安倍晋三首相が健康問題を理由に辞任を表明したことを受け、2020年9月14日に自民党の総裁選挙が行なわれる。
8日の告示を前に、安倍首相を長く支えてきた菅義偉官房長官が党内の支持を固め、新総裁に選出される流れが確定的とみられている。
新しい首相が取り組む最大のテーマは、新型コロナウイルス感染症と経済対策だが、もう一つ注目すべき政策がある。携帯電話料金の値下げだ。
テレ東NEWSが公開している動画によれば、9月2日に総裁選への出馬を表明した菅氏は記者会見で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社についてこう述べている。
「国民の財産である電波を提供するにもかかわらず、上位3社は市場で約9割の寡占状態を維持し、世界でも高い料金で、約20%もの営業利益を上げております」
「次の首相」の発言は、3社が「儲けすぎだ」だという指摘にも聞こえる。利用者としては、さらなる料金の値下げが実現するのか気になってしまう。
●発端は2年前の発言
菅氏にとって携帯電話の料金値下げは、以前から取り組んできた政策だ。発端は、2年前にさかのぼる。
2018年8月22日付の朝日新聞によれば、菅氏は札幌市内の講演で、携帯電話の料金を「4割程度下げる余地があるのではないかと思う」と発言した。
当時の政府の動きは周到だった。菅氏が講演でこの発言をしたのは21日。その2日後には、総務省の情報通信審議会で値下げに関する議論が始まっている。
当時の総務大臣だった野田聖子氏が、審議会に対して「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」を求めた。
同年8月28日の記者会見で野田氏は「4社目の事業者として楽天が新規参入することによって、大手3社から4社になるということで、競争の進展が期待されるところであります」と述べている。
3強の構図がほぼ固定化されている国内の携帯電話市場で、政府が楽天に対して、競争を活性化する役割を期待していることがはっきり述べられている。
閣僚が、特定の企業に肩入れしていると取れる発言をすること自体が珍しい。
菅氏は2006年~2007年に総務大臣を務めているが、そのころから携帯電話料金が高止まりしている状況に問題意識を持っていたとする報道もある。
●改革は不十分?
2年前の菅氏の発言から10日後、大手3社は通信料金を最大で2〜3割値下げすると発表。
その後も、料金の値下げや携帯電話会社を乗り換える際に利用者が支払う違約金(解約金)の引き下げなど、大手3社は断続的に料金改定を打ち出している。
しかし、出馬会見での発言からは、菅氏が携帯電話市場の改革は不十分と考えているようにみえる。この会見で菅氏はこうも述べている。
「事業者間で競争が働く仕組みをさらに徹底していきたい」
こうした発言の背景の一要素として、競争活性化の起爆剤と期待された楽天の現状があると思われる。
楽天モバイルは2019年秋にサービスを開始する計画だったが、基地局の設置に手間取り、サービス開始は2020年春にずれ込んだ。
2020年6月には、契約申し込み数が100万回線を突破したと発表しているが、競争活性化の起爆剤になれたと考える人はあまりいないだろう。
●安さと質は両立するか
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