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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第181回

メタバースの国際連携枠組みにソニー、電通が参加

2022年05月30日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 メタバースに、国際的な連携の枠組みができた。

 世界経済フォーラムが2022年5月25日、スイスで開かれている年次総会で、企業や政府が参加し、メタバースの規制について話し合うイニシアチブ(枠組み)を立ち上げたと発表した。

 世界経済フォーラムの発表によれば、メタ、マイクロソフト、ソニー・インタラクティブエンタテインメントなど60以上の企業、政府機関、研究機関がイニシアティブに参加する。

 26日の時事通信の報道によれば、電通、国連、シンガポール政府なども参加する予定だという。

 世界経済フォーラムがイニシアティブの立ち上げにあたって掲げているのは、「安全」「相互運用性」「公平」というキーワードだ。

 安全で公平なメタバースを構築するため、規制のあり方について議論が始まるようだ。

世界的企業が名を連ねる世界経済フォーラム

 このニュースへの理解を深めるうえで、まず押さえておきたいのは、世界経済フォーラムという組織だ。

 世界の大企業がパートナーまたはメンバーとして参加する組織で、年1回、スイス東部の都市ダボスで開かれる年次総会は「ダボス会議」と呼ばれている。

 日本企業でも、トヨタやソニーグループ、三菱商事、三井物産、日経新聞などがパートナーに名を連ねている。

 ダボス会議には各国の大統領や首相、世界を代表する経営者らが出席することでも知られている。

 2022年のダボス会議は、5月22日から26日の日程で開かれ、会議に合わせてメタバースのイニシアティブの発足について発表した。

各社が事前に見せた”伏線”

 今回のイニシアティブ発足には、いくつかの”伏線”があった。

 まず、フェイスブックの親会社にあたるメタだ。社名をフェイスブックから、メタに変更しただけに、メタバースを引っ張っていくという意気込みは強い。

 同社は5月18日に「オープンで相互に運用できるメタバースを確かなものとする」というタイトルでブログを発表した。

 同社で国際問題担当社長を務めるニック・クレッグ氏はこのブログで「メタバースは国境を越えて相互に接続するシステムであるため、管轄を越えて運用するための、公的・私的な標準、規範、ルールの網が必要になる」と述べている。

 この「相互運用できる」(interoperable)も、「オープン」という言葉も、世界経済フォーラムが発表したイニシアティブのプレスリリースにつながっている。

 国と時間帯こそ異なるが、ソニーグループも同じ18日にメタバース関連で動きがあった。

 NHKの報道によれば、ソニーグループは18日に経営方針の説明会を開き、メタバースを今後の成長分野と位置づけ、音楽やゲームなどのサービスを強化していく方針を明らかにした。

 電通も25日に、グループ横断の組織をつくり、企業のメタバース活用を支援していくと発表している。

 具体的には、メタバース内での事業開発支援や、メディア開発、店舗開発、広告展開などを支援するという。

 各社がメタバースに力を入れる姿勢を示した直後に、ダボス会議で国際的な枠組みが発足した。

共通ルールの設定は可能か

 この20年ほどだろうか。グローバル化が進むにつれて、ビジネスと関係の深い領域で、国際的にルールを統一していく取り組みも進んできた。

 具体的には貿易、金融、独占禁止などの法制度だ。

 たとえば、世界各国で事業を展開する企業が、同じ方針でビジネスを展開して、米国では問題ないが、日本では問題とされるということが起こる。

 企業側の立場からすれば、できれば同じルールを適用してほしいという考えは理解できる。

 メタバース内では、こうした問題がより鮮明になる。

 たとえば、個人や企業がメタバース内である行動をしたときに、ある国では適法だが、別の国では違法になるということでは、困ってしまう。

 だからこそ、統一的なルールが必要になるという議論が起きるのだろう。

 ただ、文化も歴史も商慣習も異なる国の人たちが参加するメタバースで統一的なルールを設けるには、膨大な時間を調整に費やす必要があるだろうし、調整している間にも様々な問題は次々に起こるだろう。

 メタがこの流れを引っ張ろうとしている点も気になってしまう。

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