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ASCII Power Review 第180回

撮像素子もエンジンも操作性もAPS-C最高クラスだ

富士フイルム「X-H2S」実機レビュー = 最新フラッグシップ・ミラーレスカメラの実力とは!?

2022年07月12日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 富士フイルムから登場したAPS-Cミラーレス機のハイエンドモデルが「X-H2S」だ。製品名からして従来の「X-H1」の後継機だと思ったが、格段に進化したAFや高速連写はワンランク上の製品といえ、スペックは現行のAPS-Cミラーレス機のなかでも最上位だ(価格も含め……)。

 今回は同時に発売された「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」も試用できた。35mm換算229-914mmと、使いこなすのが難しそうな超望遠ズームだが、この機会にチャレンジしてみた。

量販店価格はボディーのみ34万6500円。写真で装着しているレンズは「XF16-80mmF4 R OIS WR」(10万3950円)。

「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」は最大径99mm(フィルター径は82mm)、全長314.5mmとサイズは巨大だが、重量は1605gと超望遠ズームにしては軽め。量販店価格は29万400円。

初の被写体検出機能、粘る力は十分だ

 AFは流行の被写体検出機能を富士フイルムでは初めて搭載した。検出する被写体は6項目(動物・鳥・車・バイク&自転車・飛行機・電車)に細分化されている。今回は電車と飛行機、鳥で試した。

検出する被写体を設定する画面。なお人物の顔/瞳検出は別項目になっていて被写体検出をONにすると顔/瞳検出は自動的にOFF(逆も同じ)になる。

 電車では運転席を検出するらしく、そのため真横からや運転席を極端にアップにすると検出はしなかった。

車両の全体ではなく運転席のガラス部分を検出するようだ。焦点距離600mm・F8・1/800秒・ISO1000。(以下特記なければ「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」で撮影)

この写真くらい運転席をアップにすると検出しなくなってくる。焦点距離600mm・F8・1/1000秒・ISO1000。

 飛行機はコックピットに加えて、機体の形状も検出しているようで、遠距離や離陸後の後姿もしっかり認識してくれた。

飛行機は真横から見ても、ピントはコックピット部分を検出してくれる。焦点距離214mm・F6.4・1/2000秒・ISO320。

ほぼ前面が見えない後姿になっても、まだコックピットを検出していた。焦点距離305.2mm・F8・1/2000秒・ISO320・1.25×クロップ。

複数の被写体の場合は、フォーカスエリアや構図を変更することで検出対象を切り換えられる。焦点距離238mm・F6.4・1/2000秒・ISO320。

 

 鳥は離れているときは全体の形状を、アップにすると頭部や瞳まで検出してくれる。ただ逆光などで被写体が暗かったり、木の枝に止まっているなど複雑な画面では検出に迷うこともあった。

このシーンでは鳥の顔が陰になっていたせいか、頭部と瞳で検出が迷っていた。焦点距離221mm・F8・1/2000秒・ISO1250。

木の葉など複雑な形状のせいかピントが合いにくかったが、一度検出さえしてしまえば後は粘り強くピントを合わせ続けてくれる。焦点距離600mm・F8・1/1600秒・ISO2500。

検出した状態なら手前に少し障害物が写り込んでもピントは外れにくくなる。焦点距離294mm・F8・1/2000秒・ISO800 。

 被写体検出はフォーカスエリア内の被写体を検出し追随する。AF-Sでは「ワイドエリア」に設定しておけば画面全体で検出してくれるが、AF-Cでは何故か「ワイドエリア」に設定することができないので、まずフォーカスエリアを任意の位置に決めて、被写体を検出したのち構図を決めるといった工夫が必要になる。このように少し操作にクセはあるが、一度食いついた後の粘りは十分満足できるので、コツさえつかめば上手く使いこなせるだろう。

積層型素子で速度も向上
ボディは大きめだがフィット感は高い

 撮像素子には高速処理が可能な積層型を採用し、動体撮影でも像の歪みが少ない電子シャッターでAF/AE追従秒40コマの高速連写が可能だ。鳥など動きが速く不規則な被写体では連写途中でピントが怪しいこともあったが、被写体検出のおかげもあって高確率で合焦してくれた。

電子シャッターでの連写は最高秒40コマまで設定ができる。なおメカシャッターでの最高速は秒15コマになる。

電子シャッターの連写で通り過ぎる車両を撮影してみたが、歪みはそれほど気にならなかった。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離22mm・F4・1/2000秒・ISO1250。

飛び回る鳥を秒40コマ連写で撮影したなかの一枚。拡大してみると怖いくらいピントが合っている。焦点距離600mm・F8・1/1600秒・ISO2500。

 連続撮影枚数もUHS-1のSDカードで試したところ、秒40コマではJPEGで約200枚近く(ロスレス圧縮RAW+JPEGでは約150枚)、速度を秒30コマに下げると更に増えJPEGで1000枚超の連写ができた。このことからバッファメモリーを大量に搭載しているのがわかる。

 さらにシャッターボタンを押す直前の1秒前から記録できる「プリ撮影」や、画像をクロップし1.25倍の望遠撮影ができる機能も搭載している。

プリ連写の作例その1、飛び立つ鳩。焦点距離600mm・F8・1/1600秒・ISO2500。

プリ連写の作例その2、挙手するスズメ。焦点距離221mm・F8・1/2000秒・ISO1000。

プリ連写作例その3、飛び立つトンボ。ちなみにトンボも被写体検出の鳥で認識していた。焦点距離391mm・F8・1/3200秒・ISO1600。

電子シャッターでの連写撮影時には1.25倍のクロップが選択でき、解像度は約1600万画素(4992×3328ドット)になる。

遠方に見える滑走路(距離にして約3Km)から離陸する飛行機を、1.25倍クロップ(35mm換算1125mm)で撮影。焦点距離600mm・F8・1/2000秒・ISO400。

 電子シャッターでもシャッタースピード1/125秒、秒15コマ連写まではストロボが同調する。メカシャッターの同調速度は1/250秒になる。

 画質面を見てみると、撮像素子は富士フイルムではおなじみの独自のカラーフィルター配列でローパスレスでもモアレや偽色が出にくい「X-Trans CMOS」を採用。画素数は2616万画素になる。実際に撮影した写真を見てみると、相変わらず細部が精細に再現され、画素数以上の解像力が感じられる。

拡大して見ると屋根の瓦の質感や木の葉の細部などから優れた解像感が伝わってくる。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離80mm・F11・1/200秒・ISO160。

日暮れ時の街中の風景。色乗りの良い発色が印象的。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離34 mm・F5.6・1/140秒・ISO160。

16-80mmF4の望遠側で撮影。開放F4と特段大口径ではないが、十分ボケが楽しめる。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離80 mm・F4・1/300秒・ISO160。

16-80mmF4の望遠側の最短撮影距離で撮影。撮影倍率0.25倍なので結構アップで撮れる。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離80 mm・F4 ・1/150秒・ISO160。

見上げたら月が見えたので何気なく撮ってみたが、よく見ると月の表面が精細に写っていて驚いた。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離80 mm・F4 ・1/170秒・ISO160。

 高感度は常用ISO12800、拡張でISO51200。APS-C機のなかでは常用感度は控えめにだが、拡張感度のISO25600程度までは十分実用的なので、ライバル機と比べても遜色のない画質である。

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO800・ISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離16mm・F5.6・秒・ノイズ処理標準。

常用感度最高のISO12800で撮影。APS-C機としては標準的な高感度画質と言える。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離34 mm・F4・1/25秒・ISO12800・ノイズ処理標準。

拡張感度のISO25600で撮影。細部の解像感低下はあるが、十分常用できる画質だ。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離16mm・F5.6・1/35秒・ISO25600・ノイズ処理標準。

拡張感度のISO51200で撮影。さすがに画質劣化は目立つが、小さいサイズでの使用なら許容できる。使用レンズ「XF16-80mmF4 R OIS WR」・焦点距離16mm・F5.6・1/20秒・ISO12800・ノイズ処理標準。

 今回AFや連写を試した撮影では、ほとんど「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」を使用した。サイズの割に軽く軽快に扱え、スムーズで素早く動作するAFや、拡大してもシャープ感のある描写、超望遠撮影をサポートする強力な手ブレ補正など鳥や飛行機などはもちろん、ネイチャーフォトにも活躍してくれそうだ。

蓮の花のアップを撮影。35mm換算914mmの超望遠なのにシャッタースピード1/90秒でもブレてはいない。・焦点距離600mm・F8・1/90秒・ISO320。

 ボディー周りを見ていくと、数値上では前モデルより微妙に小柄になっているが、それでもフルサイズ機並のサイズはある。そのかわり手にしたときに伝わる剛性や質感の良さはハイエンドモデルならではと思わせてくれる。グリップは深さがあり手に馴染む一般的な形状でホールド感も良好だ。

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