コミュニティを大事にしよう! 参加しよう! なければ作ろう!?
ウェブクリエイターズ高知の杉本さん、コミュニティ作りを語る
2017年12月12日 10時30分更新
JAWS FESTA 中四国 2017では、AWS以外のコミュニティから多くの登壇者が呼ばれていた。ウェブクリエイターズ高知の杉本 憲昭さんもそのひとりだ。高知県香美市出身の杉本さんは2011年に独立、高知にUターンしてきたが、当初は県内案件はほとんどなかったという。ところがいまでは案件の多くが県内からの発注に変化している。そのきっかけとなったのは、杉本さんが精力的に展開してきたコミュニティ活動だった。
出身地である高知に戻ってきたものの県外案件を県外発注する日々
杉本さんの仕事は、マーケティングやプランニング、情報設計、そしてディレクションだ。Webサイトづくりの根幹をなす部分に強みを持つが、高知に戻ってきた当時は地元にコネクションも少なく、発注のほとんどは県外からだった。フリーランスにはありがちだが、技術はあっても売り込み方がよくわからない。
「営業できなかったんですよ。それでも県内にコネクションができて案件をいただけるようになったのは、コミュニティがあったからです」(杉本さん)
といっても、高知にもともとITコミュニティがあった訳ではない。ウェブクリエイターズ高知は、杉本さん自身が立ち上げたものだ。杉本さんがUターンした当時、高知で開催される勉強会はほとんどなく、香川や岡山、たまには東京まで足を伸ばして勉強会に参加していたという。
「毎回遠くまで行くのは大変なので、高知でコミュニティを立ち上げることにしました。それが、ウェブクリエイターズ高知です。毎月1回勉強会を重ねていくうちに、県外からも講師に来てもらえるようになりました」(杉本さん)
コミュニティを自身で立ち上げるのは大変だったと思うが、杉本さんには勉強だけではなく地元でのコネクションづくりという目的もあった。杉本さん自身はディレクターなので、受注した案件を実際に形にするクリエイターとのコネクションを作らなければ地元で仕事を完結できない。Uターン当初は県外から受注した案件を、わざわざ県外のクリエイターに発注して制作していたのだ。高知県が謳う「地産外商」を実現するためにも、発注先のコネクションは県内に確保しておきたかった。
ウェブクリエイターズ高知以外にもコミュニティと人脈を拡大
Web制作に携わりながらITの進化を見てきた杉本さん。次第に学びたい技術が増えてきたという。多くの人はここで、その技術を学べそうな勉強会に参加するところだろう。杉本さんもWordPressを学ぶべく、勉強会情報を調べたのだが、残念ながらWordBench高知は休眠状態だった。しかしここで「残念でした」と終わらないところがすごい。
「WordPressを勉強したかったので、休眠中だったWordBench高知の運営を引き継ぎまして、活動を再開しました。さらに異業種のコネクションを広げたいと思い、高知IT飲み会というものも始めました」(杉本さん)
ないなら自分で作ればいい。やる人がいなくて動かないなら自分で動かせばいい。そんな勢いを杉本さんのセッションでは感じることができた。こうしたコミュニティでの交流を通じて、田舎ならではの案件の回し方も身につけてきたとのこと。
「田舎ではお客さんの予算が少なくて、作っただけで満足することが多い。それを継続的な案件にしていくために、まずはWebサイトを作ったことでお客さんに儲かってもらいます。そうするとより良くしたいと考え始めるので、一緒にPDCAサイクルを回していきます」(杉本さん)
作り込んで終わるのではなく、運用に力を入れていくことで、クライアントとの絆を深めつつ案件を継続的なものにしていける。しかも、「お客さんに儲かってもらいます」と簡単に言ってしまうあたりに、ビジネスへの自信も感じられて頼もしい。そうした努力が実り、Uターン当初は全体の10%程度に過ぎなかった県内案件が、今では80%ほどを占めるまでになっている。
ただし、やはり案件の規模の違いがあるせいか、売上に占める割合はそこまで大きくなっていないとのこと。ここはやはり、お客さんに儲かってもらってどんどん大きな案件を発注してもらえるようになってもらうしかない。
AWSはよくわからないが、技術者とつながって活用していきたい
全然AWSの話が出ないセッションだなと思っていたら、最後にAWSの話題が出てきた。さすがにEC2でサーバーを立てるなど使ってはいるようだ。
「クラウドのサービスは使っているけれど、Webサーバー以外のAWSの使い方となると、正直いってわかりません。そこはウェブクリエイター×エンジニア、デザイン力×技術力ということで、人と人とのつながりで解決していきたいと思っています」(杉本さん)
実際に手を動かすエンジニアではなくディレクターならではの視点、といったところだろう。顧客の要望を実現可能な形に翻訳して、クリエイターやエンジニアとの橋渡しをすることが、ディレクターの仕事だ。個別技術に精通する必要はないが、どのようなことができるか知っておくに越したことはなく、勉強したいという意欲もあるとのこと。
「JAWS-UGでデザインやディレクションなどのウェブ系勉強会をやってもらうとか、逆にウェブクリエイターズ高知に来てもらってAWS勉強会をやってもらうなど、コミュニティ同士で協力していけるといいですね」(杉本さん)
最後に杉本さんは会場に向けて、勉強会のコミュニティを大事にしよう、なければ作ろう!と呼びかけた。特に都市圏以外のエンジニア、クリエイターは勉強の機会がないと嘆くより「なければ作ろう!」の精神が重要なのかもしれない。
この連載の記事
-
第9回
デジタル
なぜAmazonはマイクロサービスに舵を切ったのか? -
第7回
デジタル
武闘派CIOが「コミュニティに参加する理由」を経営理論からひもとく -
第6回
デジタル
AWS+kintoneの高知発IoT事例は勉強会のスライドがきっかけ -
第5回
デジタル
Webやモバイルアプリの開発者はなぜVRに注目すべきか? -
第4回
デジタル
娘の前で語った沖さんのマルチコミュニティ活用術がナウい -
第3回
デジタル
松山の参加者3人は東京の600人!Agile459懸田さんが叫ぶ -
第2回
デジタル
JAWS FESTAのメインイベント?懇親会のLTerはみんな叫ぶ -
第1回
デジタル
JAWS FESTAなう!全国のコミュニティメンバーが松山に大集合 -
デジタル
今年は松山!JAWS FESTA 2017レポート - この連載の一覧へ