マランツは10月26日、予告していたAVアンプの新シリーズ「CINEMA series」を発表した。10年以上続けてきたデザインを刷新し、ラインアップも再構成。従来製品の後継ではなく新シリーズとして展開する。まずは、薄型モデルの「CINEMA 70s」と上位モデルの「CINEMA 50」の2モデルを発表。両者の間に入るモデルや、ハイエンドのセパレートモデルの展開などもあるそうだ。
大きな特徴は外観の変更。2020年に発売した「MODEL 30」から始めた、マランツの新世代デザインを採用。ごつごつとしたイメージになりがちなAVアンプの中で、シンプルかつ高品位でインテリアになじむのが特徴。“見せて使いたい”と思わせる製品だ。
内部の設計も一新。AVアンプが実現する非日常の体験、リビングルームをもうひとつ上のクオリティへ上げるといったコンセプトのもと、サラウンド再生はもちろん、ミニマムな2ch再生でも高音質なシネマ/音楽再生が楽しめる点を訴求していく。例えば、テレワークなどで在宅作業が増えたビジネスマンが、家で画面にスポーツなどのテレビ放送を表示、音はHEOSからの音楽再生しながら過ごし、重要なシーンではテレビの音に切り替えて観戦に集中するなど、生活になじんだ提案をしている。
リモコンにもこだわっており、ライティング機能を付けたり、HDMI 1/2出力のリモコン切り替えができるようにしたりしている。これは日本のインストーラーからの要望で、Auto、HDMI 1、HDMI 2と順に切り替わる。
CINEMA 70sの特徴
CINEMA 70sは「s(slim)」の型番が示すように、高さ109mmの薄型7.2chアンプだ。12月下旬発売で、価格は15万4000円。カラーはシルバーゴールドとブラックが選べる。
これはCINEMAシリーズ共通だが、一目でわかるフロントパネルの違いだけでなく、トップカバーやシャーシを構成する鋼板の形状、各部を固定するネジの太さ、その本数に至るまで吟味している。ビルドクオリティが大きく進化し、部品の安定した固定と剛性の確保が可能となった。側面のネジは3mmサイズから4mmサイズになったが、これも新規設計だからできる特徴だという。
機能面ではDolby AtmosやDTS:Xに対応。4K/8K放送のMPEG-4 AACのステレオ/5.1ch再生が可能だ。単体で最大5.1.2chシステムを構築できる。サラウンドバックやハイトスピーカーを使わないのであれば、メインスピーカーのバイアンプ駆動も可能。プリアウト端子も備えており、外部アンプの追加も可能。AVアンプでプリアンプ出力をフルに備える機種は比較的ハイエンドになるため、このクラスで対応しているのは貴重かもしれない。
7chのパワーアンプは、フルディスクリート仕様。上位機で用いている高音質パーツを多数投入している。最大出力は100W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。
電源回路にはCINEMA 70s専用に開発された6800μF×2のカスタムコンデンサーを採用。25Qの大電流容量に対応する整流ダイオードを使うことで、高速かつ安定した電源供給を実現しているという。信号処理用に、32bitフローティングポイントのクアッドコアDSPを搭載。高い処理能力により、音源のクオリティを余さず引き出せるという。
本体サイズは幅442×奥行き384×高さ109mm(アンテナを寝かせた状態)で、重量は8.7kg。
CINEMA 50の特徴
CINEMA 50は9chアンプを搭載。12月上旬発売で、価格は28万6000円。カラーはブラック。4chのサブウーファープリアウトを持ち、最大5.4.6chのセッティングが選べる。また、CINEMA 70sがサポートしない、IMAX Enhanced、Auro-3D、360 Reality Audioに対応する。
デザインはCINEMA 70sと共通性が多い。フロントパネルの面積が大きく、かつ前面のあしらいがシンプルなので大型でも洗練された印象を受ける。ディスプレーは従来のFL管から有機ELに変更。視認性がアップした。有機ELは動作周波数が高いため、音質への影響も気になるところだが、裏面にシールドを配置して対策。加えて、肉厚モールドのインシュレーターを使いしっかりと筐体を支えている。
サブウーファー出力は4chすべてに同じ信号を出す「スタンダード」モードと、小に設定したスピーカーの低音成分を振り分けて再生する「指向性」モードの2種類が選べる。従来はサブウーファーの距離や向きが揃わなくても同じ音圧で出力していたが、距離測定と音圧調整が可能になっている。また、スピーカーすべてが大の設定でも、「LFE+メイン」の設定にすることで、サラウンドスピーカーの低域を強制的にサブウーファーに割り当てることができる。
11.4chのプリアウト出力が可能。プリアンプ出力時に使わないパワーアンプ回路は、チャンネル個別にオン/オフできる。15chぶんあるプリアンプ回路にはすべてHDAM-SA2を使用。プリアンプでゲインを上げるわけではないため、機能だけを考えれば不要(実際MODEL 70sは非搭載)だが、マランツらしい音を追究するために搭載している。HDAMモジュールは、AVアンプ用ではなく2chのHi-Fiアンプのハイグレードなものだ。
9chのパワーアンプは、フルディスクリート仕様。最大出力は220W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。
電源回路にはCINEMA 50専用のブロックコンデンサーを搭載。12000μF×2と大容量。音場補正機能はAudyssey MultiEQ XT32に加え、Dirac Liveのアップデートにも対応予定。
本体サイズは幅442×奥行き404×高さ165mm(アンテナを寝かせた状態)で、重量は13.5kg。
CINEMA 70s、CINEMA 50の音質は?
試聴もできた。まずは薄型AVアンプの人気機種「NR1711」とCINEMA 70sの比較から。CINEMAシリーズはモデルごとの価格設定も従来とは変えており、ランクはアップしている。比べると空間は大きく広がり、高さも増した立体的な音場が展開される。個々の音についても、より豊かなニュアンスが出て楽曲や音響の細かな部分までよくわかる。さらに、CINEMA 50では大型筐体で設計に余裕があり、かつほぼ倍の価格帯の機種ということもあり、かなり余裕のある再現になる。中低音の豊かさに加え、低域の沈み込みなど様々な部分が質が向上し、物量の差が音に表れていることを実感できた。