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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第127回

Jolla「Sailfish OS」をロシアが自国のモバイルOSに採用?

2015年05月27日 17時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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 AndroidとiOSがスマートフォン市場に占める比率は世界的に高まっている。しかし、AndroidもiOSもともに米国企業が中心になって開発しており、この状態を政治的に危険視する動きがある。

 5月、ロシア政府はAndroidとiOS以外のOSを推奨し、2大OSの比率を今後10年で50%まで下げると述べ、話題となった。白羽の矢がたったのは、フィンランドを拠点に持つJollaの「Sailfish OS」だ。

ロシア主導のもとでJollaを用いて
BRICS諸国でAndroidに対抗?

 ロシアのニュースサイトRBC(関連リンク)によると、IT起業家から政治家に転じたNikolai Nikiforov通信情報大臣は5月中旬、国産モバイルOSの開発にあたってYandex、Alt LinuxなどのロシアのIT企業、そしてJollaと会合を持ったという。

ITベンチャー経営者から、ロシア政府の大臣に就任した。なんと32歳という若さ。Twitter上でも英語を堪能に用いている

 スマートフォン市場は急成長市場であり、ロシアでも世界市場のトレンドと同様にAndroidとiOSが占めつつある。その状況を快く思わないのか、Nikiforov氏は”ロシアのユーザーの個人情報データの安全問題”の解決を目的に、Jollaとの協業を進めるということのようだ。

 合わせてRBCは、1年前にNikiforov氏がAppleとSAPに対し、自社プログラムのソースコード開示を求めたところ、その要求に応じなかったことを記している。

 RBCによると、現在ロシアでは、国外のOSが占める比率は95%、これを10年後の2025年には50%まで下げたいとしているとのことだ。モバイルOSはiOSとAndroid以外にもWindows Phone、BlackBerryなどあるが、ここでいう”国外のOS”とはAndroidとiOSと実質的に同じ意味と判断していいだろう。

 さらには、この動きをロシア以外のBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にも拡大させるという。これらの国のIT企業が参加する国際的なコンソーシアムを作り、プラットフォーム開発を進めていきたいという意向のようだ。一方で、ロシア政府のイニシアティブはプラットフォーム構築ではなく、Sailfish OSへのアプリポーティングを奨励するものという向きもあり、今後の動向を見守るしかない。

もちろんJollaのOSライセンスには追い風ではある
そのJollaにロシアとの関係を聞いた

 Jollaは元NokiaのMeeGoプロジェクトに参加していた社員が中心となって(Jollaによると、社員のほぼすべてがなんらかの形でNokiaと関係があった人たちだという)、立ち上げたベンチャー企業だ。

 この2~3年、Jollaの動向はASCII.jpでも何度かレポートしているが(関連記事)、同社の目標は2013年末に発売されたスマホ「Jolla」の販売よりも、MeeGoの流れをくむOS「Sailfish OS」のライセンスだ。

2013年末に発売されたJollaスマホの第1弾

 現時点ではJolla以外にSailfish OSをベースとした端末は登場していないが、今年のMWCではライセンスする準備が整ったとして「Sailfish OS Alliance」を立ち上げた(Androidでいうところの、Open Handset Allianceのようなもの)。インドの端末メーカーの採用発表が近いというウワサもある。

 今回のロシア政府との関係についてJollaに確認したところ、「独立したオープンなモバイルOSへの重要性が増している」とともに、Sailfish OSのオープン性により「各国が独立したモバイルエコシステムを構築し、自国のニーズに応えることが可能になる」と暗に認めた。

 Jollaはすでにフィンランドを初めとした欧州、ロシア、中国と香港、インドなどで手に入る。奇しくもロシアのNikiforov氏が抱く「BRICSで新しいモバイルOSエコシステムを」という構想に合致する。これに対しJollaの広報担当は、「我々はBRICSに戦略的にフォーカスしてきた。ロシア政府がオープンなイニシアティブを推進していることを喜ばしく思う」とコメントしている。

 Jollaとロシア政府の関係が明るみに出るのは実は最初ではない。Jollaは以前からロシア政府からの関心を公にしてきた。MWCで同社は安全性を強化した「Sailfish Secure」を発表しているが、当時同社のMarc Dillon氏(共同創業者兼COO、ソフトウェア開発トップ)は各国政府から安全なモバイルOSを求めるニーズが高いと説明していた。

 米国技術者が中心ながらスイスに拠点を持つSilent Circleなど、安全なモバイルプラットフォーム市場がそれなりの規模になることは間違いなさそうだ。


(次ページでは、「ロシア政府はTizenとの比較でSailfish OSを選んだ!?」)

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