東京工業大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校などの共同研究チームは、磁気光学効果を利用して極低温環境で動作する光変調器を開発し、高速データ通信に成功した。量子コンピューターや超伝導マイクロプロセッサーの活用に欠かせない極低温から室温への高速信号伝送を実現する、重要な基幹技術の一つとなる可能性がある。
東京工業大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校などの共同研究チームは、磁気光学効果を利用して極低温環境で動作する光変調器を開発し、高速データ通信に成功した。量子コンピューターや超伝導マイクロプロセッサーの活用に欠かせない極低温から室温への高速信号伝送を実現する、重要な基幹技術の一つとなる可能性がある。 光変調器は、コンピューターなどから送られる電気信号を、大容量・高速データ伝送に適した光通信で送るための光信号に変換するデバイスである。研究チームが今回開発した光変調器は、電気信号が発生させた誘導磁界が、磁気光学ガーネットの光学特性を変化させる磁気光学効果を利用している。電気信号が金属コイルに流れることで発生した磁界が、光導波路上の磁気光学ガーネットに作用して光の屈折率に変化をもたらし、入力した光の強さが変化して光信号が生成される仕組みだ。 同チームの開発した光変調器は、電圧駆動型で高い抵抗値を持つ従来の光変調器とは異なり、電流で駆動し、抵抗値が低いため、超伝導回路との接続性がよく、極低温環境においても高効率で動作する。光通信でよく用いられる波長1550ナノメートルの光で動作し、シリコンフォトニクスを使った光集積回路に搭載されており、汎用性にも優れた構造となっているという。同チームの測定では2ギガビット毎秒(Gbit/s)の信号伝送に成功した。 研究成果は、科学雑誌ネイチャーエレクトロニクス(Nature Electronics)に2022年9月5日付でオンライン掲載された。(中條)