アドビが展開するクリエイター向けの製品群は、ここ数年で大きくそのカバレッジを広げている。「Adobe Creative Cloud」に含まれるPhotoshopやIllustratorといった代表的な製品で、iPad版やウェブ版などのマルチデバイス化が進む一方、昨年末からは、豊富なテンプレートを用いて誰でも簡単にコンテンツを作成できるウェブ&モバイルツール「Adobe Express」の提供も開始されている。
さらに昨年は、3D制作ツール群として「Adobe Substance 3D Collection」を発表。ウェブベースの動画制作ツール「Frame.io」を買収して、Premiere Proとの連携を進める一方、今年9月には新たに、ウェブベースのUXデザインツール「Figma」の買収も発表された。
それぞれの製品のターゲットや狙い、Adobe Expressの役割について、アドビ最高製品責任者(CPO)スコット・ベルスキー氏を取材した。
──Figmaの買収について教えてください。基調講演にはCEOのディラン・フィールド氏も登壇しましたが、アドビがFigmaを必要とする理由は何でしょうか?
スコット・ベルスキー氏 今、製品デザインと開発は垂直統合されつつあります。Figmaのユーザーの30%は開発者でFigmaは開発者をはじめ、すべての関係者が製品開発に参加できるソリューションです。我々にはAdobe XDがありますが、これは画面のデザインのみに焦点を当てたデスクトップ製品で、ウェブベースではないし、製品の設計や開発に適したソリューションではありません。
一方でアドビは、アセットを作るビジネスを展開しています。イメージやビデオ、オーディオ、アニメーション、3Dといったアセットの多くは、Figmaで作られるようなインタラクティブな製品体験に行き着きます。クリエイターがアセットを作り、開発者はそのアセットを使って製品体験を作る。この2つのプロセスをつなげることで、より生産性を高められると考えています。
──3Dはメタバースだけでなく、幅広く活用できるコンテンツとして注目されるようになってきています。「Adobe Creative Cloud」と「Adobe Substance 3D」を分けているのはなぜですか?
ベルスキー氏 今3Dの革命が起こっていて、すべてのブランドがこれをどのように活用できるか考えています。将来の没入型体験のためだけでなく、すでにマーケティングや製品開発、日々使われるイメージや動画にも活用され始めています。ですので、私たちはSubstanceの製品をCreative Cloudと一緒に使えるようにしています。しかしラインは分けるべきだと考えています。それはSubstanceだけを使いたいというお客様も多いからです。