PCの性能をつかさどるもっとも重要なパーツといえば、何を思い浮かべるだろうか。おそらく、多くの人が「CPU」をおいて他にないと思うだろう。あらゆる作業の効率やスピードがCPU性能により決定されるため、CPU選びこそがPC選びのキモ、といっても差し支えない。また現在、PC向けのCPU市場ではCoreプロセッサーで大きなシェアを持つインテル、Ryzenで猛追をかけるAMDが激しく火花を散らしており、その動向に注視しているという人も少なくないはずだ。
現在の市場ではどのようなCPUが人気なのか、またスペックごとのおいしい買いどころはどこなのかを、この機会に一度整理してみよう。
ゲーミングや配信、クリエイティブで人気の8コア超えCPU
さいきんのCPU事情を追っていなかった旧来からのPCユーザーが、現在あらたにCPUを選ぼうとしてまず驚くだろうことと言えば、CPUの多コア化だろう。一般的なデスクトップPCに搭載されるCPUといえば、一部のハイエンドCPUを除き、長らく4コア/8スレッドの製品が鉄板だったわけだが、AMDの第一世代Ryzenが登場したことにより多コア化の流れが到来。たったの2年ほどでメインストリームCPUのコア数は倍増し、6コア以上の製品が当たり前になってしまった。
現在、インテルとAMDのメインストリームCPUは、ともに8コア/16スレッドの製品が上位モデルに採用されている。コアごとの性能も落ちているわけではないため、4コア時代の約2倍程度のマルチタスク処理能力を備えているわけだが、これが効いてくるのはゲーム配信や実況といった流行のコンテンツに加え、CGレンダリングや動画エンコードなどのクリエイティブ用途だ。ゲーム配信・実況では4コアCPUに比べ配信画質を上げやすくなるほか、レンダリングや動画エンコードなどの作業では終了までの速度を短縮できる。PCゲームはマルチスレッドへの対応がタイトルによって大幅に左右されるため、必ずしも性能をフルに発揮できるとはいいがたいが、特に最新の重量級タイトルでは徐々に対応が進んでいる。今後のことも考えれば、8コアCPUを用意しておくのがベターと言っていいだろう。
インテル製CPUのメインストリーム最新世代である第9世代Coreプロセッサーに関して言えば、Core i9-9900K、および内蔵GPU非搭載モデルであるCore i9-9900KFの2モデルが8コア/16スレッドCPUだ。内蔵GPU非搭載モデル、と聞いてピンと来ない人もいるかと思うが、これは第9世代Coreから用意されるようになったもの。インテル HD グラフィックスを搭載しない=PCとして起動するにはグラフィックボードが必須となる反面、販売価格を抑えたモデルということで、そもそもグラボを搭載するゲーミングPCでの需要が高い(モデルによってはGPU搭載版とそれほど価格差がないのが悩ましいところだが……)。なお、従来まで最上位ナンバーだったCore i7モデルは、最新世代では8コア/8スレッドに対応。Core i7-9700Kと、内蔵GPU非搭載のCore i7-9700KFがラインアップされている。
一方、インテルに先駆けてマルチコア化を進めたAMDは、現行の第2世代Ryzen上位モデルであるRyzen 7 2700X、Ryzen 7 2700が8コア/16スレッドに対応する。インテルCPUとの大きな違いは、基本的に内蔵GPUが非搭載であるため、使用にはグラボが必須となることだ。また、AMDの50周年記念モデルである「AMD Ryzen 7 2700X 50th Anniversary Edition」も現行モデルと言えるが、こちらはRyzen 7 2700Xと性能的な違いはない。ただし通常モデルより1万円ほど高価(!)なため、あくまで性能を求めるのであれば素直に通常モデルを購入するのが妥当だ。
ちなみにインテル、AMDそれぞれの現行8コアCPUの価格をまとめると以下のようになる。
現行8コア/16スレッドCPUの主な価格帯(税込) | |
---|---|
Core i9-9900K | 6万2000円前後 |
Core i9-9900KF | 6万1000円前後 |
Core i7-9700K | 5万3000円前後 |
Core i7-9700KF | 5万円前後 |
Ryzen 7 2700X | 3万円前後 |
Ryzen 7 2700 | 2万7000円前後 |
Ryzen 7 2700X 50th Anniversary Edition | 4万2000円前後 |
Core i9-9900Kの価格が6万円台と、特にインテルCPUの高価さが目立つ。多コア化の影響により仕方ないこととも言えるが、反面、AMDのコストパフォーマンスの良さは評価できる点だろう。いずれも8コアCPUではあるが、インテル側は動作クロックやIPC(Instruction Per Clock:1クロックあたりの平均命令実行数)が高いという大きなメリットがあるため、どちらを選ぶかは悩ましいところだ。
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