ASUS会長ジョニー・シー氏に聞く
ZenFone 2の秘密
ASUSは、4月20日に最新SIMフリースマートフォン「ZenFone 2」を日本市場で発売すると発表した。発表会にはASUS会長のジョニー・シー氏が登場し、みずから製品をアピールするなど、日本市場に対する高い期待度が伝わってきた。
そんな熱のこもった発表会後に、ジョニー・シー氏へインタビューする機会を得たので、内容を余すことなくお伝えする。
ZenFone 2は全世界から大きな反響を得ている
──今回、ZenFone2の日本発売を発表されましたが、1月のCESにおけるZenFone 2発表以降の反響はどのようにお感じでしょうか。
ジョニー・シー氏(以下、ジョニー) これまでに発表した国々で、われわれの予想を上回る反響をいただいておりましてびっくりしています。日本でも同様に、いい反響が得られるものと考えています。
──そういった良い反響を受けて、ZenFone 2に対してどのような期待をお持ちでしょうか。
ジョニー 昨年発売した初代のZenFoneでは、発売後最初の四半期においては1ヵ月あたり1万台ほどの出荷でしたが、現在では1ヵ月あたり150万台を出荷するようになりました。1年間のトータルでは800万台の出荷を達成しています。今回のZenFone 2では、前向きな反響を踏まえて、1年間で2500万台の出荷を想定しています。
──その出荷台数のうち、日本市場にはどの程度の台数を期待していますか?
ジョニー 日本では、すでにSIMフリー市場において(初代ZenFoneが)良好なシェアを獲得していると考えていますが、まだ(SIMフリー市場は)立ち上げの状況にあると考えています。そこで、まずはユーザーに優れたエクスペリエンスを実現できる製品を確実にお届けするというところにあると思います。その後、市場やわれわれのオペレーションが安定した段階でターゲットを設定すべきだと考えています。
そうでなければ、数字ありきになってしまいます。もちろん、ターゲットをどうすべきかは常に話し合っていますが、まずは品質、ユーザー経験ともにベストとなる製品をお届けすることが重要だと思っています。
日本のSIMフリー市場は今後大きく成長すると考えられますし、ZenFone 2に対する大きな前向きの反響も踏まえて、結果は必ずついてくるものと思っています。
日本市場での販売戦略について
──今回、パートナーとしてMVNO業者だけでなく、MNO業者のワイモバイルも含まれていました。昨年、auから「MeMO Pad 8」が発売されましたが、それと同じように、今後MNO業者と手を組んでZenFoneシリーズを売っていく計画はあるのでしょうか。
ジョニー 今回MNO業者のワイモバイル様がパートナーに含まれていますが、今後日本でSIMフリー市場が大きく拡大して、新しいモバイルの時代が到来する中で、われわれもなるべくたくさんの選択肢を日本の消費者の皆様にお届けしたいと考えています。
──もしMNO業者と組むとなると、日本市場で高いシェアを誇る人気ブランドの端末とも競争しなければならなくなる可能性があります。そういった日本での人気ブランド端末についてどのようにお考えでしょうか。
ジョニー まず、ASUSとしては1ランク上の贅沢をお届けしたいというビジョンがあります。常にiPhoneやGalaxyシリーズなどと比較をしながら、ベストな価格帯で製品をお届けするために、日々努力しています。
そういった中で、必ずブレイクスルーが起こります。それによって、高い性能を維持し、バッテリー寿命も長い製品を、安価で実現できるようになるわけです。
われわれの研究所「ダビンチラボ」では、カメラ機能「PixelMaster」の研究を行なっています。例えば、Low Lightモードでは、複数のピクセルを同時に利用することで、暗い場所でも鮮明な写真が撮影できます。また、人間工学を駆使したデザインによって、手に持ちやすく操作性にも優れるボディーも実現しています。
また、世界のトレンドを見てみると、オープン化が進んでいます。メーカーと消費者の距離が非常に近くなりました。消費者は受け身で聞くだけではなく、自ら製品の情報をチェックするようになりました。つまり、ユーザーがパワフルになったと言えるでしょう。
そういった意味でもSIMフリーのトレンドは世界のトレンドに合致していると思います。そして、ユーザーのクチコミのパワーも重要です。最高の品質を安価にお届けできれば、クチコミのパワーに繋がっていくと思っています。
インテルとの緊密なパートナーシップが
低価格実現のカギ
──ZenFone 2では、初代ZenFoneから大きく性能が向上していますが、これだけ性能を高めた理由はどのような部分にあるのでしょうか。
ジョニー 初代ZenFoneでは、販売国を選んでの展開となっていました。しかし、ZenFone 2はフルパワーで展開することにしましたので、製品のランクを上げなければならないと考えました。ただ、製品に幅を持たせることも必要と考えています。
実際、ハイエンドを求めていない地域に向けては、フルHD液晶を搭載しないモデルを用意しています。しかし、日本の消費者は高品質でハイエンドの製品を求めていると思いますので、ランクを上げた製品をお届けする必要があると考えたのです。
──ZenFone 2では、大きく性能を向上しつつ、価格は比較的安価に抑えられていますが、なぜ性能向上と安価を両立できるのでしょうか。
ジョニー おそらく、インテルとの間で、ビジネスミーティングだけではなく、研究所に招かれるCEOは私ぐらいしかいないと思います。その場では、エンジニアと内部の細かなアーキテクチャに関してディスカッションをしています。つまり、CPUについて内部のアーキテクチャまで深く理解することが重要なのです。
そして、それと平行してベストなデザインを構築する必要があります。ただ、高性能なパーツを採用しても、金属製のケースを多用して無線性能が低下してしまうと意味がありませんので、性能とデザイン性を確保しつつコストを抑える努力をしています。
また、カメラ機能のPixelMasterは、優れたCPUとGPUの性能を利用してソフトウェアで実現しています。CPUやGPUのパワーを使えば別途コストがかかりません。とにかく、技術的な努力をしつつ、最高のユーザー体験を提供するにはどうすればいいのか常に考えています。ユーザーのニーズを見すえて、それが技術的に達成可能なのか、またビジネスとしてコスト的に妥当性があるのか、ということを見据えています。
ASUSではPCの時代より長年、性能とコストを両立するということに取り組んでいます。何よりもまず性能と品質が最も重要ですが、その上で安価を実現するというのは得意なのです。
──インテルとの長いパートナーシップが、低価格を実現するカギになっていたりしますか?
ジョニー あまり詳しいことはお話しできませんが、パートナーシップがカギになるのは確実です。強力なパートナーシップを組むということは、パートナーを深く理解する必要があります。先ほども言いましたが、私はインテルの研究所に招かれるまでの関係性を築いてきました。また、私は彼らに「CPUコアは積めば積むほどいい、というわけではない」と言ったことがありますが、私の意見も彼らは評価してくれていると思います。これはお互いにとって良い関係と思っています。そして、今後も私はインテルを信頼します。
Windows 10を見据えた製品構想は?
──ASUSは、ZenFoneシリーズ以外にも、スマートウォッチのZenWatch、タブレット、PCと様々な製品がありますが、それらを連携して活用するような新たな構想はありますか?
ジョニー もちろんあります。ただ、それぞれの製品の使い方は、使う人によって違います。様々なユーザーの利用シーンをしっかり考える必要があります。そういった中で、スマートフォン、タブレット、2-in-1、それぞれに関係性があります。もちろん、ユーザーによって好みが違うということも意識する必要があります。そのため、連携も考慮しつつ、それぞれの分野ごとに投資をしていく必要があると考えています。
──Windows 10の登場が間近に迫っていますが、PCとスマートフォンの連携を高めるという意味で、Windowsベースのスマートフォンを投入する可能性はありますか?
ジョニー Windowsの強みは、仕事の生産性を高めるという点で、長い歴史があることだと思っています。そうなると、必然的に画面サイズが大きくなければなりません。スマートフォンの画面では、Excelの使い勝手はよくありません。また、タブレットもまだまだAndroidが強いと思っています。アプリも豊富ですし、そもそもタブレット自体がメディアの消費用途として使われることが多く、ビジネスの生産性を高めるために使われることはほとんどありません。ですので、これら分野ではWindowsは苦戦すると考えています。
Windows 10は様々な改善が図られて、タッチ機能なども充実しているでしょうし、エンターテインメント分野での利便性も高められるでしょう。もちろん、元々の強みであるビジネスの生産性を高めるという部分も同様です。ただ、全ての分野をカバーするのは大変なことだと思っています。やはり、画面が小さくなるとWindowsの強みを発揮しにくくなると思います。
──最後に、日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
ジョニー まずは、日本のすべてのASUSユーザーの皆様に感謝したいと思います。これから、新しいSIMフリーの時代、新しいモバイルの時代が来ようとしています。この動きは、グローバルのトレンドと一致しています。今、世界がオープン化し、分散化し、シェア型の世界へと移ってきています。
日本の消費者の皆様の、品質重視の姿勢を心より尊敬しています。そして我々も、それに見合うような最高ランクの製品を作っていくために全力を尽くしたいと思います。
──本日はありがとうございました。