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国内デジタルビジネスをブラックボックスから解放する

多様なデータを受け入れ、自由に可視化できる「New Relic One」の進化

2019年10月11日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 2019年10月10日、クラウド型の可視化プラットフォームを提供するNew Relic(ニューレリック)は国内のエンタープライズに向けた事業戦略と可観測性プラットフォーム「New Relic One」の新機能を解説する説明会を開催した。

New Relic CEOの小西真一朗氏

DXを標榜するエンタープライズの導入が加速

 発表会の冒頭、New Relicのビジネス動向を語ったのがNew Relic CEOの小西真一朗氏。小西氏は、日本のデジタルビジネス市場の概況について、モバイル決済やECなどのB2Cサービスの障害が生活に直接影響を与えるようになった一方、B2Bのサービスはまだ過渡期と分析。「現状はコスト削減のデジタル変革が中心で、トップラインを伸ばす攻めのデジタルトランスフォーメーションに至ってない」と語った。

 こうした課題を解決するのが「システムとビジネスすべてを観測する」を謳うNew Relicだ。アプリケーションの性能を監視するAPM(Application Performance Management)ツールとしてスタートしたNew Relicだが、現在ではさまざまなメトリクス、イベント、ログ、トレースを収集する「可観測性プラットフォーム」として成長している。デジタルビジネスの可視化やDevOpsの推進、クラウドの価値の最大化、顧客体験のリアルタイムな追跡などの用途で用いられており、IT管理者からビジネス部門まで幅広く利用されているという。

New Relicの典型的なユースケース

 日本市場においても、日本法人設立前はITやクラウドに明るいSaaSやWebサービス事業者の採用が多かったが、現在はエンタープライズでの採用が加速している。たとえば、建機のIoT化に取り組んでいるコマツは、「スマートコンストラクション」の安定稼働やデジタル顧客体験の捕捉などにNew Relicを採用する。サポート対応における問題解決速度が従来の30倍高速になったほか、開発におけるテスト工数も15%以上削減できると見込んでいる。

 また、同日発表されたのはパイオニアの導入事例だ。業務向けカーナビの運行管理サービスである「ビークルアシスト」でのモニタリングでの採用で、障害対応工数は従来の半分になったという。小西氏は「コードレベルで障害の原因をいち早く把握し、モニタリングにかけていた人材を攻めの開発に振り分けられるようになった」とアピールする。

パイオニアは運行管理サービスである「ビークルアシスト」でのモニタリングに採用

 New Relicが実現したいのは、事業経験が長い日本企業の高い精度の品質や仕様を、そのままデジタルビジネスでも活かせるようにすること。現状、日本のエンタープライズは「ビジネスとシステムを直結した観測できる仕組み」が欠如しており、顧客体験や複雑化したシステムが見えにくくなっている。そんなデジタルビジネスをブラックボックスから解放するのがNew Relicの役割だという。具体的にはIoTの導入が進む製造業、FinTechが進む金融、グローバルを目指すSaaSの3つを重点戦略エリアとして、導入を推進していく戦略だ。

OSSのメトリクスやトレース、ログを直接取り込める

 後半はNew Relic CTO/技術統括 執行役員 松本大樹氏が登壇。デモを踏まえて、最新の可観測性プラットフォーム「New Relic One」のオープン、コネクテッド、プログラマブルと表現された3つの新機能について説明した。

New Relic CTO/技術統括 執行役員 松本大樹氏

 最初の「オープン」は、エージェントを経由せず、多様なデータを取り込むことが可能になった点を指す。具体的には、MicrometerやOpenTelemetry、DropWizard、Prometheus、Istio、ZipkinなどOSSのメトリクスやトレースデータを取り込めるほか、fluentd、logstash、Kubernetes、JSON形式のログもフォワーダー経由で可視化できるようになった。幅広いデータソースをカバーしたことで、ビジネスKPIからカスタムメトリックまで幅広く観測できる“死角のない”プラットフォームになったという。

多様なメトリックとトレースをサポート

 続く「コネクテッド」は取り込まれた膨大なデータを理解する新機能になる。GAになったNew Relic Serverlessでは従来CloudWatch経由でしかとれなかったAWS Lambdaを直接コードレベルまで監視できるようになった。また、Logs in Contextという機能では、障害の発生した箇所から直接ログファイルまでジャンプできる。「New Relic AI」においては、相関分析エンジンによるノイズの除去やレスポンダーやアラートの自動分類、通常と異なる状態を検知するアノマリ検知、人間の動作をフィードバックさせた自動精度改善などが実現する。松本氏は「膨大な教師データを保持しているため、AIの進化が速いのがグローバルSaaSベンダーとしての強み」とアピール。Logs in ContextとNew Relic AIは現在プライベートβ中となっている。

 3つ目の「プログラマブル」は、ユーザー自身が自由にユーザーインターフェイス(UI)を設計できるようになった点を指す。Reactベースで作成したダッシュボードは「Developer Hub」経由で他のNew Relicユーザーに提供可能。New Relicからも12個のサンプルダッシュボードが提供されるという。

ユーザーインターフェイスを自由に設計できる

 これらの新機能は、多種多様なユースケース、IoTデバイスを前提としたハイトラフィックと膨大なデータを前提に開発されたという。最後、松本氏は多彩なデータソースをサポートしたことで、New Relicの「NRDB」が「世界最大のテレメトリデータベース」になっていることをアピールした。

NRDBは「世界最大のテレメトリデータベース」

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