割合はわずかでも絶対数は多いので目立つ
少し脱線すると、今回の計算の母数として算出された2億3400万人というネットニュース閲覧人口には誤差がある。誤差がでる要因は以下の2点。
ひとつは、ニュースを見る人間すべてが中国全土のニュースを見ているわけではないということ。(具体的な数字こそ未知数だが)国際問題とか国家規模のニュースなどはどうでもよくて、地元の省、地元の都市だけに興味がある人も、かなりいると思っていい。つまり新浪などのニュースサイトにアクセスし、国際問題や、全土ニュースを見る中国人は2億3400万人よりは少ないわけだ。
もうひとつ。以前記事で紹介したが、個人のブログ記事で、まるまるニュース全文がコピー&ペーストされて掲載されることがある。これを見る人間がどれほどか、という数字は出ていない。ブログを見る人間を加味すれば、ネットでニュースを見る中国人は2億3400万人よりは多いことになる。
筆者の周囲にいる中国人やネットカフェで見た「皮膚感覚」で言えば、ニュースサイトを見ている人はそう多くない。また百度のCEO李彦宏(ロビン・リー)氏をはじめとして、中国のメディアや政府関係者が「中国のインターネットは極度に娯楽色が強い」とも言っている。
破壊衝動は愛国心とは無関係
「若者は生活が苦しくて特に明確なポリシーもなくデモに参加し、叫んだり破壊行為を起こしている」という意見もある。
再度書くが、ネットでニュースを見る人のうち、中国のために立ち上がり、ネットでアクションを起こす人は3.48%。数にして800万強だ。
中国人は集団になると途端に勢いが増すので、3.48%(800万強)が現実世界でムーブメントを起こせば、ネットを利用しない人にもムーブメントが伝達する。伝達すればそのパワーは、世界が驚愕するイベントになるのは間違いない。
……などと、堅苦しく書いてしまったが、例えばクリスマスの繁華街に若者が集まり、翌日には電話ボックスが壊されていたなんてことが普通にある。名目がなくたって、壊す人は壊すのである。
ただ知ってもらいたいのは、割合から言えば、実はネットで見るような「愛国に怒れるコテコテな中国人」というのは、ベタといえるほどの数字ではなく、割合にして全人口の0.6%しかいない少数派なのだということだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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