「atomをbitにする、bitをatomにする。それがわたしたちのビジネスになる」
8日、米ヒューレットパッカード(HP)が中国・上海で開催した、大規模なプリンターの新製品発表会。ブロガーや放送局を含めて数百社ものメディアが詰めかける中、取締役副社長ビオメシ・ジョシ(Vyomesh Joshi)氏はそんなフレーズをかかげた。
現実にあるもの(アナログ)を仮想(デジタル)化し、逆に仮想化されたものを現実に戻す。そのプロセスのハブになるものが“印刷”だ。コンテンツが爆発的に増えているWeb時代にあって、その2つの往復がこれからのビジネスの鍵という。
その思想を具体化したといえるのが、3Dスキャナー機能を備えたプリンター最新機種「TOPSHOT」(LaserJet Pro M275)だ。撮影台に置いた被写体を、上部のアームについた6つのカメラがLEDライトを当てながら撮影する。プリンターは6枚の撮影データを合成し、1枚の画像を作る。ECサイトで商品の画像を作りたいときなどに非常に便利だ。
まさに「現実を仮想に、仮想を現実にする」という冒頭のモットーが端的に表現されたようなプリンターだ。ビジネスユーザーならずとも衝撃的なアイテムで、来春の発売と予価、また詳細なスペックの発表が待ち遠しい。
さて、HPからの発表はそれだけではない。キーワードはやはりWebだ。プリンター向けのアプリやクラウドなどの機能を次々と発表している(関連記事)。HPがここまでプリント事業に力を入れている背景には、事業全体としての大きなねらいがある。
「クラウドで、IPG(Imaging and Printing Group)を変革する」
彼らの掲げたモットーはこれだ。HPのIPG事業は現在、収益にして約260億ドル。この10年間、約70億ドル増という緩やかなペースで成長してきた。27年前、1984年のインクジェットプリンター「Thinkjet」シリーズからHPのIPG事業は始まった。それがクラウド時代の現在、ふたたび脚光を浴びようとしている。
だが、変革とはいったい何なのか。そのビジネス上のパイはどこにあるのか? 話を聞くと、どうやら初めにターゲットとなっているのは私たち(と名乗れるほど大きなものとは思えないが)マスメディアのようだ。