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日本の“自動化”“生産性向上”は富岡製糸場から始まった! エプソン「MOVERIO」で世界遺産を知る

2017年12月14日 11時00分更新

文● 小山安博、編集●ハイサイ比嘉、協力●近畿日本ツーリスト ぐんま支店 高橋舞

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 360度の全天球映像を使ったVR(Virtual Reality)の活用法のひとつとして、美術館や博物館が館内の様子を配信する例が増えているが、「現地に行かなくても芸術作品などの所蔵品を見られる」という使い方が多い。

 これに対してAR(Augmented Reality)の活用例は、「現実を拡張する」という特徴を活かし、自由に出歩いたり動き回ったりできることが前提となっている。普段の生活と同じように行動しつつ、そこに新たな情報を追加するわけだ。世界遺産でもある国宝「富岡製糸場」(群馬県富岡市)ではまさにこの考え方を採り入れており、エプソンのスマートグラス「MOVERIO」を観光客向けのガイドツアーで活用している。今回は、その背景とメリットについて現地で確認してきた。

世界遺産・国宝「富岡製糸場」

世界遺産・国宝「富岡製糸場」(群馬県富岡市)ではエプソンのスマートグラス「MOVERIO」を観光客向けのガイドツアーで活用

富岡製糸場 解説員 櫻場善文氏にお話を伺った

日本の世界遺産「富岡製糸場」

 富岡製糸場は、日本近代史にとり大きな意味を持つ場所だ。「富岡製糸場と絹産業遺産群」は、長い間生産量が限られていた生糸の大量生産を実現した「技術革新」と、世界と日本との間の「技術交流」を主題とした近代の絹産業に関する遺産として評価されている。

 歴史的経緯を簡単に説明すると、明治維新後の政府は、外貨獲得のため生糸の“品質改善”や“生産向上”を急ぐものの、当時の民間資本による製糸場建設は困難な状況であったという。そのため、洋式の繰糸器械を備えた官営の模範製糸場を作ることを計画。そして明治5年(1872)7月に建物が完成し、10月から操業を開始した。富岡製糸場は、約140mの長さを持つ繰糸所に300釜の繰糸器が設置された当時世界最大規模の製糸場でもあり、この時代の日本の輸出の7割を占めるという生糸を生産。全国から集まった工女たちが働いていた。

 当時の日本には器械製糸技術がなかったため、国が主導し、フランス人のポール・ブリュナ氏を雇い入れての設計、建築が進められ、その後も1875年までは外国人指導者とともに操業が続けられていた。

 1893年には三井家に払い下げられ、1902年には原合名会社へと譲渡。1938年には株式会社富岡製糸所として独立、1939年には片倉製糸紡績との合併と続き、1987年3月に操業停止となった。そして2014年6月に世界遺産として登録された。12月には繰糸所、東西置繭所の3棟の建物が国宝にも指定されている。

 そんな歴史的にも重要な位置づけの富岡製糸場は、すでに操業を停止して30年。現在は富岡市が管理している。

周囲を視認できる「MOVERIO」の特長を活かしたガイドツアー

 残念ながら、現在の富岡製糸場では明治の操業開始当時の器具が残されているわけではない。しかし、失われた光景を再現するために、当時の様子を文章や写真、ビデオなどでも紹介しており、ガイドツアーによる口頭での詳細な解説も行なっている。それでも十分当時の様子を想像はできるのだが、そこで新たに活用されているのがMOVERIOを使ったガイドツアーというわけだ。

富岡製糸場内の様子

繰糸所内には自動繰糸機がズラリと並んでいる。自動繰糸機は、煮た繭から目的の太さの生糸を繰糸する全行程を自動化した機械。人間が行なう作業は、繰糸作業の管理調整やメンテナンスなどだった

富岡製糸場では、失われた光景を再現するために、当時の様子を文章や写真、ビデオなどでも紹介しており、ガイドツアーによる口頭での解説も行なっている。MOVERIOを利用することで、臨場感のある体験ができるようにしている

 MOVERIOは、エプソン独自開発のシリコンOLEDディスプレイを内蔵し、視界の一部に映像を表示する軽量のメガネ型デバイスだ。周囲を視認できる(シースルー)ため、映像情報と現実の両方を同時に視界に収められるという特長がある。このMOVERIOを組み合わせたツアーは予約すれば誰でも利用できる。

 MOVERIOを使ったガイドツアーでは、実際に国宝の東置繭所の外観を見ながら、当時の建物の360度CG映像を見たり、出勤する工女たちの姿を見たり、現実にはもう見られない当時の様子を見ることができる。

左画像は繰糸所内の360度イメージ。右画像は東置繭所内のもの。これらをMOVERIOで見ると、ユーザーの周囲にグルッとかつての様子として表示され、現在の様子を重ねて見ることができる(凸版印刷株式会社提供の画像を掲載)

 イヤホンから流れる説明を聞きながら操業開始当時の姿が目の前に見えるというのは想像以上に楽しい体験で、当時の状況を臨場感をもって把握できる。視界にはかつての富岡製糸場と現在の姿が同時に見られるので、その変化も楽しい。シースルーによって現実世界が見えているので視界が遮られる不安もなく、安心して上下左右を見渡して360度のCG映像を満喫できる。

 解説員の説明に従って、ポイントに移動してMOVERIOを装着して映像を確認するという流れで、移動時はMOVERIOを外すが、メガネをかけるように簡単に装着できるのはMOVERIOのメリットのひとつ。操作はすべて解説員が所持している管理用システムで行なうので、利用者側の手間もなく、誰でも楽しめる。

MOVERIOはすべて管理用システムで制御されており、利用者側は操作などの手間なく楽しめるよう工夫されている

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