働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。
今回のお悩みは「産休・育休」について
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今月のテーマは、「働く女性の産休・育休」について。
初めての出産を来年に控える、仕事・キャリアにも力を注ぎたいという30代の女性からお便りをいただきました。
いち早く復帰する? それとも産休・育休をフルで取得する?
正能さん、こんにちは。
今回、相談させていただきたいのは、仕事が好きで、仕事を積極的に頑張りたい女性の産休・育休についてです。
私は今年34歳になります(女性です)。
学生時代から、働くこと・仕事が好きで、多くの時間を、仕事に使って生きてきました。
特にこの2〜3年は責任のある立場になってきて、とても楽しくやりがいを感じながら働いております。
そんな中、妊娠がわかり、今から産休・育休をどう取得しようか頭を悩ませています。(出産は来年を予定しているのですが、そろそろ会社とのすり合わせの面談が始まります)
産休・育休と言ってもまだイメージが湧かないため、すでに出産経験のある友人に相談すると、多くの場合、「せっかくの権利なんだから、休めるだけ休んでは」「赤ちゃんのことを考えてゆっくりしたほうがいい」「子どもの面倒を見ることを考えると、仕事するのは現実的ではない」「子どもとの時間を大切にした方がいい」と、ほぼ100%、産休・育休を長めに取得することを勧められます。
ただ一方で私自身は純粋に仕事が好きですし、何より中途半端なタイミングで仕事を放り出すことは無責任なようにも思えて、できるだけ長く仕事をする=できるだけ短く産休・育休を取得することが自分に合っているような気もしています。
とはいえ、イメージが湧いていない中での考えであり、さらには相談する人相談する人「長めに」というアドバイスを聞く機会が多いため、短い期間での産休・育休で、仕事や出産・育児をやり切れる自信も徐々になくなってきました。
私から見た正能さんは、私と同じく仕事がお好きなタイプだと思うのですが、どれくらいの期間、産休・育休を取得しましたか? それはなぜですか?
そして、もしもタイムマシーンで戻れるとしたら、その時には産休・育休をどれくらいの期間取得しますか?
プライベートな質問であることは重々承知しておりますので、書ける範囲でもちろん大丈夫です。なかなかに悩んでおり、決めるきっかけになるアドバイスがいただけるとうれしいです
(カノウさん(仮名)・34歳・会社員)
育休の長さは、自分の希望だけじゃ決められないかも?
カノウさん、ご相談ありがとうございます。
産休にフォーカスしてお返事させていただいた前回に引き続き、今回は育休についてお伝えさせてください。
育休に関しては、正直私は産むまで全く想像できていなかったのですが、私の場合は「母乳」が何よりのポイントになりました。
というのも私は、産前より早めの仕事復帰を希望していたかつ大好きなお酒をずっと我慢していたため、「ミルクを中心に育てたい」と強く思い、母乳は「もしも出たら思い出程度」にあげるつもりでいたのですが、これが驚くことに「私がどう思うか、どうしたいか」だけじゃどうにもならなかったんです。
もちろん一定コントロールできる部分もありますが、ベースにあるのは体質なので、「母乳が出やすい、出にくい」「乳管が詰まりやすい、詰まりにくい」などなど、同じ母乳といえど、いろんな体質を持った女性がいます。
私の場合、「母乳過多」という母乳が出すぎてしまう体質だったので、母乳をあげないと胸がカチコチになるほど張って痛みが出てしまうことから、強くミルクを希望していたにもかかわらず、母乳をあげざるを得ないという状況に無条件で突入しました。夫には「私、母乳じゃなくてミルクで育てたいって言ってたよね? なんでこうなったの?」と、涙ながらに何度も愚痴ったほどです。(苦笑)
ただそれでも、仕事には復帰したかった。
そこで、「搾乳した母乳を自宅で冷凍保存して、あげる時には冷凍した母乳を解凍して、保育園で哺乳瓶経由であげてもらう」というプランに切り替えました。
夜間以外は直接母乳をあげることをやめ、日中は電動の搾乳機を使い、仕事中でも短時間で搾乳ができるよう、両胸一気に搾乳する習慣をつけ、子にも哺乳瓶で液体を飲める練習をしてもらいました。
復職10日前に40度の熱。原因は「乳腺炎」
……と自分なりにしっかりと準備を重ねて、産後2ヵ月での職場復帰を目指していた私ですが、復職10日前に事件は起きました。
40度の熱が出て、震えが止まらず、身体中が痛い。何事かと思いきや、「乳腺炎」という、母乳が乳管に詰まってしまう症状を起こしてしまっていたんです。
このとき私はすでに復職に向けた、人事や上長との面談も終えていて、搾乳を中心に育児をしながら職場復帰することを家族以外の人にも伝えていました。
ところが乳腺炎になってわかったのは、自分の体質はとても乳腺炎になりやすい体質で、搾乳機を使うとますます母乳過多が加速して、乳腺炎を繰り返してしまうという悪循環でした。
そこで搾乳をやめて、直接母乳をあげる形に切り替えざるを得なくなりました。
(ちなみに復職前夜にも40度の熱が出て、私も夫も「明日からの復帰は無理だろう」と思っていたものの、復職当日の明け方に回復したというトホホな思い出話もあったりします)
体質って、どうにもならないからこそ。
そんなこんなで、産む前に目指していた「ミルクで育てる」ことを諦め、復職前に想定していた「搾乳した母乳を哺乳瓶経由であげる」ことも諦め、現在は在宅で働きながらシッターさんに子どもを見てもらい、3時間に1回、30分程度直接授乳しながら、働いています。
(なお労働基準法では、母性保護規定が定められており、「育児時間」として、8時間労働のうち少なくとも30分の時間休を2回申請することができます。これは1歳未満の子どもを育てながら働いているすべての女性が対象のため、どのような雇用形態で働いていても育児時間は申請できます)
産前考えていた「ミルクで育てる」プランとは真反対にある状況に自分自身戸惑いつつ、それでもどうにか働きながら、今私が改めて思うのは、「体質はどうにもならないから、どうにでも受け身を取れるように、会社や所属組織にはいろんな可能性を伝えて相談しておくべきだ」ということです。
「自分はこうしたい。でもこういう可能性もあるかもしれない。その時にはこんな迷惑をかけてしまうかもしれない。でも働きたい」。
産前から一切の変更なく復職することは難しい可能性もあるからこそ、できるだけ受け身を取りやすいよう、復職前に、自分と会社でよく相談しておくのが何より大事なポイントだと、自身の反省も踏まえて今の私は考えています。
「自分はこうしたい」だけじゃ決められないことがあることが、少しでも多くの人に伝わって、働く人とそれを受け止める組織の両方にとって働きやすい世の中になったらいいですよね。こうした働き方を受け入れてくれる組織とメンバーに深く感謝しながら、私自身も日々精一杯働くことができたらと思います。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア「サラリーズ」事業責任者
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における2つの新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。
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