このTahiti世代から、AMDはラムバスのメモリーインターフェース技術を採用したようだ。ラムバスは2011年1月に、「Advanced differential signaling for SoC-to-memory interfaces」と呼ばれる技術を発表している。端的に言えば、これはDDR3/GDDR5/XDR/XDR2をすべてサポートする新しいメモリーインターフェース技術で、例えば最初はGDDR5をベースに設計しておくが、後から対応メモリーをXDRやXDR2に変えるということを、チップの設計にほとんど手を入れることなく可能にするものだ。
Tahitiは当初「XDR2を採用する」といった噂が出ていたが、実際には384bitのGDDR5となったあたりが、これを端的に示している。ラムバスのメモリーインターフェース技術を採用する場合、IP(知的財産)を購入する分だけ価格は上がるが、標準的なGDDR5のインターフェースに比べて、省電力化とより高い周波数への対応が可能になる。
実を言えばRadeon HD 7870も、5.8GHzとかなりGDDR5の周波数が上がっている。これも標準的な技術で実装したのではなく、ラムバスの技術を使っている公算が高い。恐らくAMDは28nm世代で、ラムバスの技術を全面的に採用しているのではないかと思われる。
ではなぜTahitiはGDDR5になったのか? これは単純に、XDR2メモリーを量産しているメーカーが今はまだないからだ。XDRはプレイステーション3などの市場があるためエルピーダとサムスンが量産しているが、XDR2はまだ量産どころか、サンプル出荷すらされていない。ラムバス自身、メモリーインターフェース技術のデモにはXDR2の動作をエミュレートするロジック回路を使っているほどだ。
この状態で最終製品にXDR2を使おうとすると、出荷は最低でも1年、実際は2年ほど遅れることになるだろう。これでは2012年初頭の製品で、XDR2の採用はありえない。その一方で、TahitiはRadeon HD 6970と比較してもシェーダー数が増えたうえ、動作周波数も上がっている。おまけに処理効率が(AMDの言うとおり)上がったとすれば、GDDR5の周波数を多少上げたくらいでは追いつかない。この結果が384bitのメモリー幅になったと考えられる。
ちなみにこのTahiti XTをデュアルで搭載するのが、「New Zeland」こと「Radeon HD 7990」である。こちらは3~4月に登場と言われているが、Radeon HD 7970単体ですらフル稼働時の消費電力は200Wを軽く超えるので、それをそのままデュアルで載せたら、消費電力はカード1枚で500W近くなる。当然ながらシェーダー数を抑えたり、動作周波数を落とすという対策が必要になるだろう。
ところでAMDの28nm世代の全製品は、当初はPCI Express 3.0(Gen3)に対応させるように設計されていた。ところが規格化団体である「PCI-SIG」が、PCI Express Gen3で300Wを超える電源供給の仕様策定を拒否したことを受けて、28nm世代でのPCI Express Gen3サポートをいったんは取りやめたはずだった。ところが実際に発表されたRadeon HD 7970は、PCI Express Gen3対応となっている。
実のところ、Tahiti内部の回路は当初からPCI Express Gen3に対応していた。Gen3対応の検証をするかしないかだけの問題だったから、変更は比較的容易だったもようだ。AMD自身がPCI Express Gen3に対応したチップセットを出していないのに、ビデオカードがGen3対応というのはややちぐはぐだ。ひょっとすると、Ivy Bridge世代におけるGen3対応をあまりにも“謳い過ぎた”インテル系マザーボードベンダーが、いずれもグラフィックスカードでのAMDの有力なパートナーであることを考えると、こちらから強いプレッシャーがかかったのかもしれない。
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