厄介なのは、IRQ周りの拡張である。IBM PCやIBM PC/XTでは、IRQの管理にインテルの「8259 PIC」(Programmable Interrupt Controller)というチップを使っていた。これは最大8本までのIRQ信号を管理できるチップだが、IBM PC/ATでは接続するデバイスが増えたので、これでは足りなくなる。
そこでIRQ信号を合計16本に増やし、8259を2つ利用するようにしたのだが、その接続は図9のようになっている。上側の緑色がIBM PC/XTから継承したもので、下側の水色がIBM PC/ATで拡張された部分である。
IBM PC/XTとの互換性を保つためには、最終的に信号線をひとつの「INTR」(割り込み出力)にまとめる必要があった。そのため拡張された8259のIRQは、INT 2を共用するかたちで実装された。ちなみに追加されたIRQは以下のように割り当てられている。
8 | RTC(リアルタイムクロック) | 12 | PS/2マウス |
---|---|---|---|
9 | 未使用(IRQ2と重複) | 13 | FPU(i80287) |
10 | 汎用 | 14 | IDE1 |
11 | 汎用 | 15 | IDE2 |
ISA BusではDMAコントローラーも強化された。「0/5/7」の3種類のDRQ/DACKが追加され、合計5つのDMA転送が可能になった。
CPUの速度向上に
追従できなくなるISA Bus
このISA Busもまた、当時のCPUと同じ速度で動いた。そのため当初は6MHz、後追いで8MHzに高速化された。しかしインテルは最終的に、i80286の速度を12.5MHzまで引き上げており、さらにAMDの互換チップは最終的に25MHzに達した。流石に25MHz製品が出てくる頃にはマーケットが「i80386」に移行しつつあったので、これを搭載した製品はほとんどない。
それでもAT互換機を作っているメーカーの中には、12MHzや16MHzのi80286を搭載した製品があった。そうなるとISA Busも16MHzで動作するのだが、流石にこれだけ速度差があると、正常動作しないISA Busカードが大量に出現する、といった騒ぎになった。
さらにCPUがi80386から「i80486」に移行すると、ベースクロックが33MHz~50MHz、CPUの動作周波数は100MHzオーバーになっていく。こんな周波数にISA Busカードが追従することは不可能である。
そんなわけで、この頃になるとベースクロックを分周して、ISA Bus用のクロック信号を作るようになってきた。一番多く利用されたのは、ベースクロック33MHzを4分周、あるいはベースクロック25MHzを3分周した8.33MHz。これが最終的にEISAで採用され、ISA Busもこれにあわせて8.33MHzとなった。
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