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VMware vForum 2010レポート(2日目)

進化は止まらない!クラウドを支える先端の仮想化技術

2010年11月11日 10時30分更新

文● 渡邉利和

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11月9~10日の2日間、VMwareは東京都内でvForum 2010を開催した。2日目となる10日午前に行なわれたGeneral Sessionでは、新製品等のデモ中心の展開となった。

クラウド間接続とサービスレベル管理

 開会の挨拶を行なったヴイエムウェアの代表取締役社長の三木 泰雄氏に続き、同社のストラテジック アライアンス部長の名倉 丈雄氏が登壇し、さまざまな製品をデモを交えながら紹介した。

ヴイエムウェア ストラテジック アライアンス部長 名倉 丈雄氏

 同氏がまず紹介したのは、9日のGeneral Sessionでも取り上げられた「vCloud Director」だ。vCloud Directorは運用管理ツールの一種と見ることができるが、従来提供されてきたvSphere/vCenterとは異なり、物理サーバーを基準にリソースを把握し、管理するボトムアップ的なアプローチではなく、より抽象度の高いサービスレベルでの運用管理を可能にするツールだ。あらかじめ設定されたポリシーに基づき、異なるSLAが設定されたリソースプールから適切なリソースを取り出して割り当てるといった操作をマルチテナントで行なうことが可能だ。ユーザーから見ると、あらかじめ用意された「サービスカタログ」から任意のサービスを選んで利用するという形で適切なリソースを適切な分量だけ消費する、という形になり、まさに“IT as a Service”が実現する。

vCloud Directorの特徴

 また、vCloud DirectorはVMwareが主導する標準APIであるvCloud APIをサポートしており、vCloud Director同士であればクラウド間での仮想マシンの移動が実現できる。もちろん、vCloud APIが標準として確立され、さまざまなクラウド環境に実装されるようになればvCloud Directorなしでもクラウド間の相互接続が実現できるようになっていくわけだが、現時点でデータセンターをまたがったクラウド間を接続するなら、まずはvCloud Directorを利用するのがもっとも簡単なアプローチとなる。

柔軟なITリソース調達を実現するvCloud Director

 vCloud Directorは、クラウド事業者がユーザーに対してセルフサービスポータルを提供する際の基盤ツールとしても有用だが、企業内でも部門ごとのITリソース使用量を可視化するなど、ユーティリティコンピューティング的なアプローチを導入する際にも役立つ。さまざまな用途に使えるだけに、逆に一見して理解できるようなシンプルなツールとは言い難い面もあるが、利用方法はシンプルそのものであり、実装の詳細に踏み込むことなく必要なITリソースを必要なときに必要なだけ確保する、という点に限れば特別な学習の必要もなくすぐに使い始められるであろうことはデモからも伺えた。

ハイパーバイザーの自動構成

 また、国内では初公開のデモとして、「vCompute: Auto Deploy」も紹介された。これは、ハイパーバイザーを物理サーバー上にセットアップする負担を軽減することを狙った機能で、現在はまだ開発途中という段階のものだ。ハイパーバイザーに関しては、VMware ESXiによってハードウェア組込型での提供が可能になっているが、だからといって新しいサーバーを持ち込み、電源を入れるだけで即座に利用可能になる、という状況ではない。ネットワークの設定やストレージの設定など、サイトごとの環境設定を行なう必要があるわけだが、この負担は大規模なクラウド環境では無視できない。

vComputeのAuto Deploy機能

 Auto Deployの基本的なコンセプトは、物理サーバー上から個別具体的な設定情報などを排除し、物理サーバーを“ステートレス”にすることだ。これが可能になれば、ハイパーバイザー環境に関してはバックアップ/リストアの負担もなくなる。仮想サーバーに関してはすでに物理サーバーとは切り離された形で運用が可能になっているため、ハイパーバイザーの設定情報も物理サーバーから切り離すことができれば、物理ハードウェアに対する運用管理負担もなくなり、物理的な障害が発生した際にのみ対応すればよくなるわけだ。

 Auto Deployは、ハイパーバイザー環境自体がディスクレスブートしてくるようなイメージだ。実際には、あらかじめ個別に設定された環境をリモートから読み出すという形ではなく、事前に設定されたポリシーに従って起動時に自動的に必要な構成が行なわれる、という形になっているようだが、ポリシー設定の詳細などはデモからはわからなかった。

さまざまな分野での展開

 このほか、1時間ほどの講演の中で「多すぎる」と言うほどの新たな取り組みが次々と紹介された。セキュリティ関連のvShield、ストレージベンダーとの協力に基づいてストレージハードウェア側の機能を活用できるような標準APIをストレージ側に実装しようという取り組みとなるvStorageや、ネットワーク分野での標準プラットフォームとなることを目指したvChassisなども紹介された。

 単純にまとめてしまえば、こうした取り組みは基本的にはクラウド環境に向かって大規模化していく仮想化インフラの運用管理を効率化し、さまざまな物理ハードウェアをオープンな形で仮想化インフラに取り込みつつ、その機能/性能を引き出していくことを狙ったものだと捉えられる。ヴイエムウェアは、既存の企業内ITインフラを仮想化し、そこに外部のクラウド環境への接続性を与えることでハイブリッドクラウドに発展させていく、という方針を掲げているが、それは仮想化からクラウドへのシフト、という形ではなく、仮想化環境のより一層の機能強化/進化という点を忘れてはいない点が同社らしいところだといえるのではないだろうか。

 仮想化技術もすでにコモディティ化しつつあるとはよくいわれるし、市場の関心は仮想化を飛び越えてクラウドばかりが注目を浴びる状況になっているようにも見えるが、よりよいクラウド環境を実現するために仮想化インフラが備えているべき機能に注目すると、実は仮想化インフラに関してもまだまだ大きな進化の余地が残されていることが同社の取り組みから伺える。逆に、こうした地味な基盤技術に着実に取り組んでいることが、同社の一貫した強みとなっているのだろう。

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