2022年10月18日から開催される「CEATEC 2022」。大手からスタートアップまで幅広い企業が先端技術や企業向けのソリューションなどを展示しているが、モバイル通信に関する分野で注目されるのが「ローカル5G」の動向である。
超えなくてはいけない壁もあるが
ローカル5Gの動向に注目
携帯電話会社以外の事業者が、エリア限定の5Gネットワークを構築できるローカル5Gは、企業が高速大容量・低遅延といった5Gネットワークの特徴を自由に活用でき、なおかつ携帯電話会社のネットワークの影響を受けることがないので高いセキュリティーを確保できることから、多くの企業から注目を集めている。今回、CEATECに出展している各社のブースでは、そうしたローカル5Gに関連する展示をいくつか見ることができたので紹介する。
中でも注目されるのは、「CEATEC AWARD 2022」で総務大臣賞を受賞した日本電気(NEC)の「UNIVERGE RV1200」である。これはローカル5G向けの小型基地局で、最大の特徴は従来別々になっていた無線部(RU)と、制御部(CU/DU)を一つにまとめ、Sub 6(4.5GHz帯)のみの対応ながら5G向けの基地局としては非常に小型かつ低消費電力、そして98万円という低価格を実現していることだ。
実はローカル5Gの普及を阻む大きな課題の1つとして、コストの問題が挙げられている。ローカル5Gを導入する企業は携帯電話会社より規模が小さく、携帯電話会社向けの高額な基地局設備は導入できないことから、普及に向けては安価で導入しやすい基地局が必要とされていたのだ。UNIVERGE RV1200が総務大臣賞を受賞したのも、低価格かつ小型で導入しやすく、企業のデジタル化に欠かせないローカル5Gの普及促進に期待がかけられているからこそだという。
もう1つ、ローカル5Gの普及に向けた課題となっているのが、ローカル5Gに対応した端末の数が少ないこと。携帯電話会社向けの5G端末とは違った周波数への対応などが求められることから、通常の5G対応スマートフォンは利用できず、専用の端末が必要とされているのだ。
そうしたことからNECでも、ローカル5Gに対応したノートパソコンや、産業向けにさまざまなインターフェースを備えたゲートウェイ端末などを用意しているとのこと。だが他にもローカル5G対応端末の開発に取り組む企業があり、それが電子部品や車載機器などで知られるアルプスアルパインである。
アルプスアルパインは車載向けの5G NR対応通信モジュール「UMNZ1シリーズ」を開発・提供しているのだが、そのノウハウを生かしてローカル5G向け端末も開発し、ローカル5G事業への参入を打ち出している。アルプスアルパインは車載向け機器に強みを持つだけに、通常のスマートフォンよりも過酷な現場で利用されることが想定されているローカル5Gに、同社が培った高い信頼性を活かしたデバイスとなっていることがポイントとなるようだ。
一方で、ローカル5G特有の問題解決に取り組んでるのが東芝だ。同社のブースで展示しているのはローカル5G向けの分散型アンテナシステム「DAS」である。
これは主として建物に向けたソリューションであり、基地局からの電波を光ケーブルで他の場所へと分配することで、壁で遮られた場所、例えばビルの複数階などにもローカル5Gの電波を届けられるようにするもの。それぞれの場所に基地局を設置するよりも、コストを大幅に抑えながら多くの場所に電波を届けてローカル5Gを活用できる点がメリットになるとのことだ。
ローカル5Gの本格的な活用に向けてはまだ課題が多く、実証実験より先の具体的なソリューションがまだほとんど出てきていないというのも正直なところ。だがこうしたさまざまな企業の努力によって、今後本格的な利活用が進むことに期待したい。