プロのパーソナルトレーナーをオンライン化でもっと身近に

ローミング事業者がフィットネス? 健康にプロモートする「FitYou」の挑戦

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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「FitYou(フィットユー)」は、日本ネットワークイネイブラー(JPNE)の新規事業として立ち上げられたオンラインフィットネスサービス。プロのトレーナーのサポートをオンライン経由で受けながら、運動習慣を根付かせたいという 。サービスの概要やコンセプト、ローミング事業者がフィットネス事業を手がける背景などをJPNEの辻中伸生氏、高尾祥子氏、そしてサービスを監修する朝倉全紀氏に聞いた。

FitYouのサービスサイト

運動習慣を付けるためのパーソナルトレーニングをオンラインで

 「すべての働く人に一生続く運動習慣を」を謳うFitYouは、法人向けのオンラインフィットネスサービスだ。プロのパーソナルトレーナーが一人ひとりに適した運動メニューを提案し、ユーザーはいつでもどこでも相談できる。すべてオンラインで完結するため、テレワーク環境下での福利厚生サービスとしてもマッチする。

 コロナ禍や健康経営ブームもあって、従業員の健康管理や改善に向けた福利厚生サービスを提供する企業も増えている。しかし、実際はなかなか利用されず、定着しないというのも悩みだ。サービスを運営するJPNEの高尾祥子氏は、「一人で運動を続けるのは大変だし、運動をしたことがないとネガティブなイメージを持つ方も多いんです」と指摘する。

JPNE 高尾祥子氏

 その点、FitYouは「運動の楽しさとカラダへの気づきを提供することで、運動習慣の定着を支援するオンラインフィットネスサービスを目指す」(高尾氏)という。パーソナルトレーニングをオンライン化することで、トレーナーの質を保ちながら、パーソナライズと低廉な価格を実現。現在のβ版サービスでは、従業員一人あたり月額800円で利用できる。

 具体的には、最初にプロフィールや運用状況、トレーニングの目標、環境、希望するトレーニングのレベルなどをヒアリングするとパーソナルトレーナーが最適なメニューを生成する。ユーザーは必要に応じてチャットや動画を使ってトレーナーに相談することも可能だ。基本的には自宅でのトレーニングになるが、オンラインでのグループセッションも用意されているので、複数ユーザーでいっしょに運動する楽しみも得られるという。

FitYouの画面イメージ(JPNE資料より抜粋)

言葉で動作を導くことができるオンラインに強いトレーナーたち

 FitYouと他のサービスとの最大の差別化要因になっているのは、サービスを支えるパーソナルトレーナーの存在だ。JPNEの辻中伸生氏は、「パーソナルトレーナーときちんと組めているというのはFitYouの大きな差別化要素。世の中にオンライントレーニングのサービスや動画は数あれど、自分にあったものを探すのは難しいし、結局は続かない。でも、パーソナルトレーナーの指導により、適切なトレーニングを適量やれば、きちんと効果を充分得られるんです」と語る。

JPNE 辻中伸生氏

 トレーニングを監修しているSchool of Movementsはアスリートのサポートとトレーナーの育成を行なう一般社団法人。代表を務める朝倉全紀氏自身もプロ野球チームや日本アメリカンフットボール協会などのトレーニング指導に関わっているほか、協力に手を挙げてくれたコーチもプロスポーツのトレーニングを担当しているレベルの高いトレーナーが多いという。

 朝倉氏からすると、YouTubeコンテンツの課題は、正しくトレーニングできず、続かないか、怪我してしまうこと。コロナ禍のフィットネス人口は結局あまり増えておらず、自己流でやっている人がほとんどだという。「残念ながら、われわれの印象では運動を始めたい人って、自分の信じたい情報を信じ、自分がよいと思った情報に従ってしまう。目的に対して適切なトレーニングにたどり着かないんです」と朝倉氏は指摘する。そして、これこそパーソナルトレーナーにアドバイスをもらう最大の意義だという。

School of movements 朝倉全紀氏

 その点、健康をプロモートするFitYouでは「安全に、効率的に」を意識しているという。たとえば、FitYouのヒアリングでは「運動しない」という選択肢も用意されている。「腰痛や肩こりを治したい」という目的の場合、運動より、医者に行った方がよいケースもあるからだ。朝倉氏は、「「安全に、効率的に」を実現するために、必要なことを説明し、理解してもらいますし、うまくいかなかったら、その理由を掘り下げます。トレーナーの役割は問題解決を行ない、モチベーションをもってトレーニングに励んでもらうことです」とのことだ。

 トレーナーがオンライントレーニングに長けているというのも1つの特徴だ。FitYouに関わるようになったのは、プロアスリートや社会人に向けたトレーニングのオンライン化が進み、School of Movementsでも知見を得られるようになったタイミングだった。「最初、リアルでやっていたことをそのままオンラインでやろうとしていたのですが、うまく行かない。リアルと、オンライン。同じ目的のトレーニングを、まったく違う手法でやらなければならないことに気がついたんです」と朝倉氏は振り返る。

 具体的には、オンラインの場合、カラダを触って動きを理解してもらうことが難しいので、相手とのコミュニケーションや言葉での指導がうまくなったという。「リアルで培ってきた人間としての温かみに加え、オンライントレーニングの経験を経て、言葉で動作を導くのが得意になりました」(朝倉氏)とのことで、トレーナーの質やプロフェッショナル意識の高さというレベルでも期待できるサービスとなっている。

個人事業前提のトレーナーにプラットフォームを提供したい

 IPv6ローミングを手がけるJPNEにとってみれば、新規事業といってもオンライントレーニングは本丸でも、周辺領域でもない、ある意味「飛び地」である。これについて新規事業の立ち上げを担当していた辻中氏に聞くと、「われわれのサービスは自宅でインターネットを使ってもらうサービスなので、基本的には家で利用でき、大きなトラフィックが発生するという点で動画サービスを検討していました」と振り返る。

 新規事業を検討する中、2020年1月に札幌で開催されていたJANOGのイベントで興味を持ったのは、インターネットインフラについて執筆活動を続けるあきみちさんが講演していたトレーニングという題材。そして、そのあきみちさんの紹介で生まれたのが、FitYouを支える朝倉氏との出会い。さらに両社でユーザーとトレーナーそれぞれの課題の解決を目指し検討を進める中で、FitYouの構想が生まれてきたという。「前提条件と言葉が違いすぎて、話が合わないこともありました。それをあきみちさんが通訳してくれた感じでした」(朝倉氏)。

 朝倉氏は、個人事業者の多いトレーナー業界を変革する一助になればと考えている。「お客さまとのやりとりは得意だけど、同じトレーナーとの共同作業は苦手という職人気質の方も多い。でも、業界が一歩先に進むためには、個人商店からショッピングモールにある程度脱却していく必要があります。そのためのお手伝いをJPNEにしてもらっている感覚です」と語る。

 辻中氏も、「トレーナーの方はみなさん個人としてスキルも経験も持っているのですが、組織だった活動になっていないなとは思いました。だから、みなさんが事業を展開するために、われわれが動画配信やコンテンツのプラットフォームを用意できればいいと考えています」と語る。

 トレーニングや運動に関しては、リアルでのフィットネスジムやパーソナルトレーニング、YouTubeの動画などさまざまな選択肢がある。FitYouの場合、リアルのジムに比べて、いつでも、どこでもできるというメリットがある。また、YouTubeやネットコンテンツに比べると、パーソナルトレーナーが目的にあわせて最適なトレーニングを選んでくれるという特徴がある。

FitYouの立ち位置(JPNE資料より抜粋)

 自宅に籠もることが多くなった筆者からしても、今まで無縁だった腰痛が気になるようになり、テレワーク下の健康管理は大きな課題だと感じている。こうした中、運動したい人を正しくアドバイスしてくれるFitYouのコンセプトはとても共感できる。腰痛や肩こり、メンタル不調に悩む人の多いIT業界でまずは実績を上げ、多くのエンジニアを健康に導いて欲しい。

■関連サイト

(提供:日本ネットワークイネイブラー)

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