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小島寛明の「規制とテクノロジー」 ― 第26回

「GAFA分割」50年前から似たような話はあった

2019年06月10日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 最近、トランプ大統領の対抗馬を目指す米民主党の大統領候補者たちが、次々にグーグルやアマゾン、フェイスブックの分割を口にしている。

 トランプ大統領も、アマゾンが米国で十分な税金を収めていないとして、ツイッターで繰り返しジェフ・ベゾスを攻撃していた。このため2020年11月3日に投開票が予定される大統領選で、GAFAの分割が争点になると予測する報道機関もある。

 特定の企業が大きくなりすぎて、ほとんど市場を支配する状態なので、これを2つか3つにパカッと割って支配力を弱めてはどうか。こうした議論は、昔から何度も繰り返されてきた。

 古くは、IBMやマイクロソフト。最近ではグーグルについて、米国や欧州の当局が何度も会社分割を検討してきた。

●かつて、ハードとソフトは一体だった

 調べてみると、50年前にはIBMが問題とされていた。1960年代の終わりのことだ。

 IBMが貸し出すコンピュータは、OSやソフトが「付属品」扱いだったようだ。当時はハードもOSもアプリも、まるっとまとめてレンタルという方式だったが、料金体系が明朗でないとIBMが訴えられた。

 結果、IBMはハードとソフトそれぞれにレンタル料金を設定した。ハードとソフトが分離されたことで、のちにさまざまなアプリが開発されるイノベーションのきっかけになったと分析する研究者もいる。

 この分野で次に問題とされたのは、マイクロソフトだ。

 1990年代の終わりには、マイクロソフトのWindowsは、OS市場で圧倒的なシェアを占めていた。

 Windowsには当時、Internet Explorer(IE)が付属していた。Windowsを使うユーザーにはIEが自動的についてくるので、なつかしのNetscapeなど競合するWebブラウザーを選択する機会を奪われているとの批判が出た。

 このとき解決策として挙がっていたのは、マイクロソフトを、OSを開発する会社と、IEやOfficeなどのアプリを開発する会社に分割する案だ。

 実際、地方裁判所レベルでは、マイクロソフトの分割を命じる判決もあった。

 いま、Windowsのパソコンを買うときは、Officeを一緒に買うかどうかを選べるようになっている。選択肢が存在するのは、こうした20年前の係争が原点になっているようだ。

 とはいえ、もはやOfficeアプリの主流はWebアプリになっている。OSがWindowsであれMacであれ、ほとんど意識せずに移行できるいまとなっては、はるか昔の議論にも見える。

●日本でもグーグルの独占めぐる議論があった

 日本でも2010年ごろ、検索サービスをめぐるグーグルの独占が議論を呼んだことがあった。

 日本のヤフーは当時、米国のヤフーから検索エンジンの提供を受けていた。米ヤフーの検索エンジンが使えなくなったため、日本のヤフーはグーグルの検索エンジンを使うことにした。

 これが日本の独占禁止法に違反していないか、との声が上がった。当時、日本のヤフーとグーグルを合わせると、日本の検索サービス市場の9割超をグーグルが押さえることになっていた。

 実は、このとき活発に動いたのがマイクロソフトだった。マイクロソフトは自社の検索エンジンBingで、グーグルへの巻き返しを狙っていたのだ。

 マイクロソフトの関係者たちは、経済産業省や公正取引委員会といった当局だけでなく、永田町の政治家や省庁担当の記者たちを回り、次々に問題を訴えた。

 Windowsの独占をめぐってさんざん叩かれてきたマイクロソフトだけに、グーグルの独占をターゲットにした攻撃は的確だった。

 当時、「世界的企業が本気出すってこういう事か」と慄然としたのを思い出す。

 しかし、日本の公取委は「問題なし」と判断。グーグルの検索エンジンを使ったとしても、広告の入札システムの仕組みから、グーグルとヤフーは競争関係を維持するといった点などが理由とされた。

 当時、日本のヤフーにとって、米ヤフー、グーグルの検索エンジンに次ぐ、第三の選択肢がBingだった。検索の精度から「合理的な選択」として、グーグルを選ぶのはやむを得ないという判断でもあった。

 たしかに、グーグルでは独占が強まるから、Bingを使いなさいと言われても、当時のヤフーは困っただろう。

●競合SNSの買収を重ねたフェイスブック

 いま、もっとも分割が必要だと言われているのは、フェイスブックだ。

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