12月6日、日本ヒューレット・パッカード(HP)は9月に米HPが24億ドルで買収したスリーパー(以下、3PAR)製品に関する発表会を開催した。買収された3PARの幹部であったクレイグ・ヌネス氏が、HPの幹部として、なぜ3PARを買収したを説明するというユニークな説明会となった。
シェア拡大のために不可欠の戦略製品
記者発表会の冒頭、新たに日本HP ストレージワークス事業本部 事業本部長に就任した飯尾光圀氏は、「12月1日以降、3PARの日本支社は日本ヒューレット・パッカードの1事業部として動いてもらっている。買収以降、お客様から大変な反響をいただいており、すでに製品も販売している」ということで、買収がスムースに進んだことをまずは強調した。
続いて米ヒューレット・パッカード エンタプライズサーバー・ストレージ・ネットワーク HP Storage クレイグ・ヌネス氏は、自身が率いていた3PARをHPが買収するに至るまでの背景を説明した。まず同氏は「ストレージ事業全体では1位なのに、外付けストレージで3位(11.3%)に甘んじているのは満足できない。そこで2年前、HPの幹部は今までとは別の戦略を考えた」(ヌネス氏)と外付けストレージのシェア拡大について言及。その後、iSCSIストレージを擁するレフトハンドを買収したり、アイブリックスのスケールアウトNASをベースにした「X9000」や重複排除ストレージ「StoreOnce D2D」などの製品を拡充した。このようにHPはここ2年、ストレージに対して集中的に行なっているストレージ分野での投資を続けており、今回の3PAR買収もこうした投資が背景にあると説明した。
次にヌネス氏は3PARが提供してきたユーティリティストレージについて、「まったく新しいティアワンストレージをクラウド分野に提供してきた」と説明。複数のユーザーでの共有を前提とした信頼性やセキュリティを確保する「マルチテナント(Multi-Tenant)」、データ容量の削減や省電力などを実現する「効率性(Efficiency)」、そしてパフォーマンスの最適化を実現する「自動化(Autonomic)」などの3PAR製品の3つの特徴をアピールした。そしてHPの買収も、こうした3PAR製品を支えるシンプロビジョニングやバーチャルドメイン、自動階層化、ワークロード調整、メッシュアーキテクチャなどの機能と技術に魅力を感じたため、そして「グローバルサービスプロバイダ10社のうち、7社が3PARを使っている」という実績があったためと述べた。
前述したiSCSIストレージやスケールアウトNAS、重複排除ストレージにあわせてクラウドストレージである3PAR製品が追加されたことで、「HPほど強力なストレージポートフォリオを持っているベンダーは存在しなくなった。必要なものはすべて用意できた」(ヌネス氏)とアピール。また、HPのBladeSystem Matrixや各種サーバー製品と統合することで、クラウドインフラを革新していくという方向性も明らかにした。
今後の製品の製品開発についてHPの強力な購買パワーが活かせるほか、買収により「(ベンチャーの)3PARでやや不安だったというお客様もいたが、ミッションクリティカルの分野で実績を持っているHPに移ったことで、安心したというお客様の声もいただいた」(日本HP 執行役員 エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 杉原博茂氏)というメリットもあるという。