量子科学技術研究開発機構などの国際共同研究チームは、核融合反応を促進する高速ヘリウムによるプラズマ加熱と、核融合反応を阻害する低速ヘリウムの炉心からの排出を両立できる条件を世界で初めて明らかにした。核融合炉の性能向上に向けた制御手法の開発につながることが期待される。
量子科学技術研究開発機構などの国際共同研究チームは、核融合反応を促進する高速ヘリウムによるプラズマ加熱と、核融合反応を阻害する低速ヘリウムの炉心からの排出を両立できる条件を世界で初めて明らかにした。核融合炉の性能向上に向けた制御手法の開発につながることが期待される。 研究チームは、欧州の核融合研究機関コンソーシアムであるユーロフュージョン(EUROfusion)および東京大学との国際共同研究を実施。欧州の核融合実験装置「ジェット(JET)」で生成されたプラズマの高速ヘリウムおよび低速ヘリウムの振る舞いに関する実験結果を、核融合専用スーパーコンピューター「JFRS-1」の数値実験で解析した。その結果、プラズマに流す電流の分布を最適化することで、低速ヘリウムを排出するのと同時に、高速ヘリウムを炉心に閉じ込める可能性を初めて示した。 核融合炉では、重水素と三重水素を燃料とする核融合反応で生成された高速ヘリウムをプラズマの加熱に利用する。一方で、高速ヘリウムはプラズマを加熱してエネルギーを失うと低速ヘリウムとなり、炉心プラズマに蓄積して核融合反応を阻害する。そのため、核融合炉の効率的な運転には、高速ヘリウムでプラズマを加熱しつつ、低速ヘリウムを排出する必要があるが、低速ヘリウムだけを選択的に排出する条件がこれまで明らかになっていなかった。 今回の研究成果は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)2022年7月8日号に掲載された。(中條)