インターネットで航空券や宿の予約が手軽に行なえるようになり、“旅行”の楽しみ方が、ツアーなどの団体旅行から自身でプランを組み立てる個人旅行へとシフトしてきている。
これら個人旅行を後押ししているのが、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)という実店舗をもたずインターネット上でサービスを提供する旅行会社だ。その最大手が「ブッキング・ドットコム」。テレビCMも放映されているので、名前を知っている人も多いだろう。
ブッキング・ドットコムが他のOTAと違う部分は、ホテルや旅館など、宿泊施設の予約に特化しているという点だ。現在では、国内外合わせて150万軒を突破するという、OTAとしてダントツトップの登録施設数を誇っているが、これもホテル予約に特化しているからこそ実現できている。
今回、ブッキング・ドットコムの招待で、オランダにある本社を取材する機会に恵まれた。旅行会社ではなくIT企業が立ち上げたブッキング・ドットコムとはどのような会社なのか、どのようにシェアを拡大したのかなどを取材してきた。
アムステルダムの観光名所にある
ブッキング・ドットコム本社
世界最大の宿泊予約サイトのブッキング・ドットコムは、100ヵ国以上のスタッフが従事する国際色豊かな会社だ。世界中の人種が集う企業というと、アメリカに本社があるように思ってしまうが、ブッキング・ドットコムの本社は意外にもオランダ最大の都市アムステルダムにある。これはブッキング・ドットコム創業の地がアムステルダムだからだ。
運河の街アムステルダム。道路が狭いためトラム(路面電車)が交通の要となる
アムステルダムの観光名所のひとつレンブラント広場。オランダの画家レンブラントの代表作「夜警」を等身大で表現した銅像が並ぶ。その奥にブッキング・ドットコムの本社が見える
銀行だった歴史的建物を改装してオフィスにしたブッキング・ドットコム本社。1階にはなぜか、しゃぶしゃぶ屋がある
外装は古くても、内部はご覧の通り綺麗にリフォームされている。本社は4つの建物をつなげて1つのオフィスとしているので、外観から想像する以上に内部は広い
自動車専用道路を模した廊下。日本のオフィスではあまり見ない、遊び心のある内装が目を楽しませる
吹き抜けに接するエレベーターは壁も扉もシースルー。高所恐怖症の人は乗れないかも
オフィス内のいたるところに、無料のコーヒーサーバーが設置されている
ドリンクだけでなく果物も常備されており、フリースペースでいつでもくつろげるようになっている
フリースペースは場所によってすべて内装が違う
気分を変えるためにオフィスではなく、フリースペースで打ち合わせをすることもあるそうだ
洗練されたダッチデザインのフリースペースは、まるで家具屋のショールームのよう
場所によっては各種ボードゲームや書籍が常備されており、好きに使えるようになっている
ビデオゲームやビリヤードまである。もちろん無料で利用できる
快適な職場環境作りのためには、快適なリフレッシュスペースを提供することも大事。職場は仕事をするための場所という日本とは、考え方がまるで違う
日本の“姫路”の名前がついた会議室。壁と床には桜が描かれている
開放的な屋上。天気が良いと、PCを持ち出してここで仕事をする人も多いそうだ
その屋上からは、レンブラント広場が一望できる。ちなみにアムステルダム中心部は、教会より高い建物を建ててはいけないという法律があるため高層建築物がない。そのため屋上からは、かなり遠くのほうまで街を見渡せる
このように、日本の職場とはまるで環境が違うブッキング・ドットコム本社。従業員が働きやすい環境を提供し、仕事とプライベートの切り替えが瞬時にできるように設計されている。職場に娯楽施設があるのはそのためだ。職場は仕事をする場所であり遊ぶ場所ではないという日本の職場環境とは、そもそも根本から異なっている。
もちろんそれは食生活においてもそうだ。広い社員食堂では好きなだけ食事を食べられるし、各フロアーにはドリンクと果物が常備されている。もちろんこれらはすべて無料だ。仕事は生活の一部という考えがあるため、その生活が満足できるように環境が整えられている。
焼きたてのパンと、ドリンクバーも常設。社員食堂と言うには立派すぎる設備だ
食堂は、好きなものを好きなだけ取って食べられるビュッフェスタイル。パン、ライス、スープ、サラダ、肉、どれもおいしそう。ドリンクはビールのように見えるが、レモンジンジャーだ
食堂の隣りには、有料のカフェが併設されている。各フロアーに無料のコーヒーサーバーがあるにも関わらず、ここのコーヒーは大人気だという。代金は給料から天引きされるそうだ