このページの本文へ

情報デリバリ・プラットフォームのサービスプロバイダーへ脱皮

謎の多い外資系キャリア「KVH」が初の事業戦略説明会

2011年06月30日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

6月29日、通信事業者であるKVHは同社初の事業戦略説明会を開催した。単なる通信やインフラの提供だけではなく、「情報デリバリー・プラットフォーム」であるとし、さまざまなサービス展開を説明した。

クラウド&マネージドサービスで
5年以内に売上を倍にする

 KVHは、米国のフェデリティ投信グループによって1999年に設立された通信事業者だ。外資系でありながら東京を本社としており、日本にフォーカスしたビジネスを進めているという。現在では、自前の超低遅延ネットワークと首都圏のデータセンターを中心に、IaaSやPaaSなどのクラウドサービスを展開。1850社の顧客は金融機関が4割を占めており、外資系企業の割合も高い。これまで着実にサービスをリリースしてきたものの、発表会等がほとんどなかったため、ベールに包まれた部分も多かった。

KVH 最高経営責任者のリチャード・ウォーリー氏

 同社初となる事業戦略説明会においてKVH 最高経営責任者のリチャード・ウォーリー氏が、冒頭に説明した会社概要や顧客重視の企業理念を説明。クラウドやマネージドサービスを延ばすことで5年以内に売り上げ高を倍にするといった事業目標を掲げた。また、これを実現するための組織改編やクラウドサービスへの投資、最新のITIL v3の導入によるオペレーションの効率化などの具体的なアクションについても説明した。

クラウドサービスと共に

 同氏はCIOの課題として、情報量の爆発と情報管理の複雑化、社内運用における非効率性などを挙げた。「1サーバーの運用コストは年間80万円にものぼる。このうち40万円は運用のための人件費。高速なCPUも処理能力を全部使えないし、使用する時間もばらつきがあるので、実際は12~16万円分しか使えない」という非効率性だ。

サーバーの運用コスト

 クラウドのようなアウトソーシングはIT運用コストを削減し、使った分だけ支払うという点で有効だが、現状は通信事業者とSIer・クラウドプロバイダーなど異なるベンダーが必要になる。こうした課題に対し、KVHの情報デリバリー・プラットフォームはクラウド、インターネット接続、セキュリティ、ボイスなどが一体化されたサービスになっており、データの保護、処理、保存、配信などを一括で提供できるという。このプラットフォームのベースになっているのが、東京・大阪などの大都市圏を中心にした1800ビルに直収できる完全二重化ネットワーク、そして首都圏に2箇所に設置された2つの大型データセンターだ。国内からグローバルへの進出も進めており、香港やシンガポール、シカゴへは自社のKVH設備が運用されているという。

 また、たとえ会社が1つであっても多くの通信事業者はネットワーク、データセンター設備、サービス部門、システムインテグレーションなど組織がサイロ化されており、トータルのサービス提供が難しいという。これに対してKVHは、サービスごとの組織構造を廃し、オペレーションや技術、営業マーケティング、間接部門がサービスをまたいで機能できるようにした。

サイロ化を防ぐ組織の再編

 5月に発表されたのが、KVH IaaSのコンピューティングリソースをリアルタイム構築、発注、管理できる新ポータル「KVH CloudGalaxy」だ。専用サーバー、仮想サーバー、ストレージ、ネットワーク、ファイアウォール、ロードバランサーなどのコンポーネントを自由に組み合わせ、ユーザーの要件に応じた構成を実現できるという。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード