このページの本文へ

核融合プラズマの燃料供給で現れる「揺らぎ」、京大などが初観測

2022年10月19日 18時20分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

京都大学と核融合科学研究所などの共同研究チームは、磁場閉じ込め核融合プラズマへの燃料供給ペレット周辺に形成される「揺らぎ」を発見した。揺らぎの大きさは背景密度の最大15%と見積もられ、これはプラズマ中に存在するプラズマの勾配によって引き起こされる揺らぎの強度より大幅に大きい。ペレットにより誘発された、これまで認識されていなかった新しいタイプの揺らぎであると考えられるという。

京都大学と核融合科学研究所などの共同研究チームは、磁場閉じ込め核融合プラズマへの燃料供給ペレット周辺に形成される「揺らぎ」を発見した。揺らぎの大きさは背景密度の最大15%と見積もられ、これはプラズマ中に存在するプラズマの勾配によって引き起こされる揺らぎの強度より大幅に大きい。ペレットにより誘発された、これまで認識されていなかった新しいタイプの揺らぎであると考えられるという。 核融合炉では、太陽の中心温度を超える1億度超の超高温プラズマ中心部に、燃料供給のための水素の氷(ペレット)を弾丸のように打ち込む必要がある。研究チームは、京都大学のヘリオトロンJ装置で生成した1000万度を超える高温プラズマに、時速約900キロメールで水素ペレットを打ち込み、プラズマ中でペレットが溶ける様子を10万分の1秒の精度で撮影可能な高速カメラで観測した。 同チームは、揺らぎの構造が背景の磁場(磁力線)に沿って広がるという性質を利用し、背景の磁力線構造、高速カメラ視野の三次元モデル、カメラ画像上のペレットの揺らぎ形状・動きを比較・分析することで、揺らぎの三次元的な挙動を再構成することに成功。ペレットによって誘発された揺らぎは、磁力線に沿った方向にペレットからずれた空間位置に局在し、揺らぎは磁力線を横切って回転していることを明らかにした。 超高温プラズマと水素の氷が共存する極限状況における揺らぎの発見は、将来の核融合炉のペレットによる燃料供給・持続的燃焼の制御手法の確立に役立ちそうだ。 研究論文は、サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)に2022年8月20日付けでオンライン掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ