シンセ1台、1音の世界観を追求
―― そのマニュアルはバラバラになる前に復刻して、iPad向けに電子書籍で売ってください。
佐野 でもアナログシーケンサーって、今考えると、すごく突き放した仕様じゃないですか。そこはコルグさんも「これでいいのかな?」という不安はあったみたいですけど、僕は自分のメインプロジェクトじゃないから、ピュアな気持ちで「超いいっすねー」って煽るだけ煽った感じ。これがもし自分のプロジェクトだったら、「これはどうなんでしょうかねえ。僕は楽しいんですけど、伝わらないかもしれませんねえ、ユーザーの皆さんには」みたいなことを言っていたのかも知れないなあ、と思う今日この頃です。
福田 えーっ、そうだったんですか!
―― どこら辺が伝わらないかもしれない部分ですか?
佐野 いや、だって「ド・プロフェッショナル仕様」じゃないですか。でも、コルグファンとしては、もっとマニアックにやってくれと。そういう距離感がたまらなく心地良かったです。
佐藤 実は初期の段階の資料があるんですよ、デチューンさんと仕様を詰めていた頃の。こういうのを並べながら考えたんですね(と手書きのメモが入ったプリントを取り出す)。この段階ではシンセが2台入っているんですよ。
―― あれっ、なんで1台になっちゃったんですか?
佐藤 iMS-20はオリジナルの回路をデジタルで忠実に再現して計算してるんでパワーが必要なんですよね。だからこそ、この音が出てるんです。
福田 最初の段階ではSQ-10が登場していなかったんです。でも、MS-20とSQ-10を並べてみたら、相当な威圧感があって、これがシンセ2つだったらどうなってしまうんだろう、という気もしましたし。そこはシンセ1台、1音の世界観を追求しようと思いました。
―― 2台使えるともっと良かったと思うんですけどね。「MS-50」(MS-20の音源モジュール版)も入ってるとか。
佐藤 iPad1枚を1モジュールと見なせませんか?
―― それは将来的にiMS-20同士で同期するということですよね?
佐藤 ……。(首をかしげる)
―― その沈黙は、やるってことですか?
佐藤 ……。(ふたたび首をかしげる)