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FCoE対応製品とUCSの新製品の計画もあきらかに

サイロ化したシステムをシスコのDC 3.0が救う

2009年10月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月15日、シスコシステムズ(以下、シスコ)はSaaSやクラウドの基盤を提供する「DataCenter 3.0」の現状を解説するプレスイベントを行なった。ITのサービス化という流れの中で、DC3.0がどのように受け入れられたか、そして同社が力を入れるFCoEやUCEといった技術や製品に関する説明も行なった。

サイロ化を解消する「Unified DataCenter」

シスコシステムズ合同会社 アーキテクチャ&テクノロジ事業統括 マネージングディレクター 石本龍太郎氏

 DC 3.0はシスコの次世代データセンター構想として2007年に提唱したコンセプトで、システムの統合化と仮想化、そして自動化を推進するものだ。製品の面ではサーバやストレージの接続を統合する大容量スイッチ「Nexusシリーズ」のほか、サーバ市場参入として話題を呼んだ「UCS(Unified Computing System)」などが投入されている。

 シスコの石本龍太郎氏はこうしたDC 3.0が、ヤフー、日本ユニシスをはじめ多くのサービスプロバイダで受け入れられている現状を解説。特に新しいチャレンジになるUCSに関しては「8月に出荷を開始したが、多くのお客様が検証目的で購入している。すでに100件を超える引き合いが来ているが、仮想化よりもすでにクラウドを念頭に置いているようだ」(石本氏)と、好調の様子だ。

 そして、今後はDC 3.0を構成する技術を緊密に連携し、データセンターの複雑さを解消する「Unified DataCenter」を提供すると述べた。「データセンターやプロバイダの方に話を聞くと、管理が統合されていないシステムを構築してしまったと、自嘲的にお話しされる方が多い。こうしたサイロ化した既存のサービスを統合し、拡張性の高いシステムに組み上げていくのがUnified DataCenterの目的だ」と石本氏は説明する。

UCSやNexusなどDC 3.0製品は幅広く受け入れられた

多くのプロバイダが陥るサイロ化したシステム

 また、今まではインフラの提供がベースであったが、今後はTV会議システムを代表とするコラボレーションツールやセキュリティ製品も統合してデータセンター向けに提供していくとのこと。インフラ部分だけではなく、よりアプリケーションに近い部分もDC 3.0に組み込んでいく方向性だ。さらに、UCSで重視されているエコパートナーと協業も進めていく。たとえば、来週都内で開催されるVMWorldでは、競合ベンダーの展示ブースをまたがってクラウド環境を相互接続し、仮想マシンのvMotionを実行するデモンストレーションも行なうという。

FCoE標準化以降の製品化の道筋は?

シスコシステムズ合同会社 プロダクトマネージメント プロダクトマネージャ 河野真祐氏

 後半はプロダクトマネージメント プロダクトマネージャの河野真祐氏がDC 3.0のコア技術の1つであるFCoEの最新動向と新製品について説明した。FCoEは文字通りFC(FibreChannel)をEthernet上で実装するプロトコルで、データセンターのケーブリングをシンプルにする目的がある。河野氏によると、2009年6月にFCoEはANSI INCITS T11でFC-BB-5として標準化作業が完了。今までは各ベンダーでEthernetの拡張についてDCEやCEEと呼ばれていたが、シスコは今後すべてIEEE DCBに統一するという。具体的には、フレームフォーマットを定めるFCoEだけではなく、FC接続された実体を探すためのコントロールプレーンプロトコル「FIP(FCoE Initializetion Protocol)」が標準化された。NexusではFCoEのフレーム転送はすでに互換性があり、追加されたFIPに関してはNX-OSのアップデートにより対応するという

 そして、DC 3.0関連製品としては、FCoE用のインターフェイスであるCNA(Converged Network Adaptor)について紹介した。「第1世代で4つのASICが搭載されていたが、第2世代では1つのASICで済むようになった。この結果、1Uサーバやブレードサーバにも搭載できるようになった」(河野氏)とのこと。将来的にはマザーボードへの実装が進み、価格も一気に下落すると予想している。

 こうしたFCoE技術の動向を受け、同社はまず他社のブレードサーバに挿入可能な「Nexus 4000」を追加する。20のポートを搭載でき、遅延も小さい。仮想スイッチである「Nexus 1000v」ともシームレスに統合されるという。

 また、UCSの新モデルとしてラックマウント型の「UCS Cシリーズ」が追加される。UCSは今までブレードサーバのBシリーズのみの提供だったが、ラックマウント型のUCS Cシリーズの追加により、よりユーザー層が拡がるという。1Uと2Uのモデルのほか、最大384GBという大容量メモリをサポートするモデルもある。

ラックマウント型のUCS Cシリーズ

 UCS Cシリーズは2010年初頭に出荷され、当初は既存のツールで管理を行なう「通常のサーバ」として提供され、来年の夏に統合管理ツール「UCS Manager」で統合管理できるようになる。今後はWAN高速化装置やロードバランサなど同社が今まで提供してきたアプライアンスもUCSサーバに搭載されていくことになる予定。「統合」に邁進するシスコが、最終的にどこまで行くのか気になるところだ。

発表会の最後には、シスコ社内にあるUCSラボも披露された

Cシリーズではないが、384GBというメモリのお化けぶりを見せてもらった

FCoEの標準化は完了していますが、IEEEでの標準化は完了していない旨、ベンダーから連絡を受けたので訂正します。本文は訂正済みです。(2009年10月20日)

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