岡山大学は5月7日、新方式の人工網膜による実験でラットの視覚を回復することに成功したと発表した。
網膜色素変性と呼ばれる視細胞が死滅して失明に至る遺伝性疾患の治療法として期待される。網膜色素変性にはこれまで有効な治療法がなく、カメラで取り込んだ画像から信号処理して視神経を電極で刺激するという対処法がアメリカで開発されてるが、この手法は構造が複雑で機器・埋め込みも高額な割に60画素しか見ることができないという難点がある。
岡山大学が医工連携で開発した「OUReP」は光を電位差として出力する色素結合薄膜型のポリエチレンフィルムで、薄くて柔らかな素材のため網膜の代わりに埋め込めば、受光した光で背面の残存視神経を刺激する。理論的には本来の目と同等の解像度が実現できる。
研究チームでは網膜色素変性ラットにOURePに埋め込んで網膜電図(網膜の電気的活動)を記録したところ、埋め込んでいないラットに比べて網膜電図が誘発されており、有効性を確認できたとしている。OURePには毒性がなく、また埋め込み手術は既存の手術と変わりない手法で可能であるため、医薬品・医療機器等法(旧薬事法)に基づく治験の準備を進めるとしている。