理化学研究所と東京大学などの国際共同研究チームは、「スキルミオン」を用いた人工知能(AI)素子を作製し、画像認識に成功した。スキルミオンは、固体中の電子スピンによって形成される渦状の磁気構造体。低消費電力で操作が可能であり、ナノスケール(1ナノメートルは10億分の1メートル)であることから、低消費電力かつ高集積・高性能なAI素子の実現が期待されている。
理化学研究所と東京大学などの国際共同研究チームは、「スキルミオン」を用いた人工知能(AI)素子を作製し、画像認識に成功した。スキルミオンは、固体中の電子スピンによって形成される渦状の磁気構造体。低消費電力で操作が可能であり、ナノスケール(1ナノメートルは10億分の1メートル)であることから、低消費電力かつ高集積・高性能なAI素子の実現が期待されている。 研究チームは今回、磁場によって誘起されるスキルミオンの変形が、AI素子の一種である物理リザバー素子(ニューラルネットの計算を物理系で代用する素子)に要求される性質を満たしていることを発見。実際に、白金(Pt)/コバルト(Co)/イリジウム(Ir)積層薄膜を加工してスキルミオンAI素子を作製し、交流磁場をかけたときのスキルミオンの状態と磁化の値を調べることで、物理リザバー素子に応用可能であることを示した。 次に、作製したスキルミオンAI素子を用いて、AI素子の性能評価手法の一つである波形認識問題が実行可能であることを確認し、手書き数字識別問題を実行した。合計1万3000個の手書き数字のデータを同素子に入力して学習させた後、学習データに含まれない0から9までの手書数字データを識別できるかを調べたところ、95%近い認識率を得た。さらに、スキルミオンの数が増えると認識率が向上することも明らかにした。 研究論文は、科学雑誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)オンライン版に、2022年9月30日付けで掲載された。(中條)