Windows Phoneのエコシステムを
本当に立ち上げることはできるのか?
Elop氏は今後の戦略の柱として「ユーザーエクスペリエンス」「エコシステムの完成」「オペレータのサポート」「エコシステムをTV、ゲーム、車などに拡大」「開発者コミュニティ」の5つを示した。
2011年中に発表が見込まれている初のWindows Phone端末は、ハイエンド向けの端末になるという。その後、さまざまな価格帯に拡大していく。差別化については「(最初の端末で)ユニークな差別化を図る。その後、差別化をさらに進めていく」と述べる。
競合はあくまでもAndroidとAppleであり、現在Androidを採用しているメーカーがWindows Phoneエコシステムに参加することにも期待していると語った(AndroidとWindows Phoneの両方を採用するメーカーにはHTC、Samsung、LGなどがあり、Sony EricssonもWindows Monile搭載機を社内で開発している)。合わせて、地図などのNokiaのサービスが、他社のWindows Phone端末に搭載される可能性があることも示唆した。
開発プラットフォームとしてのWindows Phoneについては、Nokia端末から毎日600万件のアプリやコンテンツのダウンロードがあるとし、開発者に収益のチャンスを提供すると自信を見せた。2月にMicrosoftとの提携を発表して以来、現在Windows Phoneは開発者がターゲットするプラットフォームとしては第3位で、これまでに2万以上のアプリケーションが開発されているという。
Nokia自身が変わることが成功には必要?
このように話を聞いていると納得できるElop氏の建て直しプランだが、「“Systematic Failure”(系統故障)をどうやって防ぐのか?」というアナリストの辛口の質問に対しては、歯切れが悪く、「開発に要する時間を最低でも3分の1に縮小する」と答えるにとどまった。
Nokiaは解雇を含む組織再編を進めており、実行スピードの加速を図っているとElop氏は強調した。官僚的で意思決定に時間がかかるといわれるNokiaの体質が本当に変わるかどうかは、今後様子見となる。また、ブランドのイメージが落ちている点についても、対策らしい対策を示さなかった。
Nokiaのスピーチ後、Motorolaの幹部が「LiMoなどいくつかのOSを持っていた2~3年前の自分たちに重なる」とコメントした。Nokiaが立て直しを進める一方で、スマートフォン市場は急速に動いており、買収のウワサも絶えない。Nokiaが巨大船の方向変換に成功するのか、このまま沈んでいくのか。Elop氏のスピーチを聞いても、楽観できない気がした。
筆者紹介──末岡洋子
![](/img/2011/01/26/286581/l/45fa6609a463b6dc.jpg)
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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