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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第134回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月11日~5月17日

「OTへのサイバー攻撃を経験」が76%、Z世代との1on1面談は“詰問調”になりがち、医療機関のランサム被害、ほか

2024年05月20日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2024年5月11日~5月17日)は、他業界よりも被害が深刻化しがちな医療機関でのランサムウェア攻撃、国内コラボレーションワークスペース市場の動向、OT環境に対するサイバー攻撃の実態と組織の課題、Z世代の職場コミュニケーションの特徴、世界40カ国の企業における生成AIへの意識についてのデータを紹介します。

[セキュリティ]医療機関のランサムウェア被害頻度は全体平均を50%上回る(Rubrik Japan、5月14日)
・一般的な医療機関が保有する機密データレコードは4200万件以上、全体平均(2800万件)より50%多い
・2023年、医療機関におけるランサムウェア暗号化攻撃の経験頻度は全体平均を50%上回った
・ランサムウェア暗号化が成功するたびに、医療機関の機密データの20%に影響が及ぶと推測

 6100社以上の顧客基盤におけるRubrikの測定データと、1600人以上のITおよびセキュリティリーダーを対象とした調査結果をまとめた。平均的な医療機関は、全体平均より22%多いデータを保護しており、そのうち機密データレコードは全体平均より50%多い4200万件に達する。推定では、医療機関に対するランサムウェア攻撃は全体平均の5倍もの機密データに影響を及ぼし、ランサムウェアによる暗号化が成功するたびに、医療機関が保有する機密データの20%に影響が及ぶとしている。また、医療機関で暗号化されたデータの97%が仮想化アーキテクチャ内で発生しており、これも全体平均の83%を上回る。

医療機関におけるランサムウェア暗号化攻撃の被害は、大規模グローバル企業のそれを上回る規模になる(出典:Rubrik)

[生産性]2023年の国内コラボワークスペース市場は前年比8.7%成長、今後は生成AI活用ニーズが市場を牽引(IDC Japan、5月14日)
・2023年の国内コラボレーティブワークスペース市場は前年比8.7%増
・2023~2028年はCAGR(年間平均成長率)6%と予想 ・コンテンツサービスアプリケーションが市場を牽引、2024年は生成AIの活用意向が高い

 国内コラボレーティブワークスペース市場は2023年、売上金額3818億3000万円と前年比8.7%の増加だった。市場の成長を牽引したのは、構成比が大きいコンテンツサービスアプリケーションの継続的な成長。一方で、過去数年間、急速に浸透した会議/バーチャルイベント市場は「調整局面」に入っている。2024年以降は、生成AI機能の活用を伴うアプリケーションの刷新需要、非構造化データ活用のニーズ拡大、労働人口減少に伴うデジタル化などが成長要因になると予想している。市場全体は2023~2028年の間、CAGR6.3%で成長し、2028年には5180億5400万円規模まで成長すると予測されている。

国内コラボレーティブワークスペース市場の推移、2024年以降は生成AIの活用への投資意向が上向くと予想している(出典:IDC Japan)

[セキュリティ][OT]76%の組織がOT環境へのサイバー攻撃を経験(パロアルトネットワークス、5月14日)
(URL探せず。。。) ・OT環境でサイバー攻撃を経験した組織は76%(日本、グローバルとも)
・日本の26%が過去1年間に業務停止を経験
・OTを標的とする攻撃の72%は「IT環境に端を発する」

 日本を含む20カ国以上の経営層1979人を対象に、OTセキュリティの現状を調べた「The State of OT Security(OTセキュリティレポート)」より。過去1年間で76%の組織が「OT環境を狙うサイバー攻撃を経験した」と回答。また、サイバー攻撃により業務停止を経験した組織も26%に上った(グローバルは24%)。OT攻撃の72%が「IT環境が発端」となっており、OTとITの担当部門は協力し合う必要があるが、両部門間で「連携が取れている」は12%にとどまり、「摩擦がある」という回答が39%を占めた。

「OT環境を狙うサイバー攻撃を受けた経験の有無」(左)と「過去1年間にサイバー攻撃により業務停止をした経験の有無」(右)。共にグローバルの結果(出典:パロアルトネットワークス)

「攻撃の発生場所」は「IT」が72%を占めた(左)。しかし、39%が「OTとITの部門間に摩擦がある」と回答(右)(出典:パロアルトネットワークス)

[Z世代]Z世代の1on1、上司との会話は少なく、上司は“詰問調”になりがち(コグニティ、5月15日)
・Z世代は上司との1on1面談で会話量が少ない(X世代の72%)
・Z世代との1on1で、上司は1分に1回の“CLOSED質問”、詰問調になりがち
・Z世代の営業トークは「あのー」「ええと」のようなフィラーが他世代の半数

 上場企業7社・計435人を対象に、AIを用いて社内外コミュニケーションの世代差を分析した「Z世代のコミュニケーション特性 2024」より。Z世代との1on1(1対1の面談)において、上司は回答が選択形式の“CLOSED質問”を平均27.3回することがわかった。これはY世代が相手の場合(19.1回)よりも多く、自由に回答できる“OPEN質問”で考えを引き出すことが好ましいと考えると、「Z世代が相手の1on1はうまくいっていない」ことを示している。部下側の話量は世代が若くなるほど減り、X世代は50.7%、Y世代は55.2%であるのに対し、Z世代は48.9%だった。

Z世代のコミュニケーションの特徴(出典:コグニティ)

上司と部下の1on1における、世代別のOPEN質問とCLOSED質問の比率(出典:コグニティ)

上司と部下の1on1における、「世代別の部下側の話量」(出典:コグニティ)

[AI]「生成AI/AIが幅広い業界を変革する」と考える企業は、売上伸び率が高いほど多い(デル・テクノロジーズ、5月16日)
・売上伸び率が25%以上の企業の90%が「生成AI/AIは将来業界を変革する」と回答
・「自社業界の3~5年後は不明確」は世界48%、日本56%
・イノベーションの課題は「適切な人材の不足」(35%)「データプライバシーとサイバーセキュリティへの懸念」(31%)

 世界40カ国で従業員100人以上の企業に勤務する6600人を対象に行った「Innovation Catalyst」調査より。生成AI/AIが将来的に「幅広い業界を大きく変革する」と回答した企業は81%(日本70%)。中でも売上伸び率が25%以上の企業群では91%(日本90%)がそう回答した。生成AI導入に着手している企業は58%、生成AIのポテンシャルとしては「ITセキュリティ体制の強化」(世界52%、日本24%)、「生産性向上」(同 52%、30%)など。克服すべき課題として「新たなセキュリティとプライバシーの問題」(同 73%、58%)などが挙がった。

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