WOAデバイスにはデスクトップアプリを
インストールできない?
2011年1月の「International CES 2011」でWOAが発表された当初は、「WOAにはx86/x64エミュレーターが搭載され、今までのWindowsアプリケーションが動作するのでは?」と言われていた。しかし、マイクロソフトでWindows 8に関する情報を提供している「Building Windows 8」ブログによれば、WOAで動作するのはMetroスタイルアプリケーションのみとされている。
WOAではMetroスタイルとデスクトップの両環境をサポートするが、ソフトウェア開発者はWOAのデスクトップ環境向けアプリケーションは、開発できないようになっている。WOAでは既存のx86/x64向けWindowsアプリケーションが動作しないことから、マイクロソフトの内には「過去との互換性問題を廃するために、デスクトップを廃止しては」という声もあったようだ。しかし、マイクロソフトでWindows担当プレジデントを務めるスティーブン・シノフフキー氏によれば、最終的に「便利でユーザーにとって負担が少ないものを諦めることは妥協であり、PCの進化にあるべきではない」ということで、搭載されることとなったようだ。
WOAのアプリケーションは、Windows Storeで提供されるMetroスタイルアプリケーションしかインストールできない。「WOAデバイスに外付けの光学ドライブやUSBメモリーを接続すれば、アプリケーションをインストールすることも可能では?」と考えたが、どうやらWOAではそうした機能が制限されているようだ。具体的な仕組みは不明だが、OS自体が外部メディアからのアプリケーションインストールを拒否するようだ。
このように、WOAではデスクトップアプリケーションをユーザーがインストールできないため、マイクロソフトはWOA版の「Office 15」をプレインストール提供すると決定した。さすがにOfficeほど複雑かつ大規模なアプリケーションを、短期間でMetroスタイルアプリケーションとして開発するのは無理、ということだろうか。
Windows 7には、Home PremiumやProfessionalなど、複数のエディションが存在する。これはx86/x64用のWindows 8でも受け継がれると思われるが、WOAはどうやら1つのエディションだけとなるようだ。また、現状のWOAは32bit OSのため、Windows 8 64bit版に搭載される仮想化システム「Hyper-V」は搭載されない。
マイクロソフトでは、「HTML5とJavaScript」「XAMLとC#/Visual Basic」で開発されたMetroスタイルアプリケーションは、WOAとx86/x64の両環境で動作するとしている。一方「XAMLとC/C++」に関しては、CPUのネイティブコードが含まれるため、同一プログラムが両環境で動作することはない。それぞれの環境向けに再コンパイルすれば対応できるだろう。
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WOAはまず、タブレット市場にフォーカスして登場するだろう。デスクトップの市場にまでは、少なくともWindows 8の世代では広がらないだろう。そもそもARMアーキテクチャー自体、デスクトップパソコンやスタンダードノートで利用できるほどの、高い性能を持ったCPUがまだない。
将来を考えれば、ARMアーキテクチャーを使ったデスクトップパソコンどころか、サーバー製品も考えられる。NVIDIAはサーバー向けにARMアーキテクチャーを使うシステムの開発を進めていると聞く。しかしこれらも、まずはWOAが成功しないことには始まらないだろう。その意味でも、WOAと搭載タブレットが登場する日が楽しみだ。
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