ラーメンWalker発!「未来を輝かせるラーメンストーリーズ」第27話
ラーメン王国山形の魅力をもっと伝えたい! ラーメンから広がる想いが、山形と全国を繋ぐ架け橋に
2022年10月18日 12時00分更新
ラーメンWalkerがテーマを決めて名店店主とともに新たなラーメンをお届けする企画。2022年9月21日~26日は、山形県新庄市に本店を構える『新旬屋』が初出店。鶏の旨味にこだわった「金の鶏中華」をはじめ、山形のご当地麺を独自に昇華させたラーメンで、数々のラーメン関連の賞を受賞してきた山形を代表する名店だ。テーマは、「山形の魅力をお届け!山形ラーメンの真髄を味わい尽くす」。ラーメンを通して、山形の食材やご当地麺の魅力を関東の皆さんにお伝えしたい! そんな思いで駆けつけてくれた、山形のラーメンリーダー『新旬屋』店主の半田新也さん。これまでのラーメン人生と、今年の関東出店ラストを飾る東所沢で、その意気込みを語る。
何度の逆境にも負けずラーメンを作り続けた山形のラーメンリーダー
山形県の戸沢村という小さな村で生まれ育った半田さん。小学校の作文に「将来の夢は、プロ野球選手とラーメン屋」と書くほど、子供の頃からラーメン好きだった。山形県には、ラーメンの出前文化がある。休日に親族や友達が来たら、ラーメンの出前をとるのが定番だ。農作業をしている田畑にも出前に来てくれるという。そうやって小さな頃からラーメンの記憶が刻まれてきた。
高校卒業後、宮城県仙台市の学校に進学するが、その後、半田さんは、長男ということもあって地元の戸沢村に戻り、特産品開発や道の駅等の管理会社に就職する。そこで8年9ヶ月、働くうちに戸沢村の特産品そば粉を使った韓国冷麺の開発に携わる。その時、「麺も自分で作れないかと、製麺について探っていたら、香川にある大和製作所の藤井社長に会うことができたんです」と半田さん。いつか独立してラーメン屋を開業しようという夢が、いきなり急接近した。
すぐに会社を辞めて香川の大和製作所で、藤井社長にラーメンのイロハを学び始めた。「社長に魅かれたのも、ラーメン屋への道に踏み込んだきっかけです」。
ラーメン研修が終わるとすぐに製麺機を購入し、自身で製麺から醤油ダレから、自作のラーメンを作るようになる。「毎日うちの家族はラーメンばっかり食わされて(笑)。そろそろいけそうかなって頃に、ラーメン屋をやろうとなったんです」。
2006年6月、『新旬屋 麺』という屋号で開業。半田さんも大好きな新庄のソウルフードとりもつラーメンと、その時に新庄になかった豚骨ラーメンの2本立てで走り出した。
経験もほぼないところから始めたが、うまく軌道に乗り、翌年にはラーメンバーも開業する。それが大当たりして昼のラーメン店と夜のラーメンバーを、スタッフも増やしながら、半田さんも睡眠時間を削って2つの店を回転させた。さらに翌年の2008年、大きな店舗に移転してラーメン店とラーメンバーを融合する。飲み屋街の近くで深夜営業まで営む店は、通し営業のため時間によって作り手は変わり、周辺の治安の悪さもあって評判が落ちてしまい、売上を半分ぐらい落とした。ちょうど兼業で始めたシュミレーションゴルフの会社のほうに気持ちが傾き、ラーメンを疎かにしていた。
2011年の東日本大震災で、ラーメン店も兼業の会社もすべて営業できない状況になり、今までで一番のどん底の時期となった。「もう一回原点に、ラーメン屋に戻る」と、半田さんは兼業をやめてラーメンに打ち込んだ。
そして、2018年に現在の場所に本店を移転リニューアル、2019年11月に別ブランドのラーメン店をオープン。東京ラーメンショーの最優秀賞を受賞するなど、順調に立ち直ってきた矢先の2020年、今度はコロナに見舞われてしまう。
しかし、半田さんはめげなかった。コロナ休業中に、本店を全部セルフサービスに改装し、冷凍ラーメンの工場を作った。いろんなラーメンイベントに出店していたつながりで、冷凍ラーメンの注文やラーメンの自動販売機の話がたくさん舞い込んだのだ。「おかげさまで、県外のラーメン屋さんに助けてもらったり、色んなところから声をかけてもらって、今は売上も戻ってきました」(半田さん)。
山形の食材やご当地麺の魅力を、過去最高の限定数で出し尽くした6日間
2度の苦難を乗り越え、満を持してラーメンWalkerキッチン登場の『新旬屋』。今回のテーマで、「まずは山形の色を出したいと考えて、その中に新旬屋の色も出しながら、今回のメニュー構成にしました」という半田さん。看板メニュー「金の鶏中華」は、山形のソウルフードに新旬屋独自のスタイルを取り入れた一杯。山形のさくらんぼ鶏だけでとったスープに、さくらんぼ鶏を燻製チャーシューとしてのせた特別メニューだ。麺にも山形の小麦ゆきちからを使って、多加水もちもち麺に仕上げた。
定番メニューの他に6日間の出店中、2日毎に限定メニューも用意した。まず第1弾は「冷たい鶏中華」。山形で生まれたラーメン屋が繰り出す「冷たいラーメン」と蕎麦屋が繰り出す「冷たい肉中華」、この2大涼麺を融合した新旬屋オリジナル。麺は春ゆたか&春よ恋を使用した、山形の人気店『鶏冠』の社長とのコラボ麺だ。
第2弾の「山形煮干しシンちゃんラーメン」は、山形で有名な「ケンちゃんラーメン」リスペクト。新旬屋本店朝の部『煮干中華蕎麦あらた』の人気メニュー。出来上がりに3日かかるため、今回キッチンでも早めに仕込み始めた。6種類の煮干しをじっくり炊いたスープにたっぷりの背脂、合わせる麺は全粒粉入り極太縮れ麺。二郎系の夜の部『極中華蕎麦ひろた』の麺と、朝夜ミックスの一杯だ。山形の王道煮干し&極太縮れ麺を紹介する意味でも、山形色全開のセレクト。
最後の2日間は、「雲海」。山形ご当地麺の一つ酒田ラーメンはワンタンも有名。極薄のふわふわワンタンを雲海のイメージで仕上げた一杯。熱々スープでも伸びにくい麺は、地元老舗130年の歴史ある酒井製麺との共同開発だ。「乾麺一筋35年の職人さんに、俺の麺を作ってもらえませんかとお願いして、何度も試作を重ねて作っていただいた全粒粉の乾麺です」(半田さん)。
さくらんぼ鶏や全粒粉乾麺から広がる想いが、山形と全国を繋ぐ架け橋に
これだけバラエティ豊かなメニューを提供してくれた『新旬屋』。その裏側は、「めっちゃめちゃ大変! でも、せっかくいい機会だったので、できるだけ山形の業者や食材を使いたいと思って。スープも全種類炊いて、海老ワンタンも食材を運んで、ここで全部仕込んでます。冷蔵庫も冷凍庫もパンパンでした(笑)」と半田さん。
さくらんぼ鶏は、ラーメンWalkerキッチンで燻製にすることで、出来立てのチャーシューに。「さくらんぼ鶏の燻製チャーシューがついてるのは、ここだけですね」と関東初、お店でも味わえない特別提供だ。さくらんぼ鶏をスープにもチャーシューにも使い、山形のブランド鶏の魅力を余すところなく出し切った。
最終日の限定「雲海」に使用した全粒粉乾麺も、関東初披露だ。「全粒粉乾麺は、ちょうど8月にできたばかり! 店でも出店の前々日に山形の『極中華蕎麦ひろた』で提供開始したところなんで、こことほぼ同時くらいですよ」。
コロナ禍の中で動いて、苦労して作り上げた全粒粉乾麺を使わせてほしいと、山形県庁からも輸出食品プロジェクトの話があったり、いま各方面から注目されている。信州のカリスマ塚田店主から「俺もいま乾麺作ってるところなんだ」と話を伺い、乾麺の可能性を感じたという。
大阪の『JUNKSTORY』井川店主とも深い交流があったという半田さん。ちょうど「半田さん、お土産ラーメンを作りたいんだ」と相談を受けていた。「井川くんになら、うちの乾麺を卸すよって話をしてたんですよね。その数日後に亡くなってしまって……。すごく思い入れのある乾麺になりました」。
いくつもの苦難も、悲しみも乗り越えてきた半田さん。いろんな思いがこもった乾麺がちょうどできたところで、「ああ、夢は広がるなあ」と、一言ずつゆっくりと語った。
「山形はラーメン王国と言われていますが、まだまだ知られていない。山形には美味しい食材が、店がたくさんあるってことを、今回の出店で自分なりに伝えられたかなって。今度は関東のいいものを山形に持ち帰って、山形と関東、全国を繋ぐ架け橋になりたいと思ってます」
連日、お客様からは感動の言葉が届いた。山形のラーメンと、山形を代表する半田店主の想いは、お客様にしっかりと伝わった。
山形鶏中華 新旬屋 本店
山形県新庄市沖の町3-20
10:30~14:30
火曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/shinsyunya)をご確認ください。
ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/