RS-232Cで高速通信を可能にした
拡張アクセレレーターボード
さらに昔にさかのぼると、1990~1992年の頃にはRS-232Cで高速に通信するアクセラレーターがいくつか製品化されていた。この当時のことだからまだイーサネットは普及しておらず、一般のユーザーはRS-232Cポート経由で通信するのが一般的であった。
RS-232Cポートの場合、通常は9600bps~38400bpsで通信可能であるが、一部には115.2Kbpsで通信できるものもあった。こうした中で、920Kbps近い速度で通信できるボードが、当時の価格で2万円程度で売買されていたことを記憶している。
この速度になると、さすがにCPU側での管理は不可能なので、通信のハンドリングは全部ボード側で行なわれていた。もっとも当時のことだからプロトコルスタックなどは存在せず、最終的にはファイル転送ソフトがその高速通信ボードを直接アクセスするような形で使われていたので、コプロセッサーというよりはアクセラレーターに近いのだろうが、そうした製品もあった、ということだ。
PhysXのおかげで普及した
物理演算プロセッサー
2006年に突如登場したのがAgeiaの「PhysX」だ。元々はスイスのNovodeX AGという会社が「NovodeX」という名称で開発していたソフトウェアベースの物理エンジンを、2004年にAgeiaがNovodeX AGごと買収するとともに名称をPhysXに変更。そしてこのPhysXを高速に動作させられる専用アクセラレーターを「PhysX PPU」(Physics Processing Unit)という名称で開発した。
「PhysX PPU」を搭載したアクセラレーターカードはいくつかのメーカーからリリースされた(関連記事)。どの程度の性能改善があったのかは、YouTubeにRealityMarkをPhysX PPUのあり/なしで比較した動画があるので、見ていただくのが早いだろう。
もっとも2006年に製品は出たものの、ゲームがこのPhysX APIに対応してくれないと宝の持ち腐れであり、こちらの普及がなかなか進まなかった。そうこうしているうちにNVIDIAが同社を買収してしまい、GeForceベースのGPUで利用できるようになった。というよりGeForceベースのGPUでしか利用できなくなった。
NVIDIAとしてはGeForceの普及のためのツールを手に入れたのだろうが、逆にゲームベンダーはNVIDIAの管理下のAPIを使うことを嫌ってか、PhysXの普及がむしろ遅れる結果になったのは皮肉である。
とはいえ、最近になってやっと物理エンジンのニーズが改めて出てきたことで、AMDベースのGPUを搭載するPS4やXBox OneでもPhysXがサポートされることになり、やっと標準的なAPIへの道を辿ろうとしている。ただこれらはCPUないしGPUでの処理になるので、当初Aegiaが想定したコプロセッサーとは違う形での実装になった。
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