サントリースピリッツは缶チューハイの新ブランド「CRAFT-196℃(クラフトイチキューロク)」を3月29日から全国で販売開始しました。定番商品として「CRAFT -196℃〈ひきたつレモン〉」「CRAFT -196℃〈ひきたつみかん〉」「CRAFT -196℃〈ひきたつりんご〉」の3フレーバーが発売中です。
「-196℃」はサントリー独自の“-196℃製法”を用いた缶チューハイのブランド。2005年の発売以来、常に存在感をみせているロングセラーです。
この度、“-196℃製法”による果実の浸漬酒と、こだわりの原料酒を使用し、さらに「つくり手のアイデア」で果実の特長を引き立たせた「CRAFT -196℃(クラフトイチキューロク)」シリーズ3種が発売されました。
新しい缶チューハイに込めた想いを、開発担当者であるサントリースピリッツRTD・LS事業部の吉田祐也さんにお聞きしました。
■「-196℃」新製品は「CRAFT(クラフト)」開発エピソードを取材!
サントリースピリッツ
RTD・LS事業部
吉田祐也さん
●今、缶チューハイが伸びている理由。4つのニーズとは
――「CRAFT -196℃」の開発背景を教えてください。
サントリー 吉田さん:まず全体の話になりますが、コロナ禍で家飲み需要が高まったこともあり、RTD(Ready To Drinkの略。缶チューハイ等のそのまま飲めるお酒)の売上は伸長が続いています。2021年には出荷数が前年の107%に増えています。そんな中、今求められている缶チューハイを目指しました。
――家で飲むお酒全般が伸びているんでしょうかね?
吉田さん:RTD以外の酒類カテゴリーでは、市場がダウンしているものもあります。他の分野のお酒と比較しても、缶チューハイの伸長が目覚ましいです。
――なぜ缶チューハイなのでしょう。
吉田さん:チューハイは、種類が多くて選り好みできるのがカテゴリーとしての強みで、アルコール度数、フレーバーなど自分にとって好きな味を自由に選べますよね。家飲みといっても、それぞれのご家庭で、シチュエーションは様々でしょうから、それに合わせられるのが缶チューハイの良さではないでしょうか。
――そうですね、缶チューハイはほんとたくさん種類ありますもんね。
吉田さん:人気の高まりとともに、缶チューハイに求められるものも変わってきました。今のニーズは大きく4つ。1つはアルコール度数の幅、2つめは味の選択肢、3つめは家飲みなので、食事に合わせたいということ、4つ目は健康志向だったり機能性だったりします。
――4つもあるんですね! ユーザーが増えたからでしょうか?
吉田さん:はい、缶チューハイの市場は大きく成長してきています。新しく缶チューハイを飲むようになった方もいるなかで、今お話しした4つのニーズに加えて自分向けの信頼できる缶チューハイがほしいとか、いい意味で既存の缶チューハイに対する先入観を裏切る商品が飲みたいとか、そんなニーズがあると開発スタート時の調査でわかってきました。
――先入観を裏切る、ですか。
吉田さん:おそらくお客様が今まで以上にもっと家飲みを充実させたいのだな、缶チューハイに期待しているんだな、と。そんな気づきが開発のきっかけになりました。
――既存の製品がマンネリということですか?
吉田さん:既存のものがダメとかじゃなくて、長引くコロナ禍で生活のスタイルも変わっていき、ニーズが多様化してきたところが大きいと思います。
●缶チューハイが好きなのは周りに振り回されがちな「お疲れ世代」
――私自身、外飲みが減ったからこそ、その分家飲みでいいお酒を飲みたい気持ちは高まっています。
吉田さん:そうなんですね。いいお酒を飲みたいという気持ちに応えられるように、「CRAFT -196℃」はいい意味で既存の缶チューハイへの先入観を裏切る、本当においしいものづくりをしようとして開発しました。製品のターゲットを「お疲れ世代」と想定しているのですが。
――お疲れ世代?
吉田さん:缶チューハイが好きでメインのお酒として飲んでいる方って、30~40代が多くて、この方々って会社だと上司もいて、部下や後輩もいて、板挟みになりがち。しかも家庭もある場合が多くて、家に帰っても家族のことを考えている。自分のことが後回しになってしまいがちな世代です。
――思い当たるふしが……! まさに自分がターゲットだと思えてきました。
吉田さん:わたし自身もまさにここに入るのですが(笑)、そういう人たちって、常に人のことを考えていて、優しいんですよね。今は日常生活だけではなくコロナ禍があって、苦労もあってすり減っている。そんな方々は自 分の時間も多くないですし、缶チューハイを飲む時間がとても大事。そこで、物的な価値だけではなく“気持ち”だったりこだわりが詰まった、作り手の顔が見えるような商品をお届けしたいとの思いで開発しました。実はサントリー社内ではよく「For you」って言葉をキーワードにしているんです。
――For you。あなたへ、ですね。
吉田さん:ええ。ひとりひとりのお客様へ、お手紙をお届けするような気持ちで製品をお作りする。これは最近始まったものではなく、以前からずっとあるサントリーのものづくりの精神なんです。
――ステキです!
吉田さん:あまりお客様には直接お伝えしていないのですが……。実はパッケージなど細部にも「For you」の想いがこめられているんですよ。今回、製品名はこだわりが詰まった商品だと伝わるように、「CRAFT(クラフト)」を入れました。また、ポットスチル(蒸溜器)のアイコンを配して職人のこだわりを表現しました。
●開発の時に意識したのは「ものまねタレントさんのような感動を」
――気になる中味について教えてください。
吉田さん:目指したのは、果実のもっている特徴を存分に引き出した「果実以上の果実のおいしさ」。
――果実以上ってどういうことでしょう?
吉田さん:開発時の発想のヒントは、「ものまねタレント」さんです。超一流のものまねタレントさんのものまねって、時には真似る本人以上に本人らしく見えますよね。 強調しすぎて本人がわからないこともなく、ちゃんと誰のものまねをしているかわかるんです。あれは、そもそも本質をしっかりと捉えて、特長をひきたてているから、本人よりも感動させることができると思うんです。
――ものまねタレントとはおもしろい! 確かに強調しながらも本質を捉えらていますね。
吉田さん:そうですよね。でも、その強調した本質的な部分がキャッチーで人の心を惹きつけると考えまして、「CRAFT -196℃」では果実の特徴を「果実以上」に引き立てようと、ものまねタレントさんをヒントにしました。
――へえ! 具体的に製法についてお聞きししたいです。
吉田さん:果実以上の果実感を実現するために「クラフト-196℃」は3つの武器を使用しています。1つはサントリー独自の“-196℃製法”。
――あらためて“-196℃製法”について教えてください。
吉田さん:果実をまるごと使用して、-196℃で瞬間凍結。パウダー状に粉砕して、お酒に浸漬させる。これによって、果実のポテンシャルを最大限に活かす弊社独自技術です。弊社の「-196℃ ストロングゼロ」など「-196℃」ブランドに共通して使用しています。
――他の2つは?
吉田さん:2つ目はサントリーの強みを活かした原料酒づくりです。サントリーの100年以上の歴史がある大阪工場内にあるスピリッツ・リキュール工房は世界でも有数の最新鋭の設備と製造環境を備え、30種類以上の原料酒と50種類以上のスピリッツ・リキュール製品を生産可能です。ここで生み出された原料酒を使用しています。
――サントリーさんというと、明治時代からすでに洋酒を手掛けられて、赤玉ポートワインが原点だと聞いていますが、同時にスピリッツ(蒸溜酒)にもずっと力を注いでいらっしゃる。
吉田さん:創業の早い段階から海外のスピリッツを国内に紹介したり、独自で製品を開発したりスピリッツには力を入れています。クラフトジン「ROKU」、クラフトウオツカ「HAKU」など世界に評価されるスピリッツもあります。
――おいしいんですよね!
吉田さん:今回、「CRAFT -196℃」ではそれぞれ異なる原料酒を使用しています。〈ひきたつレモン〉にはレモンピール蒸溜酒を、〈ひきたつみかん〉にはオレンジピール蒸溜酒を、〈ひきたつりんご〉にはホワイトブランデーを使用しています。
――手が込んでいる。
吉田さん:最後の1つは「アイデア」。
――アイデア?
吉田さん:〈ひきたつレモン〉には花の香りをほのかにそえています。実は、レモンの香り成分には花の成分が含まれていることがわかっていて、花の香りをそえることでレモンの華やかな芳香が広がります。
――花の香りが!
吉田さん:〈ひきたつみかん〉にはハーブの香りを加えることで甘さを引き立て、りんごには複数のフルーツの香りを加えることで果肉感を際立たせるように工夫しています。