしょう。
そこで、Power Cubeそのものを彷彿とさせる立方体というデザインは見送ることになったそうです。立方体ができても、なかでエネルギー源が浮く、っていうのはちょっと現在の技術では難しいはずです。
次に要望が多かったのはIngressのロゴが光ることでした。個々にもハードルがあります。
Ingressに限らず、Googleは非商用のものにしかロゴなどを使用できないことになっています。そのため、Ingressについても、販売できるグッズとしてどれだけIngressらしさを追究するか、Googleと掛け合う必要がありました。
cheeroはGoogleと交渉を行ない、正式にコラボバッテリーを製作することに合意したそうです。cheeroには見たこともないような分厚さの契約書が届き、10人ほどの社員一同目を丸くしたそうです。
こうして考えられたのが、Power Cubeのフレームのデザインを残しつつ、Ingressの陣営のテーマカラーである青と緑、そして白と6種類に光るIngressのロゴ入りのバッテリーが完成しました。
絶え間ないハックが続くIngress
Ingressは、一度ポータルがどちらかの陣営に属しても、放っておくと減衰してニュートラルに戻ってしまいます。また、プレーしていると、実感として攻撃側が強い傾向にあり、自陣を保ち続けることは意外と大変です。
そういう点で、いつ新入りエージェントとしてプレーを始めても楽しむ事ができるし、レベルが上がっていっても、様々な攻防に遭遇しながら続けることができる、良いバランスを持ったゲームと言えます。
前述の地域イベントに加えて、日本ではローソンがIngressとコラボしてコンビニがポータル化したり、米国の保険会社AXAとのコラボではゲーム内最強のシールドアイテム「AXA Shield」を登場させるなど、リアルとバーチャルの間に存在する「もう一つのリアル」というちょうど良い世界観を追究し続けています。
個人的には、Google GlassにオフィシャルのIngressアプリが登場して、視覚的にもIngressの世界をのぞき見できるようになるといいなと思っているのですが。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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