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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第27回

ソフトバンクに暗雲 スプリント合併に「待った」

2019年06月17日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 米国で3位と4位につける携帯キャリア、TモバイルUSとスプリントの合併をめぐって、10州の司法長官たちが2019年6月11日、合併の差し止めを求めて、ニューヨーク州南部地区連邦地裁に訴えを起こした。

 スプリントは現在ソフトバンクグループの子会社で、Tモバイルはドイツテレコムの子会社だ。

 米国の携帯市場で3位と4位にあるドイツ系の会社と日系の会社が合併する方針に対して、米国の10州の司法長官が阻止しようとする構図だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、州の司法長官たちはいずれも民主党系だという。

 政治性の強い訴訟に映るが、何が問題とされているのだろうか。

●スプリントの合併は避けられないとの見方が大勢

 カリフォルニア州の司法長官の公式サイトが公表した訴状によれば、10州は、ニューヨーク州、カリフォルニア州、ワシントンDCなどが含まれる。

 米国の携帯キャリア市場は、合併を目指す2社を含め4社が競い合う構図だ。

 さまざまな統計を公表している「statisca」は、米国の携帯電話市場のシェアをまとめている。statiscaによれば、2018年第3四半期のシェアは次のようになる。

ベライゾン 34.91%
AT&T 34.07%
Tモバイル 17.51%
スプリント 12.13%

 おおまかに、ベライゾンとAT&Tが市場の3分の1ずつを押さえ、残る3分の1をTモバイルとスプリントが分け合っている構図と言える。

 とくに4位のスプリントは他社と比較して通信網が弱いとされ、合併は避けられない選択肢だとの見方が大勢を占める。

 第3四半期の時点で、Tモバイルとスプリントのシェアを単純に合計しても30%には届かない。3位と4位が一緒になっても、1位と2位には届きそうもない状況がある。

 企業の合併が独占(米国のクレイトン法)の問題となるのは通常、合併後の企業が市場の過半を押さえるなど、かなりの優位を得る場合だ。

 特定の市場に強すぎる企業が存在すると、価格やサービスの品質をめぐる競争がなくなり、消費者は強すぎる企業が決めた価格でサービスを受けざるを得ない状況になるからだ。

 政府が独占企業を規制する際に、いつも登場する理屈が上記のようなものだ。

 今回、10州の司法長官が起こした訴訟でも、同様の考え方が適用されている。訴状は、2社が合併すれば、価格の低下やサービスの向上をめぐる競争が阻害され、最終的に消費者に害があると主張している。

 訴状はさらに、契約時の審査を通過できず、プリペイドで携帯電話代を支払っている低所得層には、影響が大きいとしている。

●スプリント単体では設備投資費用をまかないきれない

 これに対して、米国のメディアではすでに反論も出ている。

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