この記事は、内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」に掲載されている記事の転載です。
警察庁のオープンデータから交通事故情報を分析
近年は減少傾向にあるものの、国内では年間30万件以上の交通事故が発生している。その情報を地図にマッピングして閲覧できるサービスが、朝日新聞社が提供する「みえない交差点」だ。パソコンではポイントにカーソルを合わせると、スマホやタブレットではポイントをタップすると、事故の詳細情報が表示される。
「私が所属する部署はデジタル機動報道部というのですが、ミッションのひとつとしてデータジャーナリズムがあります。膨大なデータに基づいた報道ですね。何のデータがあるのかをリサーチしている中で、かなり詳細な交通事故のデータが公開されていたので、まずはこれを分析して何か新しいニュースが見つかるのではないかというのが、みえない交差点のきっかけです」と、朝日新聞社デジタル機動報道部記者の山崎啓介氏は語る。
警察庁は2019年以降の交通事故統計情報をオープンデータとして公開している。GPS情報はもちろん、当事者の属性や損傷状況、発生時刻などその項目は多岐にわたる。
山崎氏は「皆さんやはり、自分の家の近くを調べてみて『ああ、やっぱりここは危険なんだ』と思われるようです。中には、自分が当事者の事故を確認された方も……。旅行先で危険な場所を調べている方もいらっしゃいますね」と言う。
みえない交差点はフィルター機能を備えており、事故内容(死亡/負傷)や信号の有無、発生時間帯、当事者の年齢、移動手段(車や二輪車、歩行者など)によってポイントを絞れる。これによって、若者や高齢者といった属性、時間帯などで危険な場所をあらためて確認できる。
「こういう場所で事故が起こるんだな、とお子さんと親御さんで一緒に見て気づきを得てもらえたら個人的には嬉しいですね。あと、運転する側もこういうところは事故が起こりやすいので、一層の注意を払おうといった社会啓発みたいな感じになれば」とは山崎氏。
新聞社ならではのデータジャーナリズム
みえない交差点には、朝日新聞社が独自に調査した赤いポイントもマッピングされている。これは、警察庁のデータとは別に、同社が危険な場所として判断した場所だ。
「赤いポイントって、必ずしも国道や県道のような大きな場所ではなく、生活道路のような小さな交差点も多いんですね。皆さんがそれほど危険だとは思わないような場所を取り上げています」と山崎氏は説明する。
このデータジャーナリズムが発揮されているのが、みえない交差点の「分析編」だ。ここでは約68万件の交通事故情報を分析して、、「人身事故の6割が信号機のない交差点」「大型交差点よりも中小規模の交差点のほうが注意が必要」「地方のほうが発生件数は少ないものの、死亡率が高い」など、さまざまな分析がなされている。その分析がすべてということはないが、読んでみると思いがけない気づきがあるだろう。
実際、みえない交差点を受けて全国の警察による事故多発交差点の抽出手法が変わり、小さな交差点も調査対象とするようになったという。
内閣官房は地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」を今年から開催しており(応募はすでに終了)、2022年12月6日〜7日に開催される「G空間EXPO2022」にて発表・表彰する予定だ。
朝日新聞社デジタル企画室メディアラボチーム担当次長の安藤翔一氏は、「どういうデータがどうあって、何か我々新聞社の能力を活かしたサービスを提供できないかということは常々考えています。2〜3年先に何か新しいビジネスを作るということがミッションです。みえない交差点を提供していることもあり、弊社も協力協賛企業としてイチBizアワードに参加していますが、オープンデータや制度などに詳しい方とつながりたいですね」とアワードに期待を寄せている。
(提供:朝日新聞社)