次世代を担うSavage 2000
ドライバーの不出来に沈む
いよいよ本題のSavage 2000である。Savage 4は1999年2月に発表されたが、S3はこれに並行して、次世代製品であるSavage 2000の開発を進めていた。1999年11月に発表されたSavage 2000は、当初TSMCの0.22μmプロセス、のちに0.18μmプロセスでの製造となった(Savage 4は0.25μmプロセス)。コアの動作周波数こそ125MHzに落ちたものの、以下のような改良が施されていた。
- 描画パイプラインを2本に増加(Savage 4までは1本)
- メモリーバスを128bit化
- DirectX 7のハードウェアT&Lに準拠した「S3TL」を搭載
スペックだけ見る限り、Savage 4の軽く倍の描画性能を確保できているように見えたのだが、実際に使ってみると“辛うじて”Savage 4と同等というレベルにすぎなかった。
理由は2つある。ひとつはS3TLの性能の低さであり、もうひとつは(またしても)ソフトウェアの完成度の低さであった。そもそもSavage 2000登場時に提供されたドライバーソフトを使うと、ハードウェアT&Lが有効にならなかった。レジストリを操作すると有効になったのだが、有効にしても性能が変わらないという不思議な状況で、おおむねSavage 4と性能は変わらなかった。
実はこのSavage 2000のドライバー、DirectX 6対応のSavage 4用をベースに作ったもので、そう簡単にはDirectX 7に対応できなかった。おまけに内部のパイプラインが倍増した分、いろいろとSavage 4とは異なる配慮も必要になったが、そうした対応も間に合っておらず、かなり問題があった。描画に関するバグが多すぎたのだ。DirectX 6対応ドライバーを使ってもSavage 4とほとんど性能が変わらないというのは、ハードウェアの強化からすれば考えにくい。ドライバーの最適化がまったく進んでいなかったというか、当初は2本の描画パイプラインの片方しか動いていなかった可能性すらある。
それでも2000年後半には、一応DirectX 7対応のドライバーが登場したのだが、そこで発覚したのがS3TLの性能の低さだった。2000年後半というのは「Coppermine-T」コアのPentium IIIや、「Thunderbird」コアのAthlonが登場して利用され始めた時期である。これら高速なCPUとSavage 2000を組み合わせた場合、S3TLを使うよりもCPUでT&Lを処理した方が高速、という有様であった。
S3の立場から言えば、同時期の「GeForce 256」よりは確かにややT&L性能は落ちるものの、1999年当時のCPUや、2000年でもCeleron/DuronグレードのCPUと比べれば、高速処理が可能ではあった。ところがその1年で、CPUの側は1GHzの壁を突破するなど急速に高性能化していた。また競合のNVIDIAは、より高性能な「GeForce 2 GTS」を投入してきたから、非常に分が悪かった。
筆者が思うに、もし当初からまともなDirectX 7対応のドライバーが投入されていたら、もう少しシェアを伸ばす、いやシェアを失わないことも可能だったのかもしれない。その意味では、最大の問題は貧弱なドライバーであった。これに追い討ちを掛けたのが、S3TLの性能の低さだったわけだ。
S3は1999年にDiamond Multimediaと合併して、自社でグラフィックスカードを製造・販売するビジネス形態に切り替えていた。その最初の自社製品がSavage 2000であったのだが、最初の製品がいきなり同社の息の根を止めることになったのだから、なんとも言いがたい。
S3はこれに続く「Savage XP」の開発も進めていたが、その開発は中止されて、S3はPCビジネスからの撤退を決定する。同社の資産はVIA Technologiesに買収されることになり、VIAの傘下でグラフィックス分野を続けることになる(関連記事)。
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