自分が被害に遭わなくても、防犯カメラの必要性を感じた
先日、警察が「近くで事件があり、捜査をしていますが、ご自宅の防犯カメラの映像を拝見できますでしょうか」ということで、我が家を訪ねてこられました。
おそらく、我が家の玄関にある大手警備会社のステッカーに気づき、「ここなら高解像度の防犯カメラがあるのでは」とチャイムを押したのだと思います。
しかし、我が家のドアカメラは20年前のもの。記録される画像もコマ送りの荒い画質(例えるなら、ガラケーの画質くらい)なので、参考になるかどうか……。
念のために相手の警察手帳を確認したうえで、画像をチェックしてみましたが、警察が欲しい情報はカメラに記録されていなかったようです。
自宅や自分自身が犯罪の被害に直接遭わなくても、防犯カメラの重要性を知った出来事でした。
自宅の防犯システムを再構築
マジシャンの家には秘密が多いもの。そして、ここ数年のデジタル機器の進歩はめざましいのはご存知の通りです。というわけで、自宅のセキュリティを再構築することにしました。
我が家の防犯の現状は以下の通りです。
●大手警備会社と契約中
●2ヵ所に20年前のパナソニック製防犯カメラ
●記録画像はコマ送り、画質はガラケーくらい。おそらく320×240(およそ7万画素)
これを以下のように再構築してみることにします。
○大手警備会社と契約は継続
○記録は静止画ではなく動画記録
○300万画素程度のカメラを4台設置
○2Kモニターで一元管理
○24時間の映像と音声記録
というわけで、ショッピングサイトなどで、カメラをはじめとした機器を選んでみました。防犯カメラを設置する場合、電源や映像ケーブルの取り回しがハードルになりがちです。とくに映像ケーブルは、映像を見るためのモニターや、記録するHDDなどまでつなぐ必要があります。
そんな理由から無線送信タイプのカメラが欲しいのですが、これには意外な落とし穴が……。
防犯カメラの映像が世界中に漏れる理由
しばらく前に、世界中の防犯カメラの映像を見られるサイトが話題になりました。現在(2022年6月)も、1万台以上の映像が流出中だといいます。
こんな映像が漏洩する原因の一つとして、カメラ設置時にユーザー名やパスワードが初期設定(ユーザー名が「admin」、パスワードが空欄や「0000」など)のままにしていることが挙げられます。
たとえば、2017年頃、ネットワークカメラや家庭用ルーターといった家庭内のIoTデバイスをターゲットとするマルウェア、「Mirai」が猛威をふるったことがあります。
このマルウェアは、ターゲットとなるデバイスに対し、出荷時に共通のユーザーネームとパスワードのテーブルを使ってアクセスを試みるという特徴を持っていました。初期設定のまま利用されている、セキュリティ意識の高くないIoTデバイスを狙っていたわけです。
初期設定のままにしておくことは、ITリテラシーがある人にはありえないかもしれません。しかし、「買ったらすぐに設置できる」という製品のセールスポイントに惹かれる消費者には盲点なのでしょう。
カメラのメーカーが大手メーカーであっても、聞いたことのないブランドであっても、パスワードを初期設定のままにしていれば、映像が漏洩する可能性は高くなってしまいます。
もちろん、IDやパスワードを再設定すれば、建前上は外部からはアクセスできないはず。しかし、製品の脆弱性やバックドア、アップデート頻度などを想像すると、カメラをインターネット接続で利用することのリスクはなくなりません。
そんな理由から、無線送信タイプのカメラを利用しつつ、「インターネットに接続しなくてもプライベートで稼働できる」ことをシステム要件に加えることにしました。
価格と記録容量のバランスで製品をチョイスしていく
海外製品を含めると、星の数ほどある防犯カメラ。そこから筆者が選んだのは、以下の製品です。
○カメラ PTZ機能付き 無線接続、300万画素(Jennov製)4台
○NVR(ネットワークビデオレコーダー)(Jennov製)1台
○記録用HDD 「WD Purple 2TB」(Western Digital製)
○確認/再生用ディスプレー 13.3インチ IPS 1920×1080(ノーブランド品)
4Kで撮影/記録ができる防犯カメラも登場していますが、筆者があえて300万画素を選んだのは理由があります。システム全体の価格を抑えたいのはもちろんですが、2TBで計算上90日分ほどを保存(それ以降は上書き保存)できる映像サイズだから。
映像の美しさと記録容量のバランスは、仕事やセミナーなどの動画配信でも、いつも悩むところです。今回のアップグレードでは、防犯という目的と、動画ファイルのサイズの兼ね合いから、300万画素が妥当だと判断しました。
「PTZ」はカメラの向きなどを無線でコントロールすることができる機能のこと。「パン(左右、P)」「チルト(上下、T)」「ズーム(Z)」の頭文字でそう呼ばれます。購入したカメラは、左右へは355度、上下は90度までNVRで操作できます。
もちろん、インターネットに接続しなくてもスタンドアローンでシステム構築可能です。レビューでの評判が参考になりました。NVR(ネットワークビデオレコーダー)1台とカメラ4台のセットでAmazonのタイムセールで1万9900円で購入。
ただし、NVRは、自分で外装を開け、準備したHDD固定をするので、接続ケーブルの接続や取り回し、取り付け用のインチネジの用意など、多少の手間が必要です。
記録用のHDDは、24時間、365日稼働させる必要があるため「WD Purple 2TB」を選びました。WD Purpleシリーズは、PCなどに使われるものと違い、常に書き込みをする監視カメラシステム専用に設計されたタイプ。3年間の製品保証がついています。
より大容量にするか悩みましたが、回転数が低回転(5400RPM)で静かで省電力な2TBを選択。アマゾンで9680円で購入しました。
なお、確認/再生用のディスプレーは、残念ながら、到着時に画面が割れており、返品/再購入したため、今回のシステムでは自宅にあったLC-20D50(SHARP製)でテストしました。
およそ3万円でカメラとレコーダーの環境を構築!
テスト結果は良好で、暫定的に仕事部屋に置いたNVRでも、一番遠い玄関からの電波がしっかりと届き映像も満足!
NVR1台、カメラ4台、記録用HDDで、合計2万9580円で設置できました。ディスプレーはとりあえず手持ちの製品を使用したので合計金額に含まれていませんが、映像をチェックするものなので、それほど高精細なものを購入しなくても大丈夫でしょう。
さて、このシステムで秘密の多いマジシャンの家は守れるのでしょうか? 次回は、DIYによる防犯システムの設置と稼働編です。お楽しみに!
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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