インターネットイニシアティブ(IIJ)は9月28日、DSD対応のストリーミング配信サービス「PrimeSeat」で先週実施した、ベルリンフィル・ハーモニー管弦楽団のDSDライブ配信について解説した。
同社は先週、最新フォーマットDSD 11.2MHzによる、世界初のDSDライブ配信を実施した。同楽団の本拠地「PHILHARMONIE」で、9月16日(土)19:00(日本時間では9月17日2:00)に開演した演奏会を、専用開発した配信ソフトを使い、現地からリアルタイムかつ無料で日本のユーザーにストリーミング配信した。曲目はマレク・ヤノフスキ指揮のプフィッツナー『歌劇≪パレストリーナ≫より3つの前奏曲』、ブルックナー『交響曲第4番変ホ長調≪ロマンティック≫』。
なおPrimeSeatは、6~7月にNHK交響楽団のコンサート音源をDSD11.2MHzで制作。DSD 11.2MHzによる世界初のオンデマンド配信も実施していた。
配信ソフトの「PrimeSeat BROADCASTER」は、コルグが開発したもので、DSDの信号はもちろん、44.1kHz/16bit~384kHz/24bitのPCM信号の配信にも対応する。
ベルリンフィルは「デジタルコンサートホール」という映像付きの有料ライブ配信を実施している(PrimeSeatではそのマスターを利用した番組『ベルリンフィルアワー』も配信している)が、そこでは最大60本ものマイクが用いられる。しかし今回の配信では、客席1列目の上方にマイクを吊るし、ピンポイントで収録している。その調整は専属トーンマイスターのクリストフ・フランケ氏が担当した。10㎝の違いで大きな変化が出るほどシビアな調整だという。
現地の配信機材はシンプル。ホールに設置したマイクはゼンハイザー「MKH 8020」×2本、ここから得たアナログ信号をマイクプリアンプ(Merging Technologiesの「HAPI」)に通し、外付けのA/DコンバーターでDSD 11.2MHzのデジタル信号に変換。この信号をUSB接続したMacBookに取り込み、上述したBROADCASTERで配信した。
HAPIはA/Dコンバーターの機能も持ち、録音用にEthernetケーブル(Ravenna)で接続したWindowsノートとPYRAMIXにもデータを出力している。
11.2MHzのDSDデータは、22.4Mbpsと膨大なビットレートになるため、ベルリンから一度、ロンドンにあるIIJの拠点(IIJ Europe Limited)に送った。そこで5.6MHzのDSD、96kHz/24bitのPCMのストリームを別途生成しつつ、IIJのCDNを使って日本のユーザーに配信した。ロンドンと日本の間には太いIIJバックボーンネットワークがあるため、長距離・高スループットの伝送が安定的に可能。配信サーバーのチューニングも合わせて実施したため、通常通信の倍近いスループットを得られたという。